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澄んだ空に恋を描いて

橋本奈々未は、いつも一人で空を見上げるのが好きだった。特に青空が澄み渡る日には、彼女の心の奥に何かが広がっていくような感覚に包まれた。自分の中に潜む孤独感が、その青さと混ざり合い、どこか遠くへ連れて行ってくれるようだった。

そんな彼女を遠くから見ている〇〇もまた、心の中に同じような孤独を抱えていた。クラスメイトや友達と話す時間はあるものの、どこか満たされない気持ちがいつも心の隅にあった。彼もまた、自分が本当に心を通わせられる相手を見つけることができていないのだと感じていた。

ある日、放課後の校庭で、奈々未は一人ベンチに座り、空を見上げていた。夕陽が西の空に沈みかけ、淡いオレンジ色が空を染めていた。

〇〇はふと、その光景に目を留め、自然と足が奈々未のもとへ向かっていた。彼女の横に座り、同じように空を見上げる。

しばらく二人は何も言わなかった。ただ、目の前の空の広がりに、何かを感じていた。

〇〇:いつも一人で、何を考えてるんだ?

彼の問いに、奈々未は少し驚いたように目を細めた。しかし、すぐに微笑んで答える。

奈々未:別に、何も。空を見ると、なんだか落ち着くから

その言葉に、〇〇は少し安心した。彼もまた、奈々未と同じように感じていたからだ。

〇〇:僕も、時々そう思う。誰かと一緒にいても、なんとなく一人ぼっちみたいな気分になることがある

奈々未は少し考え込むように沈黙した。そして、ぽつりと口を開く。

奈々未:それって、寂しいよね。でも、誰かにその気持ちを打ち明けることができないのが、もっと寂しい

〇〇は彼女の言葉に深く共感した。彼もまた、そんな感情を抱えていた。表面上は友達と楽しく過ごしているように見えても、心の中ではどこか孤立している感覚がいつもあった。

それからというもの、二人は放課後になると自然と一緒にいることが多くなった。時には図書館で静かに過ごし、時にはただ校庭で空を見上げるだけだった。二人の間に流れる時間は、言葉が少なくとも不思議と心地よかった。

奈々未は、ふとした瞬間に〇〇に打ち明けるようになっていった。

奈々未:私は、友達って何なのか分からない時があるんだ。誰かと一緒にいても、親友と呼べる人がいない気がして…

〇〇は頷きながら、奈々未の話に耳を傾ける。

〇〇:それは僕も同じだよ。仲間はいるけど、心の中まで深く話せる人って、なかなかいないよね

奈々未は少し安心した表情で続けた。

奈々未:でも、〇〇と一緒にいると、なんだか自然体でいられる。お互いに無理をしなくていいっていうか…

その言葉に、〇〇もまた心の中が温かくなった。

〇〇:僕も、奈々未といると安心するよ。変に頑張らなくてもいいって感じるんだ

二人はお互いに笑い合い、目を合わせた。その瞬間、二人の心の距離が確かに縮まったように感じた。

ある日、学校の帰り道。秋の風が少し冷たくなってきた頃、〇〇はいつものように奈々未と並んで歩いていた。二人は木々のざわめきに耳を傾けながら、言葉を交わさずにただ一緒にいることを楽しんでいた。

ふと、奈々未が足を止め、〇〇の方を見つめた。

奈々未:ねえ、〇〇…

その声は少し震えていた。彼女は何かを決心したかのように、小さく息を吸って言葉を続けた。

奈々未:私、ずっと孤独を感じてきたんだ。でも、最近は…〇〇と一緒にいると、その孤独が少しずつ消えていくのを感じてる。ありがとう…

その言葉に、〇〇は胸がいっぱいになった。彼もまた、同じ気持ちだった。二人はただ一緒にいることで、心の中にあった空虚感が少しずつ埋まっていくのを感じていたのだ。

〇〇:僕もだよ。奈々未といると、自分が一人じゃないって感じられる

二人はしばらく見つめ合った後、自然と手を握り合った。その瞬間、風が二人の間を優しく吹き抜けた。

季節が冬に移り変わろうとしていたある日、奈々未は〇〇に告げた。

奈々未:私、来年この街を離れることになったの

その言葉に、〇〇は一瞬固まった。彼女の瞳には、決意の光が宿っていた。

〇〇:どうして…?

奈々未は小さく微笑んだ。

奈々未:家族の事情で、遠くに引っ越すんだ。でも、〇〇と過ごした時間はずっと大切にしたい

その言葉に、〇〇は心が締め付けられる思いだった。だが、彼は彼女の決断を尊重しようと決めた。

〇〇:いつかまた、会えるよね?

奈々未は大きくうなずいた。

奈々未:もちろん。また青空の下で会おう

数年後のある日、〇〇は奈々未との約束を胸に、再び彼女と過ごした場所を訪れた。そこには、あの時と同じように澄み渡る青空が広がっていた。

そして、〇〇の前には変わらない笑顔の奈々未が立っていた。

奈々未:待たせちゃったね。でも、私はずっと〇〇を信じてたよ

二人はお互いに微笑み合い、再び手をつないだ。

これから先も、二人の時間は続いていく。

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