零時のペンダント~episode8~
○○と瑛紗は大園玲に導かれ、裂け目の向こう側に足を踏み入れた。そこは現実とは異なる、不気味で幻想的な光景が広がっていた。宙に浮かぶ破片のような大地、逆流する時間の川、空には歪んだ星々が輝いている。
○○:……ここが裂け目の向こう側なのか。
瑛紗:息が……しづらい。空気が違う気がする。
玲:ここは時間そのものが形を持つ場所。現実の法則は通用しないわ。気をつけて、この場所では何が敵になるかわからない。
瑛紗は不安そうな表情を浮かべるが、○○は彼女の手をしっかり握った。
○○:瑛紗、大丈夫だ。俺がついてる。
瑛紗:……うん。ありがとう。
進む中、突然周囲の空間が歪み、大地が崩れ始めた。崩れた隙間から現れたのは、巨大な影のような存在だった。それは人型をしていたが、身体全体が闇で覆われ、時間の破片のような光をまとっていた。
玲:……出たわね。“裂け目の守護者”。この場所を守り、侵入者を排除する存在よ。
○○:また戦うのかよ……!
玲:当然よ。でも、今回は私が相手をするわ。あなたたちは下がっていて。
瑛紗:でも、玲さん一人じゃ――
玲:大丈夫。あなたたちはまだ守られるべき立場なの。信じて、下がっていなさい。
瑛紗は一瞬戸惑ったが、玲の真剣な眼差しを見て頷いた。
瑛紗:……分かりました。でも、何かあったらすぐに手伝います!
玲:さて……少し本気を出すわよ。
玲の周囲に淡い光が集まり、空間全体が歪み始めた。彼女は時間を加速させたり巻き戻したりしながら、守護者の攻撃をかわし、鋭い一撃を繰り出す。
守護者は巨大な腕を振るい、裂け目のエネルギーを放つ。しかし玲は冷静に攻撃を読み切り、次々と反撃を加えていく。
○○:……玲さんって、こんなに強かったのか。
瑛紗:本当にすごい……でも、どこか危うい感じがする。
瑛紗がそう呟いた瞬間、守護者の攻撃が玲の隙を突いた。玲は間一髪で避けたが、大きく体勢を崩してしまう。
玲:くっ……!
○○:玲さん、大丈夫ですか!?
玲:大丈夫。でも……少しだけ手を貸してほしいわ。
瑛紗:私にできること……ありますか?
玲:ええ。あなたの力があれば、この戦いを終わらせられる。心の中に眠る光を解き放つのよ。
瑛紗は深呼吸し、目を閉じて集中する。すると、彼女の体から眩い光が溢れ出し、時間が一瞬止まるような感覚が広がった。
○○:これが瑛紗の力……!
瑛紗:……やります!
瑛紗の放った光は守護者の動きを封じ、玲がその隙を突いて決定的な一撃を放つ形で戦況を逆転させた。守護者は裂け目のエネルギーと共に消滅した。
戦いが終わり、三人はさらに奥へと進んだ。やがて、巨大な光の球体が浮かぶ場所にたどり着く。それは周囲の空間を歪ませるほどの強大なエネルギーを放っていた。
玲:これが“始まりの源”……裂け目を生み出した根源よ。
○○:こんなものが存在していたなんて……。
瑛紗:これをどうすればいいんですか?
玲:あなたの力でこのエネルギーを封じ込めるの。この裂け目を閉じれば、現実の世界も元に戻るはず。
瑛紗は光の球体に向き合い、両手を差し出した。彼女の体から光が広がり、球体と共鳴を始める。
瑛紗:……うまくいきそう。でも……何かが心の中で囁いてる……。
玲:囁いてる……?何の声?
突然、光の球体が激しく揺れ動き、瑛紗がその場に崩れ落ちた。
○○:瑛紗!
玲:……どうやら“始まりの源”には、まだ知られていない別の秘密があるみたいね。
玲は険しい表情で○○に向き直った。
玲:今日はここまでよ。これ以上瑛紗に負荷をかけるわけにはいかない。
○○:でも、裂け目を閉じるんじゃなかったのか!?
玲:今の彼女では完全に力を引き出すことはできないの。それでも無理をさせたら、瑛紗自身が壊れるわ。
瑛紗は静かに眠るように気を失っている。○○は彼女を抱きかかえ、強い決意を胸に誓った。
○○:(次こそ……瑛紗を守る。そして、この裂け目を終わらせるんだ!)