秋の夕暮れに染まる君へ

〇〇は、かつての高校時代からの友人たちと同じ大学に通うことになった。渡邉理佐、田村保乃、山﨑天。あの頃からずっと一緒で、今も変わらない日々を過ごしている。キャンパスは広く、どこか懐かしい感じがしたが、それでも毎日が新鮮だった。4人の関係もまた、少しずつ変化していた。

理佐と〇〇は幼なじみで、小さい頃から何でも言い合える間柄だった。彼女の落ち着いた性格と無駄のない言葉遣いに、〇〇はいつも安心感を抱いていた。大学3年生の彼女は、既に就職活動について考え始めている様子だった。

理佐：就活、どうするつもり？

〇〇は肩をすくめながら答えた。

〇〇：まだ決まってない。理佐は？

理佐：私は早めに準備したいな。焦るのは嫌だから

理佐の冷静な言葉に、〇〇は少し気持ちが引き締まる。彼女とこうして何気ない会話をすることは、〇〇にとって心地よい瞬間だった。

一方で、田村保乃と山﨑天は大学2年生。保乃は関西弁でいつも明るく、誰に対してもフレンドリーだった。高校時代から変わらず、彼女の笑顔はみんなを元気にしていた。

保乃：〇〇、今日も一緒にランチ行かへん？

保乃の無邪気な誘いに、〇〇は微笑みながら頷いた。保乃と一緒にいると、いつも元気をもらえる気がする。

天は少し大人びた雰囲気を持ちながらも、どこか天然なところがあり、〇〇はそのギャップに魅了されていた。天は特に大きな声で話すわけではないが、時折見せる優しい笑顔に〇〇は惹かれていた。

天：〇〇さん、今日はどこに行くんですか？

〇〇：保乃がまたランチ誘ってくれたから、一緒に行こうよ

天は小さく頷き、ふんわりとした微笑みを見せた。彼女の自然体な姿に、〇〇は心が和む。

そんな日々が続く中、〇〇はふと自分の中で何かが変わり始めていることに気付いた。それは、理佐に対しての気持ちだった。昔からの友人としての距離感が、どこか違和感を持ち始めていた。

幼なじみという枠を越えて、彼女に特別な感情を抱き始めている自分に気づいたのだ。しかし、それを口にすることはできなかった。理佐にとって、〇〇はただの友人であり、今さらそんなことを言うべきではないと思っていた。

そんな時、保乃がふと真剣な顔をして〇〇に話しかけてきた。

保乃：〇〇、なんや元気ないな。なんか悩んどるん？

〇〇：いや、別に…

保乃：嘘つきやなぁ。私にはわかるんやで？

保乃の優しい関西弁が心に沁みた。彼女はいつも明るく振る舞っているが、その裏には人一倍友達のことを気にかける優しさがあった。

〇〇は思わずため息をついた。

〇〇：理佐のこと、気にしてるんだ。理佐にとって、俺はただの友達なんだろうなって

保乃：そっか。理佐さんかぁ。でも、それだけで諦めるのは早いんちゃう？

保乃の言葉に、〇〇は少し驚いた。彼女は続けて言った。

保乃：あんな、理佐さんは確かに冷静やけど、〇〇のことどう思っとるかなんて、〇〇が決めることやないやろ？

保乃の真剣な表情に、〇〇はハッとした。彼女の言う通り、勝手に諦めるのは早いのかもしれない。

その日の夜、〇〇は理佐に思い切ってメッセージを送った。

〇〇：明日、ちょっと話があるんだけど、時間あるかな？

理佐：うん、いいよ。何時にする？

〇〇：昼休み、図書館の前で

理佐からの返事は早かった。〇〇は心の中で何度も練習しながら、次の日の昼休みを迎えた。

〇〇は図書館の前で理佐を待っていた。やがて彼女がやって来ると、いつも通りの無表情で〇〇を見つめた。

理佐：で、話って何？

〇〇は深呼吸してから、思い切って言葉を切り出した。

〇〇：俺、理佐のことが好きなんだ。ずっと幼なじみとして見てきたけど、今はもうそういう気持ちじゃない

理佐は驚いた表情を見せたが、すぐに落ち着きを取り戻し、静かに答えた。

理佐：そうなんだ…〇〇の気持ちは嬉しい。でも…私は今、就活のことで頭がいっぱいで、恋愛のことは考えられない

その言葉を聞いた瞬間、〇〇は一瞬胸が締め付けられるような感覚を覚えた。しかし、理佐の言葉には嘘がなかった。〇〇は微笑んで、彼女の答えを受け入れた。

〇〇：分かったよ。ありがとう、理佐

理佐は少し微笑んで、〇〇に頷いた。

その後、〇〇は少しずつ理佐との距離を置くようになった。彼女との関係が変わってしまったことを実感しながらも、彼女の選んだ道を尊重する気持ちが強かった。

一方で、〇〇と保乃、天の関係も変わっていった。特に保乃は〇〇に対して積極的に話しかけるようになり、時にはふざけながらも彼のことを気にかけていた。

保乃：〇〇、次は私らと遊びに行こや。気分転換も大事やで！

天もまた、〇〇に対して優しい微笑みを見せ続けていた。彼女の自然体な振る舞いに、〇〇は少しずつ心が癒されていくのを感じた。

最終的に、〇〇は理佐との恋を諦める決意を固めた。しかし、その代わりに、新しい可能性に目を向けることにした。

ある日、〇〇は保乃と天と共に出かける機会があった。キャンパスのカフェで話していると、保乃がふと真剣な顔で言った。

保乃：〇〇、これからどうするん？理佐さんのこと、ほんまに諦めたん？

〇〇は少し考えた後、ゆっくりと頷いた。

〇〇：ああ、もう吹っ切れたよ。今は、保乃や天と一緒にいる方が楽しい

保乃：そっか。ほんなら、これからもよろしくな！

天は小さく笑い、優しく〇〇を見つめた。

天：〇〇さん、これからもずっと一緒にいましょうね

〇〇はその言葉に、心からの安堵を感じた。

数週間が過ぎ、季節は秋に差し掛かっていた。大学のキャンパスは色とりどりの紅葉に彩られ、散歩する学生たちの姿が目立っていた。〇〇は、保乃と天と一緒に昼休みのランチを取るためにカフェへと向かっていた。

保乃：秋になると、なんか寂しなってくるなぁ。〇〇、何か面白い話してや

〇〇：そんな急に言われても…

保乃はいたずらっぽく笑いながら、彼の肩を軽く叩いた。彼女の関西弁には、いつも〇〇を元気づける不思議な力があった。

天は少し離れたところから、そんな2人のやり取りを静かに見つめていた。彼女の無邪気な笑顔が印象的で、〇〇はついその目に吸い込まれそうになった。

天：〇〇さん、今日は何か予定がありますか？

〇〇：特にないけど…どうして？

天：もしよければ、放課後一緒にどこか行きませんか？

突然の誘いに、〇〇は少し驚いた。天から直接こうして誘われることはあまりなかったからだ。

保乃：お、天ちゃん攻めるね～。〇〇、断ったらアカンで？

〇〇は少し照れくさそうに微笑みながら、天の提案を受け入れた。

〇〇：もちろん。どこ行く？

天：どこでも大丈夫です。〇〇さんが行きたい場所に…

〇〇は一瞬考えてから、キャンパス近くにある公園を提案した。そこは静かで、自然に囲まれた落ち着いた場所だった。天もそれに賛成し、2人は放課後に向かうことを約束した。

放課後、〇〇と天は夕日に照らされた公園をゆっくりと歩いていた。秋風が心地よく、静かな時間が流れていた。

天：〇〇さん、最近はどうですか？いろいろ悩んでたみたいですけど

〇〇は一瞬立ち止まり、天の顔を見つめた。彼女の言葉はいつも優しく、〇〇の心に寄り添ってくれる。

〇〇：少しずつだけど、前に進んでる感じかな。理佐のことは、もう吹っ切れたよ

天はその言葉を聞いて、小さく頷いた。

天：そうなんですね。〇〇さんは優しいから、きっと理佐さんのことを大切に思っていたんですね

〇〇：そうかもしれない。でも、今は保乃や天と一緒にいる時間が楽しいし、それで十分だよ

天はその言葉に、少しだけ頬を赤く染めた。

天：私も…〇〇さんと一緒にいるのが楽しいです

その瞬間、〇〇は天が少しだけ特別な存在になっていることに気づいた。彼女の自然な笑顔や、静かに寄り添ってくれる優しさが、〇〇にとっては心の支えになっていたのだ。

公園のベンチに座りながら、2人はしばらく何も言わずに過ごしていた。夕陽が沈むまでの短い時間だったが、その静かなひとときが〇〇にとってはとても大切なものだった。

翌日、〇〇は保乃と天、そして理佐と久しぶりに4人で集まった。カフェのテラス席で、理佐が少し疲れた顔をしていたことに、〇〇はすぐに気づいた。

〇〇：理佐、大丈夫か？

理佐：うん、ちょっと就活のことで疲れてるだけ

彼女の表情は硬く、いつもの冷静さとは少し違っていた。〇〇はその姿に胸が痛んだが、何も言えなかった。理佐もまた、自分の道を必死に進んでいるのだ。

保乃はそんな理佐に気を使い、明るく話しかけた。

保乃：理佐さん、そろそろ就活も本格的に始まるやん？気分転換にどっか遊びに行こうや！

理佐：そうだね…でも今はちょっと…

天もまた、理佐の様子を心配そうに見ていたが、何も言わなかった。ただ、そっと理佐の手を取って優しく握った。

天：無理しないでくださいね、理佐さん

その一言が、理佐の緊張を少しだけ解いたようだった。彼女は微笑んで天の手を握り返した。

理佐：ありがとう、天ちゃん。そうだね、少し休む時間も大事かもしれない

〇〇はそんなやり取りを静かに見守りながら、彼女たちとの友情を再確認した。理佐とは幼なじみで、ずっと特別な存在だったが、今は新しい形での関係が築かれている。そして保乃や天との友情もまた、深まっていることを感じていた。

それからしばらくして、〇〇は自然と天との時間を多く過ごすようになった。保乃もそれを察してか、2人を少し距離を置いて見守るようになった。

ある日、天がふと〇〇に言った。

天：〇〇さん、私…〇〇さんのことがずっと気になっていました

〇〇は驚いて天の顔を見つめた。彼女の瞳には、真剣な想いが宿っていた。

天：高校の時から、〇〇さんがずっと大好きでした。でも、〇〇さんは理佐さんのことが好きだと思って、言えなかった

〇〇はその告白に、一瞬言葉を失った。しかし、すぐに自分の気持ちを確認した。

〇〇：天、俺も…最近、君のことが特別に感じてきたんだ。君と一緒にいると、すごく安心する

天はその言葉に、涙を浮かべながら微笑んだ。

天：私もです。〇〇さんと一緒にいるとすごく幸せです

その瞬間、〇〇は天をそっと抱きしめた。彼女の温もりが心に染み渡り、2人は静かにその瞬間を共有した。

その後、〇〇と天は正式に付き合うことになり、保乃や理佐にもそのことを伝えた。理佐は笑顔で2人を祝福し、保乃もまた嬉しそうに2人をからかった。

保乃：いやぁ、まさか〇〇と天ちゃんがくっつくとはなぁ。私も負けてられへんわ！

みんなが笑い合うその瞬間、〇〇は自分が本当に大切な人たちに囲まれていることを実感していた。

そして、これからもこの関係が続いていくことを信じていた。

こうして、〇〇と天はお互いの想いを確かめ合い、4人の友情はさらに強い絆で結ばれていった。