HeとSheの境界線
言葉遣いがおかしな部分もあるかもしれません。
その時はご指摘ください🙇♀️
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朝のホームルームが終わり、天は静かにスケートボードを手に教室を出た。いつもと変わらない様子で、短髪にキャップ、そしてオーバーサイズのパーカー。男装をしていることなど誰も気づかないし、彼女自身もそれを特に気にしていない。
教室の窓から外を見下ろすと、〇〇の姿が目に入った。クラスメイトであり、密かに気になる存在だ。しかし、天は感情を表に出すのが苦手だったし、何より自分が男装しているときに話しかけるのは、どうも気まずい。
(やっぱりな、どうしよ…)
そんな独り言をこぼしながら、天はスケートボードを持ったまま校庭に降りる。
休み時間になると、天はいつも藤吉夏鈴、守屋麗奈、田村保乃と一緒に過ごしていた。夏鈴とは幼なじみで、時々関西弁で話す気心知れた仲。保乃は賑やかな性格で、関西弁を交えながらよく天をからかってくる。
保乃:「天、また男装してんのかい!ほんまに女の子に見えへんわ!」
天:「うっさいなぁ、別にええやん…」
夏鈴:「ほの、ほんまそれぐらいにしとき。天もそういうの気にしてんねんから。」
保乃:「まぁまぁ、冗談やん。ほら、今日もなんか楽しげに〇〇見てたんちゃう?」
天:「なんでそうなるん…」
顔を赤らめる天に、夏鈴がふと真剣な顔で続ける。
夏鈴:「ほんまに気になるんやったら、一回くらい素直に話してみたら?〇〇も、天のこと好きかもしれんし。」
天は何も言わずにその言葉を胸にしまい込み、スケートボードを握りしめたまま校舎の外に出た。気持ちを整理するためには、いつもこうやって外に出て風を感じることが一番だった。けれども、今日だけは少し違っていた。
〇〇が、すぐ近くのベンチに座っていたのだ。彼もまた、静かに外の風を感じているようだった。
(…どうしよう。)
天は迷った。いつもなら男装のまま通り過ぎるだけだが、今日は自分から声をかけるべきなのか。何も考えずにスケートボードに乗り、〇〇の前に滑り出す。
天:「…暇なん?」
〇〇が顔を上げ、天を見つめる。彼は驚いたように笑顔を浮かべた。
〇〇:「天…だよな?最近、よく見るけど…なんかかっこいいな。」
天は心の中で小さく笑った。男装のせいだと分かっていても、その言葉が少しだけ嬉しかった。
天:「そんなん、別にどうでもええわ…。」
それでも、彼との距離が縮まった気がして、天の胸は少しだけ軽くなった気がした。
その後も、天と〇〇の距離は少しずつ近づいていった。しかし、周囲にはまだ告げていない。小林由依や渡邉理佐といった先輩たちは、天のことをいつも見守っているようで、時折助言をくれる。
理佐:「天ちゃん、あんまり隠さなくてもいいんじゃない?」
由依:「天ちゃんの素顔を知っても、きっと彼は変わらないよ。」
天は彼女たちの言葉に耳を傾け、いつか自分の本当の姿を〇〇に伝える日が来ることを願っていた。
ある日、天はついに決意を固めた。〇〇と一緒にいる時間が増え、本当の自分を見せてもいいと思えるようになったのだ。スケートボードに乗りながら、天は〇〇にこう告げた。
天:「なぁ、〇〇に話があるねん。」
〇〇:「どうしたの?」
天:「私、実は…」
言葉が詰まる。だが、〇〇はそれを待ってくれていた。
天:「私、女やねん。」
〇〇は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに笑顔を見せた。
〇〇:「知ってたよ、天。…でも、それがどうしたの?」
天:「…知ってたん?」
〇〇:「うん。最初から気づいてたけど、別に気にしてなかったよ。天が天であることには変わりないから。」
〇〇のその言葉に、天は少し驚きながらも、同時に胸の奥で何かがほぐれていくのを感じた。これまで男装して過ごしてきた自分。それが、自分の一部として受け入れられていることが、こんなにも嬉しいとは思わなかった。
天:「なんか…、なんやろ。私、今まで誰にもこんなこと言えへんかった。でも、〇〇なら言える気がしてたんや。」
〇〇:「俺も、天が言ってくれて嬉しいよ。もっと早くに話してくれてもよかったのに。」
天:「うん、ほんまやな…。でも、今言えてよかった。ありがとう。」
〇〇:「これからも、変わらず一緒にいような。」
天:「…うん。」
その瞬間、天は今まで感じたことのないほどの安堵と温もりを感じた。〇〇が彼女をただの友達としてではなく、彼女自身として見てくれているという事実が、何よりも嬉しかったのだ。
数日後、天は夏鈴や保乃、麗奈と一緒に校庭で過ごしていた。少し距離を置いて、〇〇が彼らを見守っている。
保乃:「なんや、天。最近えらい顔が晴れてるやん!〇〇との仲、なんか進展あったんちゃう?」
天:「うっさいな。まぁ…ちょっとだけ。」
夏鈴:「お、ついに告白でもした?」
天:「そんな、まだちゃうわ。ただ、話しただけや。」
麗奈:「でも、天ちゃんが幸せそうでよかった。これからもっと素直になれるといいね。」
保乃:「おー、そやそや!で、次はどないすんの?デートでも行くんか?」
天:「それは…、まぁおいおい。」
みんなが天をからかうように笑い合う中、天は微笑んだ。これから、〇〇と一緒にどんな未来が待っているかは分からない。でも、今はそれで十分だ。
放課後、天は校舎の外でスケートボードに乗り、〇〇と二人で帰路につく。
〇〇:「天、これからどうする?もっと一緒にどっか行くか?」
天:「うん、まぁな。〇〇が誘うなら、どこでもええわ。」
二人は笑い合いながら、夕日に照らされた街を進んでいった。天は、もう自分を隠す必要がないということに気づき始めていた。そして、〇〇との関係も、ゆっくりとした歩みの中で深まっていく。
それからしばらくして、天は学校生活の中で男装をすることも減っていった。友達や先輩たちにも自分の素顔を見せることが増え、以前よりも自然体で過ごせるようになった。
小林由依や渡邉理佐も、天が成長していく様子を温かく見守っている。
由依:「天ちゃん、あんた本当に変わったね。前はもっと自分を隠してたけど、今はちゃんと向き合ってる。」
理佐:「うん、それがいい。自分らしくいるのが一番だよ。」
天:「ありがとうございます、お二人とも。」
天は微笑み、スケートボードを手に持ちながら、〇〇の方へ歩き出す。これからの未来がどうなるかは分からないけれど、少なくとも自分らしく生きることができる。そのことに、彼女は大きな自信を持っていた。
〇〇と天は、これからも一緒に過ごしながら、少しずつ関係を深めていく。そして、天は自分の気持ちを隠すことなく、素直に向き合っていく。
ふたりを包む穏やかな風が、これからも彼らを見守ってくれるだろう。