夕暮れに響く天音
呼称や話し方に間違いがありましたらすいません。
間違いがあった際にはご指摘頂けると幸いです。
尚、写真の天ちゃんが持ってるのトランペットじゃないやん!というツッコミは受け付けてません笑
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夕焼けが校舎の窓を赤く染める頃、吹奏楽部の練習は終わりを迎えていた。
山﨑天はトランペットを片手に息をつく。
部活が終わった後の校庭は静かで、遠くに部員たちの笑い声が響いていた。
ふと、天は今日も〇〇が部活帰りにこの道を通ることを思い出す。
保乃:「天ちゃん、今日もおつかれさん!」
同じクラスの田村保乃が、軽い足取りで部室から出てきた。
彼女はいつも明るくて、クラスのムードメーカーだ。
天も保乃の関西弁にはどこか安心感を覚える。
天:「保乃、今日も部活終わったん?」
天が尋ねると、保乃はニコニコと笑ってうなずいた。
保乃:「うん、終わったで!これから夏鈴ちゃんと麗奈ちゃんとひーちゃんと一緒に帰るんやけど、天ちゃんも一緒にどう?」
保乃はいつものように誘ってくれるが、天は少し迷っていた。
〇〇と話すチャンスが今日あるかもしれない。
彼とは同じクラスで、何度か話す機会はあったものの、まだ友達と呼べるほど親しくはなかった。
天:「うーん、ごめん。今日はちょっと用事があって…」
天がそう答えると、保乃は目を細めて笑った。
保乃:「ふーん、なんや気になるな。でも気ぃつけて帰りや?」
保乃が肩を軽く叩いて先に行こうとした時、校舎の方から藤吉夏鈴と森田ひかる、そして守屋麗奈が歩いてきた。
夏鈴が天を見つけると、にやりと笑った。
夏鈴:「天、何してんの?誰待ってんの?」
夏鈴は軽くからかうような口調だが、天は内心ドキリとした。
天:「なんでもないって!ちょっと休憩してただけやから!」
天が慌てて答えると、ひかるが小さく笑いながら
「ふーん、そうなんだ笑」と冷ややかに続けた。
保乃:「まあええわ、私ら先に行くわな。」
保乃は軽く手を振り、みんなと一緒に校門へ向かって歩き出す。
天は、彼女たちの背中を見送りながら、少しだけホッとした。
――その時だった。
〇:『やあ、山﨑さん。』
優しい声が背後から聞こえた。
振り返ると、〇〇が軽く手を挙げて立っていた。
天:「あ、〇〇くん!」
天の胸が一気に高鳴る。
どうしよう、何を話せばいいのか…焦る気持ちを隠しながら、天は平静を装った。
天:「部活終わったん?」
天が尋ねると、〇〇は少し笑ってうなずいた。
〇:『うん、今終わったところ。山﨑さんは吹奏楽部だよね?今日も練習大変だった?』
彼の何気ない問いに、天は頷きながら答えた。
天:「うん、まぁね。まだ全然上手くならんけど…」
彼女は少し恥ずかしそうに笑う。
𓏸𓏸はそんな天を見て、優しく言った。
〇:『でも、山﨑さんのトランペット、いつも響いてるよ。頑張ってるのが伝わってくる。』
その言葉に、天は驚き、思わず顔を赤らめた。
〇〇が自分の演奏をそんな風に感じてくれていたなんて、思いもよらなかった。
天:「そ、そうなんや…ありがとう。」
少し照れくさそうに微笑む天に、〇〇もにっこりと笑う。
〇:『今日はこのまま帰るの?』
〇〇がそう尋ねた。
天は一瞬迷ったが、この機会を逃したくない気持ちが強かった。
天:「うん。でも、もしよかったら…一緒に帰らん?」
勇気を振り絞って、天は提案する。
〇〇は少し驚いた様子だったが、すぐに笑顔でうなずいた。
〇:『もちろん、一緒に帰ろう。』
二人は並んで歩き出した。
校庭を抜ける風が心地よく、沈黙の中でも天はどこか満たされた気持ちになっていた。
天:「〇〇くんって、普段何してるん?」
ふと、天が口を開いた。𓏸𓏸は少し考えてから答えた。
〇:『僕は本を読むのが好きかな。あと、時々友達とサッカーもやるよ。』
彼の答えに、天は意外な一面を感じた。
天:「そうなんや。なんか〇〇くん、いつも落ち着いてるから、あんまりサッカーとかするイメージなかったわ。」
天が素直な気持ちを伝えると、〇〇は少し照れくさそうに笑った。
〇:『そう?まぁ、そう見られることもあるけど、意外と活発だよ。』
二人は穏やかに会話を続けながら、校門へと向かって歩いた。
その時、再び保乃たちが前を歩いているのが見えた。
彼女たちは天と〇〇を見つけ、すぐに状況を察したようだった。
保乃:「お、天ちゃん、ええ感じやん。」
保乃がからかうように声をかけ、ひかると夏鈴は静かに微笑む。
麗奈は「頑張ってね」と応援するような眼差しを送った。
天:「もう、やめてや!」
天は顔を赤くして彼女たちに軽く抗議するが、𓏸𓏸がそのやりとりを微笑ましそうに見ていた。
〇:『面白い友達だね。』
〇〇の言葉に、天は少し照れながら頷いた。
天:「うん、みんなええ子やで。ちょっと騒がしいけど。」
二人は再び歩き始め、少しずつ話が弾んでいく。
何気ない会話でも、〇〇との時間は特別に感じられた。
夕焼けに包まれた帰り道、天はふと〇〇と並んで歩くこの瞬間が、今までにないほど心地よく感じられた。
この感覚が「好き」という気持ちなのだと、天はようやく気づいた。