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夕焼けが沈むまでの約束

六月も終わりが近づき、梅雨空から少しずつ青空が顔を覗かせるようになった。校舎から見える空はどことなく夏の匂いを含んでいる。

○○は教室の窓際の席から、ぼんやりと外を眺めていた。その視線の先に、同じクラスの谷口愛季の姿がある。彼女は今日も友人たちと笑顔で話しながら帰り支度をしていた。

教室の中は、夏休み前の独特な高揚感に包まれていた。けれど、○○の心はどこか晴れない。

彼女の隣にいるのは、サッカー部のエース。最近、二人が一緒にいるところをよく見かけるようになった。

「もしかして、二人付き合ってるのか?」

そんな思いが頭をよぎるたび、胸が締めつけられる。ずっと伝えられなかった気持ちが、もどかしくて仕方がない。

しかし、○○は決意した。このままじゃダメだ。夏休みが始まる前に、何かを変えなければ。

翌日、授業が終わると○○はすぐに谷口を呼び止めた。

○○:谷口、ちょっといい?

愛季:うん、どうしたの?

二人は下駄箱の近くまで歩き、少し人目を避けるように立ち止まった。

○○:今度の土曜日、空いてる?

愛季:土曜日?うん、大丈夫だけど…何かあるの?

○○は一瞬、言葉に詰まったが、深呼吸して思い切って言葉を続けた。

○○:一緒に海に行かないか?

彼女の目が少し驚いたように見開かれる。

愛季:海?

○○:ああ、ずっと誘おうと思ってた。でも、タイミングがつかめなくて…

愛季はしばらく考える素振りを見せた後、ふっと微笑んだ。

愛季:いいね、行こう。○○くんと二人で海、楽しそう

その笑顔を見た瞬間、○○は安堵と嬉しさが入り混じる感情に包まれた。

その週末、二人は電車に乗って近くの海へ向かった。

真っ青な空と、砂浜に打ち寄せる波の音。潮風に髪を揺らしながら、谷口は無邪気に笑っている。

愛季:やっぱり夏の海っていいね。こんなに綺麗だとは思わなかった

○○:そうだな。今日は天気もいいし、最高の日だよ

砂浜を歩きながら、○○は心の中でずっとタイミングを伺っていた。言わなければならない。今日という日は、そういう日だ。

二人で座り込み、少し休憩をしている時、○○は意を決して彼女を見つめた。

○○:谷口、俺、ずっと前からお前のことが好きだったんだ

愛季:…え?

彼女は一瞬驚いた表情を浮かべたが、その後、真剣な瞳で○○を見つめ返した。

○○:最近、サッカー部のやつと一緒にいるのを見て、焦ったんだ。だから、今日ちゃんと伝えたいと思って

愛季は少し頬を赤らめながら、静かに微笑んだ。

愛季:○○くん、ありがとう。でも、その人とはただの友達だよ。気にしなくても大丈夫

○○:本当か?

愛季:うん。だって、私もずっと○○くんのこと気になってたから

その言葉に、○○は一気に胸が熱くなるのを感じた。

○○:本当に?…嬉しいよ

愛季:私も、○○くんとこうやって二人でいられるのが、すごく楽しい

二人はそのまま、ゆっくりと時間を共有した。

夕日が沈む頃、○○はふと思い出す。

あの日、彼女を誘ったのは勇気が必要だったけれど、それが二人の距離を縮める近道だったのだ。

風が心地よく吹き抜ける中、○○は思う。この夏の思い出は、ずっと忘れられないものになるだろうと。

そして、二人は並んで帰り道を歩き始めた。

その後、二人の関係は少しずつ深まっていった。

海に行った翌週、○○は放課後の教室で再び谷口に声をかけた。

○○:また、今週末もどこか行かないか?

愛季:いいよ。どこにする?

○○:近くにいいカフェがあるって聞いたんだ。そこに行こうと思って。

愛季:うん、楽しみにしてる。

二人は放課後の時間や休日を一緒に過ごすようになり、自然と距離が縮まっていった。学校では些細なことで笑い合い、放課後はお互いの話を聞き合う。そんな日々が続く中で、○○は谷口と過ごす時間がますます特別なものに感じられた。

ある日、夕暮れ時の公園で二人はベンチに座っていた。蝉の声が夏の終わりを告げているかのように響いている。

○○:谷口、最近なんだけど、毎日がすごく楽しいんだ。

愛季:私も。○○くんと一緒にいると、なんだか安心するし、楽しい。

○○:こうして夏が終わるのは少し寂しいけど、これからも一緒にいろんな思い出を作りたいと思ってる。

愛季は静かに頷いた後、少し照れくさそうに微笑んだ。

愛季:それは私も同じだよ。これからもよろしくね。

二人はその瞬間、言葉以上のものを共有していた。夏の思い出は終わりを迎えつつあったが、新しい季節の始まりに心を躍らせていた。

秋が訪れ、学校では文化祭の準備が始まった。二人はそれぞれのクラスの出し物に忙しい日々を送るようになる。

文化祭当日、○○はこっそりと谷口を呼び出した。

○○:文化祭、楽しんでるか?

愛季:うん、すごく楽しいよ。

○○:実は、これを渡したくて。

そう言って○○が手渡したのは、手作りのブレスレットだった。

○○:あの日、海で拾った貝殻を使って作ったんだ。谷口との思い出を形にしたかった。

愛季は驚きと感動で目を潤ませながら、ブレスレットを受け取った。

愛季:ありがとう、○○くん。すごく嬉しい。大切にするね。

二人はその日、文化祭の夜空に打ち上がる花火を一緒に見上げた。その輝きは、二人の未来を祝福しているかのようだった。

季節が変わっても、二人の絆はより強くなっていった。

そして、あの夏の日、海辺で交わした約束は、これからもずっと二人の胸の中で輝き続けるのだった。

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