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Silent Shifts -幼なじみの心が恋に動くとき-

秋も深まったある日、○○は久しぶりに幼なじみの的野美青と会う約束をしていた。二人はいつも通り、地元の公園で会うことになっていたが、○○の心はどこか落ち着かない。

ここ数年、美青は少しずつ変わりつつあった。子どもの頃の無邪気な笑顔はそのままだったが、彼女は周りから注目を浴びる存在になり、芸能界での活動が忙しくなってきている。そんな彼女と過ごす時間は以前ほど頻繁には取れなくなっていた。

○○は公園のベンチに座り、紅葉が舞う風景をぼんやりと眺めていた。足元に散らばる落ち葉が、季節の移り変わりを感じさせる。しかし彼の胸の中では、幼なじみであり続けることへの葛藤が少しずつ大きくなっていた。

○○:どうしてこんなにもやもやするんだろう……

呟いた瞬間、背後から美青の明るい声が聞こえた。

美青:○○!久しぶり~!

振り向くと、いつもと変わらない笑顔を見せる美青がそこに立っていた。彼女は大きなぬいぐるみを抱えていて、それがまた子どもっぽさを残している。しかし、その愛らしい姿に、○○はますます自分の気持ちを隠せなくなっていた。

○○:美青、久しぶりだな。忙しかったんじゃないか?

美青:まあね。でも今日は休みだし、こうして○○と会えるの楽しみにしてたんだ。

二人はベンチに並んで座った。いつもなら、気楽に笑い合い、何気ない話で盛り上がるのだが、今日は違った。○○の中には、言葉にできない違和感がずっと渦巻いていた。

しばらくの沈黙が続いた後、○○は思い切って口を開いた。

○○:なあ、美青。俺たち、いつまでこのままなんだろうな。

美青:え?

彼女は不思議そうな顔をして彼を見つめた。

○○:昔からずっと一緒にいるけどさ……俺たちって、幼なじみであり続けるのが普通なんだろうか?

美青:どういうこと?

美青はぬいぐるみを抱きしめたまま、真剣な表情で○○を見つめる。その瞳の中には、どこか不安そうな色が見えた。

○○:俺、ずっと考えてたんだ。お前のこと、ただの幼なじみとして見てられないって。

その言葉に美青は一瞬驚いたようだったが、すぐに表情を和らげた。

美青:○○……

彼女は静かに彼の言葉を待っていた。○○は胸の中で高鳴る鼓動を感じながら、思い切って続きを話す。

○○:俺、お前のことが好きなんだ。ずっと前から……幼なじみじゃなくて、ちゃんと女の子として。

美青は少し驚いたように目を見開き、しばらくの間何も言えないでいた。しかし、その沈黙が長く続いたわけではなかった。彼女は静かに微笑んで、○○の言葉を受け止めた。

美青:そっか……○○、やっと言ってくれたんだね。

○○:え? やっとって……

美青:ずっと感じてたよ。○○が私のことどう思ってるか。でも、私も自分の気持ちに気づくのに時間がかかって……。

美青はぬいぐるみを抱きしめながら、どこか恥ずかしそうに視線をそらす。その姿に○○はさらに心が揺さぶられた。彼女が何を感じているのか、次の言葉を待ちながら焦りが募る。

美青:でもね、私も……○○のこと、ずっと好きだったよ。

その言葉が耳に届いた瞬間、○○は自分の中で何かが解放されるような感覚を覚えた。長い間、自分の気持ちを押し殺していたことが報われた瞬間だった。

○○:本当に? 俺だけがずっと一人で悩んでたのかと思ってた……

美青:そんなわけないじゃん。でも、こうして言葉にするのって難しいよね。特に、私たちみたいに長く一緒にいると。

○○はほっとしたように笑い、彼女に向かって微笑んだ。そうだ、彼らはこれまで幼なじみとして、数えきれないほどの時間を共に過ごしてきた。しかし、その関係が今ここで、新しい形に変わり始めていた。

○○:これからは……恋人として、やっていけるのかな。

美青:うん、でも急に全部変わるわけじゃないよね。これからもきっとふざけたり、バカなこと言ったりするんだろうけど、今度はもっと特別な気持ちでいられると思う。

○○:それもそうだな。お前とだったら、どんな日常でも楽しいだろうし。

美青:私もそう思うよ。だから、これからもよろしくね、○○。

彼女がそう言って差し出した手を、○○は静かに握りしめた。彼女の手は少し冷たかったが、その中に確かに温かさを感じた。二人はお互いを見つめ、穏やかで、それでいて確かな絆が生まれたことを感じた。

その後も、二人はゆっくりと歩きながら昔の思い出話に花を咲かせた。中学生の頃に一緒にサボった授業のこと、夏休みの終わりに行った花火大会でのこと。幼なじみとして過ごした時間は尽きることなく蘇り、二人の関係の深さを改めて実感させた。

○○:お前、あの時も俺のこと助けてくれたよな。なんだかんだ言って、お前には本当に感謝してるんだ。

美青:そんなの、お互い様だよ。私だって○○がいたから、ここまで頑張れたんだもん。

○○:お互いに支え合ってきたんだな……これからもずっと、そうしていこう。

美青:うん。これからも、ずっと一緒だよ。

二人は手をつないだまま、ゆっくりと秋の風を感じながら歩き続けた。夕暮れが迫る中、彼らの影が長く伸びていく。その先には、今まで以上に輝く未来が広がっていた。

夕暮れが過ぎ、街に夜の帳が下り始めた。○○と美青は手をつないだまま、駅前のカフェに向かっていた。秋の夜風が心地よく、二人の頬を軽く撫でる。これまでとは違う静かな高揚感が、○○の胸の中にあった。幼なじみとしての関係が恋人へと変わった瞬間から、日常のすべてが少しずつ色を変えていくように感じた。

カフェに入ると、静かな音楽が流れていた。美青はメニューを眺め、○○はそんな彼女の横顔をじっと見つめた。彼女の表情が和やかで、少し照れたように見える。これまでも何度も一緒にこうした時間を過ごしてきたはずなのに、今日はまるで初めてのデートのような気分だ。

美青:何か、今日の○○変だよ?

美青がふいにそう言って、クスッと笑った。○○は慌てて視線を外し、メニューに目を落とした。

○○:そ、そんなことないよ。普通だろ?

美青:うーん、そうかなあ。でも、私もなんか変な感じ。ずっと一緒にいたのに、恋人って思ったら急にドキドキしてきちゃってさ。

彼女が少し恥ずかしそうに笑うと、○○もつられて笑った。今まで感じたことのない感覚が、お互いの間に流れているのがわかる。

○○:確かにな。こんな風に思うの、なんか不思議だよな。でも、それが悪くないっていうか……。

美青:うん、悪くないね。

二人は自然と微笑み合った。カフェの窓からは街の灯りがちらちらと見え、外の賑わいとは対照的に、二人の世界は静かで落ち着いたものだった。

注文を終え、飲み物が運ばれてくると、また少し沈黙が訪れた。○○はふと、美青の手を見つめた。彼女はカップを両手で包むように持っていて、その手のひらからは柔らかい温かさが漂っている。

○○:なあ、こうして二人でいるのって、ずっとこうだったのに、なんか新鮮だよな。

美青:うん、同じ場所にいても、気持ちが変わるだけで全然違うんだね。

美青は目を細め、少し遠くを見るような表情を浮かべた。その視線の先には、これまでの二人の関係が広がっているようだった。○○はそんな彼女を見つめながら、幼なじみとしての時間がいかに大切だったかを改めて実感していた。

○○:美青、俺さ、これまでお前と一緒にいられたこと、すごく感謝してるんだ。

美青:え? いきなりどうしたの?

○○:いや、今こうして改めて思ったんだよ。美青がいたから、俺、ずっと楽しかったんだなって。

美青:……私も、○○がいたから頑張れたんだよ。

そう言った美青の声は、少しだけ震えていた。彼女はゆっくりとカップを置き、彼の方を見つめた。その瞳は、どこか真剣で、これまでの幼なじみとしての表情とは違うものがあった。

美青:私ね、大学に入ったばかりの頃、すごく不安だったの。でも、○○が何も変わらずにそばにいてくれたから、いつも安心できたんだ。

○○:俺は何も特別なことしてないけど……

美青:そんなことないよ。○○が普通に接してくれたこと、それが一番の支えだったの。

○○はその言葉を聞いて、胸の中が温かくなるのを感じた。美青にとって自分が支えになれていたこと、それは彼にとっても何よりの励みだった。

○○:そっか……それなら、これからも俺は美青のそばにいるよ。今度は恋人として、もっとちゃんと支えてやる。

美青:ありがとう。……これからもよろしくね。

二人は再び手を取り合い、自然と微笑んだ。その瞬間、二人の間にあった微妙な距離感がふっと消えたように感じた。これまでは幼なじみとして築いてきた関係が、今は恋人として新しい絆に変わりつつある。

カフェを出ると、夜空には星が輝いていた。○○は美青の手をしっかりと握りながら、ふと思い出したことがあった。

○○:そういえば、昔、一緒に見た流れ星覚えてるか?

美青:え、どれだっけ?

○○:中学生の頃だよ。お前が家の屋上で夜空を見ようって言ってさ。二人で寒い中、ずっと待ってたんだ。でも、結局流れ星が見えたのはほんの一瞬で。

美青:あー!覚えてる!でも、あの時は○○が願い事しようとしたのに、流れ星消えちゃって、すごく悔しそうな顔してたよね。

○○:そうそう、結局何も願えなかったんだよな。あの時、何を願おうとしてたのか、今でも覚えてるんだ。

美青:え、何を?

○○:それは……今こうして美青と一緒にいることさ。

その言葉に、美青は驚いたように彼を見つめたが、すぐにふっと優しい笑みを浮かべた。

美青:そんなこと、今言われたらドキドキするじゃん……でも、嬉しいよ。

○○は笑って、美青の手をさらに強く握りしめた。二人は夜道を歩きながら、これまでの思い出を少しずつ振り返り、そして未来への期待に胸を膨らませていた。

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