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明日、もう一度君に…⓪

木漏れ日が差し込む部屋の中、瞳月は膝を抱えて静かにけん玉をいじっていた。手元で揺れる赤い玉を見つめながら、彼女は昨日の会話を何度も反芻していた。

「結婚ってさ、人生の大きな分岐点だよな。」

○○の言葉は、今も彼女の胸に刺さっている。彼は幼なじみで、どんな時も隣にいてくれる存在。瞳月にとって、彼との時間はいつも心地よかった。それだけに、彼の突然の一言は、まるでその心地よさを揺るがすかのように響いていた。

瞳月:それ、急に何の話やねん?

瞳月がそう問いかけても、○○は困ったように笑いながら目をそらした。その仕草が、いつも以上に彼女を不安にさせる。彼が何か大きな決断をしようとしている――そんな予感が瞳月の胸の内に広がっていく。

○○:いや、ちょっと考えることがあってさ。

それ以上、彼は何も語らなかった。瞳月もそれ以上問い詰められず、会話は自然と途切れた。しかし、その沈黙の中で瞳月の胸には、言いようのない不安が膨れ上がっていた。

その夜、瞳月は布団の中で何度も寝返りを打った。けん玉を手に取り、ただ無心で遊ぶ。それでも、○○の言葉が頭から離れない。

結婚――それは、二人の関係にも何らかの影響を与えるものだろうか。彼女はそう考えずにはいられなかった。親友という枠を越えた感情を抱いている自分にとって、それは避けられない問いだった。

翌朝、瞳月はいつもより早く目を覚ました。祖母の家の縁側に座り、朝のひんやりとした空気を感じながら庭を眺めていた。秋の風が頬を撫で、庭の木々は紅葉の色を深めている。

○○が現れたのは、そんな静かな時間の中だった。彼は小さな手土産を片手に、どこか気まずそうな顔をしていた。

○○:おはよう。早いんだな。

瞳月:あんたが来るん、知っとったからな。

彼女は努めて普段通りに振る舞おうとしたが、心の中では鼓動が早まっていた。○○は苦笑いを浮かべながら、彼女の隣に腰を下ろした。二人はしばらく無言で庭を眺めていたが、やがて彼が静かに口を開いた。

○○:来月、こっちを離れることになった。

その言葉に、瞳月の胸がぎゅっと締め付けられた。彼の言葉の重みを受け止めようとするが、簡単には受け入れられない。

瞳月:なんでやねん……急すぎるやろ?

○○:親の仕事の都合なんだ。でも、それだけじゃない。

○○は一瞬ためらうように視線を落とした後、再び瞳月の目を真っ直ぐに見つめた。その真剣な眼差しに、瞳月は息をのむ。

○○:瞳月。俺、君に言いたいことがある。

瞳月:……何やの?

彼女の声は自然と震えていた。これから聞かされる言葉が、自分にとって重要なものになる――そんな予感が彼女を圧倒していた。

○○:ずっと、君のことを大切に思ってきた。でも、それをちゃんと伝えたことがなかった。だから……俺の気持ちを聞いてほしい。

彼の言葉に、瞳月の心は一瞬で熱を帯びた。けれど同時に、彼が離れていくという現実が彼女の中で大きくなっていく。

瞳月:……そんな話、いきなりすぎるわ。

そう言いながらも、彼の気持ちを否定することはできなかった。なぜなら、彼女自身もまた、同じ感情を抱いていたからだ。

二人の関係が、これからどう変わっていくのか。期待と不安、そしてこれまでとは違う未来への扉が、今静かに開かれようとしていた。



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