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零時のペンダント~episode10~

薄暗い空間の中、謎の青年――自称“裂け目の番人”に導かれながら、瑛紗たちは目的地に近づいていた。冷たい風が吹き抜け、周囲には不気味な静けさが漂う。

○○:番人……。お前は一体何者なんだ?なんで俺たちを助ける?

番人:俺か?“何者”かなんて重要か?お前たちと同じく裂け目に巻き込まれた存在さ。それ以上の詮索は無意味だよ。

玲:巻き込まれた?なら、あなたにも何かしらの力が……?

番人は薄く笑いながら前を向き、答えを濁した。

番人:力があるからと言って、それが正義とも限らないだろう?

瑛紗:……じゃあ、あなたの力の代償も、何かあるんですか?

その問いに番人は一瞬だけ表情を曇らせたが、すぐにいつもの冷静な顔に戻った。

番人:質問は控えておけ。裂け目の奥で待っている“本当の敵”に備える方が先だ。

やがて、一行は巨大な裂け目が広がる空間にたどり着いた。その中心には、異様に輝く光の球体が浮かび、周囲を歪ませている。

玲:……ここが裂け目の核心ね。

瑛紗:こんな場所……どうやって閉じればいいの?

番人:核心を閉じるには、鍵となる者が力を解放し、裂け目を“修正”する必要がある。つまり、瑛紗、お前の役割だ。

○○:おい待て、瑛紗が危険な目に遭うんじゃないのか?他に方法はないのかよ?

番人:方法はある。だが、それにはもっと大きな代償が伴う。お前がその代償を引き受ける覚悟があるなら別だがな。

○○は息を飲み、瑛紗の方を振り返る。

瑛紗:……私、やります。この力を得たのは偶然じゃないと思うから。

○○:でも瑛紗、それでお前が消えたら……!

瑛紗:大丈夫だよ。○○くんが一緒にいてくれるなら、私、怖くないから。

瑛紗が光の球体に向かって歩み寄ろうとしたその時、空間全体が震え、巨大な影が現れた。それは裂け目を守護する存在――“裂け目の守護者”だった。

玲:……やっぱり出てきたわね。

番人:これを倒さない限り、裂け目を閉じることはできない。覚悟を決めるんだ。

守護者は咆哮を上げ、鋭い爪を振り下ろして一行に襲いかかる。

○○:くそっ、でかすぎるだろ……!

玲:○○、冷静になって!敵の動きをよく見て!

番人:俺が前線を引き受ける。瑛紗、お前は力を集中させろ!

瑛紗:……わかりました!

番人と○○が守護者の攻撃を引きつける中、瑛紗は静かに目を閉じ、力を呼び起こす。

瑛紗:(怖い……でも、私がやらなきゃ誰も救えない!)

周囲に眩い光が満ち始める。瑛紗の体から放たれる力が空間を震わせ、守護者の動きを一瞬鈍らせた。

守護者が再び動き出そうとしたその時、○○が咄嗟に叫んだ。

○○:瑛紗!今だ、やっちまえ!

瑛紗は力を一気に解放し、光の奔流が守護者を飲み込んだ。その瞬間、裂け目全体が大きく揺れ、歪みが徐々に収束していく。

守護者の影が消え去り、静寂が訪れた。

瑛紗:……やった……?

玲:ええ、裂け目の修正は成功したわ。でも……。

番人が険しい表情を浮かべながら言葉を継いだ。

番人:まだ終わっていない。裂け目は無数に存在する。その全てを閉じるまで、お前たちの試練は続く。

○○は瑛紗を抱きしめながら、静かに決意を固めた。

○○:(俺が絶対に守る。瑛紗がどんな運命に直面しても、俺が支えるんだ――)

瑛紗:(私、この力と共に歩んでいく。たとえ代償が何であっても……)

裂け目の修正が完了した後、番人がポツリと呟いた。

番人:だが、裂け目の発生には原因がある。お前たちはその原因を知らなければならない。

玲:原因?それは一体……。

番人:その答えは、もう一つの裂け目の向こう側にある。覚悟ができたらついて来い。

瑛紗たちは互いの顔を見合わせながら、小さく頷いた。こうして、裂け目の真実を探る新たな旅が始まった――。

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