やかましい恋の始まり

秋の空気が少し冷たくなり、体育館の窓から見える木々が色づき始めた頃。高校2年生の山下瞳月は、友人の村井優と中嶋優月と共に、部活のミーティングを終えて教室に戻ろうとしていた。

瞳月：「今日のミーティング、長すぎた…しー、もう疲れたわぁ。」

瞳月はふと時計を見て、ため息をつく。放課後の自由な時間がすっかり消えてしまったことに不満を漏らしつつも、友人たちと一緒なら、その不満もどこか薄れるような気がする。

優月：「ゆつたんも疲れたよ〜…ゆつたんつたれた…」

中嶋優月は疲れると一人称を「ゆつたん」に変え、独特の言葉で話し始める。優月のそんな様子に、瞳月は思わず笑い声をあげた。

瞳月：「ほんま、ゆーづ…何言うてんねん！」

ふと、隣を歩く村井優がふわっとした笑顔で言う。

村井：「瞳月って、疲れてると関西弁出ちゃうね。」

瞳月：「あぁ…言うたらしーの気持ちがスッキリするんよ！…それにしても、優はほんまにふわふわしてんなぁ。しーと全然ちゃうわ。」

瞳月は村井優のふんわりした雰囲気を見て、羨ましそうにため息をついた。瞳月自身は小柄で、感情をすぐに表に出してしまうタイプ。そんな自分とは対照的な優の柔らかな性格を、心のどこかで尊敬していた。


その日、学校が終わり、瞳月は帰り道を急いでいた。明日、クラスで劇の練習があるため、家でセリフを覚えなければならない。だが、頭の中はそれどころではなかった。

――〇〇のことばっかり考えてるやん、しー…。

そう、最近瞳月の心を掻き乱しているのは、同じクラスの〇〇だ。何かにつけて気にかけてくれる彼の優しさや、ふとしたときに見せる真剣な表情。それが、瞳月の胸の中にいつもある。

瞳月：「…あかん、集中せな。」

瞳月は頭を振って気持ちを切り替えようとするが、〇〇の顔が何度も思い浮かぶ。特に、放課後に彼と会話を交わすと、瞳月の心拍数はどうしても早くなる。


次の日、教室では劇の練習が始まっていた。瞳月と〇〇はペアでセリフのやり取りをしていたが、瞳月は集中できずに何度も台詞を間違えてしまう。

瞳月：「もう、なんでやねん！」

〇〇：「大丈夫だよ、瞳月。焦らずゆっくりやればいいんだから。」

〇〇は優しく言うが、その言葉に瞳月はますます顔を赤くしてしまった。彼の言葉が、自分の中で何かを揺さぶるのを感じていた。

瞳月：「う…うるさい！しーはちゃんとできるもん！」

彼女のその反応に、〇〇は軽く笑いながら頭をかいた。

〇〇：「わかった、でも無理しなくていいよ。」

瞳月はその優しさに、さらに心がざわめいた。隣にいるだけで、自分がどうしたらいいかわからなくなる。この感情は何なんだろう――瞳月は胸の中でぐるぐると考えていた。


放課後、瞳月は友人たちと帰ろうとしていたが、〇〇が突然声をかけてきた。

〇〇：「瞳月、ちょっと時間ある？」

瞳月：「え？う、うん…どうしたん？」

〇〇：「ちょっと話したいことがあってさ。」

その一言に、瞳月の心臓が跳ね上がった。何かを期待しながらも、不安でいっぱいになる。

しー：「…わかった、行くわ。」

彼らは校舎裏の静かな場所に移動した。瞳月は何を言われるのか不安と期待で胸がいっぱいになっていた。

〇〇：「最近、ずっと思ってたんだけど…瞳月ともっといろんな話がしたいんだ。瞳月が何を考えてるのか、もっと知りたいって思ってる。」

瞳月は一瞬、言葉が出なかった。〇〇が自分にこんなに真剣に向き合ってくれるなんて思っていなかったからだ。

瞳月：「しーのこと…もっと知りたいん？」

〇〇：「うん。瞳月と一緒にいると楽しいし、君がどんなことを感じてるのか、もっと知りたくなる。」

その言葉に、瞳月は胸がいっぱいになった。ずっと心の中で感じていた感情が、ようやく形になった気がした。

瞳月：「…しーも、〇〇とおると楽しいよ。」

〇〇：「照れてる所も可愛いね。」

瞳月：「やかましいわ///」

彼女はそう言って、顔を赤くしながら照れ隠しに声を張り上げた。

〇〇はそんな瞳月を見て、笑顔を浮かべた。そして、優しく頭を撫でながら、こう言った。

〇〇：「そんな瞳月が可愛くて、俺は好きだよ。」

その瞬間、瞳月の胸は一気に熱くなった。自分が彼に対して抱いていた感情が、確かなものだったと気づいた。

しー：「しーも…〇〇が好きやで。」

彼女は小さな声でそう告げた。
そして、二人の距離は自然と縮まっていくのだった。