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風が運ぶ恋の予感

言葉遣いがおかしな部分もあるかもしれません。
その時はご指摘ください🙇‍♀️
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秋の風が校庭を駆け抜け、木々の葉がカサカサと音を立てて揺れる。藤吉夏鈴は窓際の席に座りながら、頬杖をついて外を眺めていた。放課後の静かな教室。
クラスメイトたちは次々と部活動や帰り支度をして教室を出ていくが、夏鈴はまだ動けないでいた。

彼女は、机の上に置かれたテスト用紙を見つめてため息をつく。結果はいつもと変わらない、クラスの下位に沈んだままだった。

夏鈴:「…またやってしもうた」

隣に座っていた山﨑天が、同じく低い点数のテストを握りしめて笑いながら声をかけてきた。

天:「夏鈴、うちら今回もなかなかエグいなぁ。
      補習確定やろ、これ」

夏鈴は苦笑いしながら頷く。

夏鈴:「うん、天と麗奈も一緒やし、まぁなんとかなるやろ」

教室の隅では、守屋麗奈が静かにテスト用紙を見つめていた。彼女もまた、いつも通りの結果に肩を落としているようだった。

麗奈:「みんなで補習かぁ…
         でも、一緒なら少しは楽しいかもしれないね」

そこに、田村保乃が元気な声で近づいてきた。彼女の関西弁が教室の中に響き渡る。

保乃:「いやー、あんたら全然アカンやん!うちもそんなに良くないけど、なんでそんなに落ち込むん?」

夏鈴と天は、保乃の明るい声に少し笑いながら肩をすくめた。

天:「保乃もクラスの下の方やけど、
      うちらに比べたらまだマシやで」

保乃:「まぁ、うちはな、関西魂でどうにかするから!」

そう言って笑う保乃の姿を見て、夏鈴は少しだけ心が軽くなるのを感じた。



その夜、夏鈴は家に帰っても〇〇のことが頭から離れなかった。彼とは同じクラスで、クラスのムードメーカー的な存在。いつも周りの人を笑わせてくれる明るさがあり、夏鈴はそんな彼に密かに惹かれていた。

彼の声や仕草、何気ない優しさが、夏鈴の胸に小さな波を立てていた。
しかし、自分から彼に話しかけることはできなかった。
いつも遠くから眺めているだけで近づく勇気が出ない。

翌朝、学校に向かう途中、夏鈴はふと校門の前で立ち止まった。少し離れたところで、〇〇が友達と笑いながら話しているのを見つけたからだ。

夏鈴:「…やっぱり、無理や」

そうつぶやいて歩き出そうとしたその時、突然背後から声がした。

理佐:「夏鈴ちゃん、大丈夫?
         なんか考え事してたみたいだけど」

振り返ると、3年生の渡邉理佐と小林由依が立っていた。二人とも優しい表情で夏鈴を見つめている。

夏鈴:「あ、理佐さんと由依さん…
         いや、ちょっとぼーっとしてただけです」

理佐:「そっか。何かあったら言ってよ。
         いつでも話聞くから」

由依:「そうそう。夏鈴ちゃんっていつも考えすぎるところあるしね」

二人の先輩の言葉に、夏鈴は少しだけ気持ちが和らいだ。理佐と由依は普段から後輩たちのことを気にかけてくれていて、夏鈴も密かに憧れている存在だった。



そんなある日、夏鈴が昼休みに校庭で一人座っていると、〇〇がふいに近づいてきた。
彼の姿に驚いた夏鈴は、慌てて立ち上がる。

〇〇:「藤吉さん、ここで何してんの?」

夏鈴:「あ、えっと…ただ、ぼーっとしてただけ」

〇〇は軽く笑いながら、彼女の隣に腰を下ろした。

〇〇:「僕もたまにここで休むんだよね。なんか落ち着くし」

その自然体の様子に、夏鈴の心は少しだけ落ち着きを取り戻す。

〇〇:「そうだ、次のテストだけど、もしよかったら一緒に勉強しない?僕、少しは教えられるかもしれないし」

その一言に、夏鈴は一瞬固まった。
彼に勉強を教えてもらうなんて、考えもしなかった。
けれど、そんなチャンスを逃すわけにはいかない。

夏鈴:「ほんまに?
         …でも、私あんまり勉強得意やないし」

〇〇は笑って肩をすくめた。

〇〇:「大丈夫だよ。一緒にやれば何とかなるって」


そして、数日後。二人は放課後の図書室で一緒に勉強をすることになった。
夏鈴は最初こそ緊張していたが、〇〇の丁寧な教え方に次第にリラックスしていった。

夏鈴:「〇〇くん、ほんまに教え方上手やな…
         私でもわかる」

〇〇:「藤吉さん、ちゃんとやればできるじゃん。
         もっと自信持って!」

その言葉に、夏鈴は小さく頷いた。彼の隣で過ごす時間が、今までにないほど特別に感じられた。
勉強は得意ではないけれど、〇〇と一緒なら不思議と頑張れる気がした。



その日の帰り道、夏鈴は一人で校門を出た。
冷たい風が頬を撫で、秋の夜が静かに訪れる。

ふと、〇〇との時間を思い出しながら、夏鈴は自分の胸の中に芽生えた感情に気づく。

彼のことが、好きだ。

ずっと遠くから見ているだけだったけれど、今はもっと近くに感じたい。彼に自分の想いを伝えたい。

でも、どうすればいいのだろう。
その答えはまだ見つからない。
ただ、彼の隣で少しずつでも自分の気持ちを伝えていけたら――そんな風に、夏鈴は静かに決意を固めた。

冷たい風の中、彼女はその一歩を踏み出す勇気を胸に抱き、家路を歩き始めた。

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