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零時のペンダント~episode6~

○○と瑛紗の決意が固まった翌日、玲は二人を再び図書館に呼び出した。そこには見覚えのない古びた装置が置かれていた。
玲はその装置を指差しながら説明を始める。

玲:これは“時間の観測機”だよ。裂け目がどこに現れるかを予測できる装置だ。だが、これを使うには大きなエネルギーが必要でね。瑛紗の力がなければ動かないんだ。

瑛紗:私の力で……?でも、この装置を動かすことに意味はあるの?

玲:もちろんだ。この装置があれば、裂け目が開く場所や時間を事前に把握できる。君たちの戦いを有利に進められるんだよ。ただし……。

○○:ただし?

玲:裂け目の真実も同時に明らかになるかもしれない。君たちが本当に知りたいのなら、動かす覚悟を決めるんだ。

○○は一瞬迷ったが、瑛紗と視線を交わして頷く。

○○:俺たちはもう逃げない。頼む、動かしてくれ。

瑛紗は深呼吸をし、装置に手を置いた。光が装置全体を包み込み、やがて一つの映像が浮かび上がる。そこには過去の○○と丹生明里が映し出されていた。

瑛紗:これ……○○くんの過去?

映像の中で、○○が裂け目の中へ飛び込む姿が映る。

○○:(これが……俺が過去を変えた瞬間か……)

だが次の瞬間、映像が乱れ、“裂け目”が瑛紗を選んだ場面に切り替わる。

玲:これが君たちの運命の始まりだ。そして、その未来がどうなるのかも――。

映像には、瑛紗が最後の力を振り絞り裂け目を閉じる場面と、彼女がその後力尽きる瞬間が映し出された。

瑛紗:……こんなのって……。

○○:玲!これを変える方法はないのか!?

玲:方法がないとは言わない。ただ、それは君たちが新しい選択を見つけ出す必要があるということだ。

その夜、瑛紗と○○が学校の屋上で話をしていたところ、突然空間が歪み始めた。これまでとは比べ物にならないほど巨大な裂け目が現れる。

○○:瑛紗、気をつけろ!

裂け目から現れたのは、人型の歪みではなく、巨大な獣のような存在だった。その圧倒的な力に二人はたじろぐ。

瑛紗:これが歪みの使者……?

玲(通信越し):違う、これは“裂け目そのもの”が具現化した存在だ。過去の改変が引き起こした最大の歪みだよ!

○○:どうすればいいんだ!?

玲:これを抑えるには、瑛紗がその力を解放するしかない。だけど、そうすれば彼女の命が――。

○○:やめろ!そんなことさせるわけにはいかない!

瑛紗は震える手を握りしめ、覚悟を決めた表情を浮かべた。

瑛紗:○○くん、私なら大丈夫だから……信じて。

○○:そんなの信じられるかよ!お前を失うなんて……俺は……。

裂け目から放たれる衝撃波が校舎を揺らす中、○○はある決意をする。

○○:(俺が過去を変えたことで、全てが狂った。なら……もう一度過去に戻って、この運命を変えるんだ!)

瑛紗:○○くん?

○○:瑛紗、時間を稼いでくれ。俺が過去に戻って、全てを元に戻す!

玲:何を言ってるんだ!それは君の体にも大きな負荷が――。

○○:関係ない!このまま瑛紗を犠牲にするくらいなら、俺が全部背負う!

瑛紗:そんなのダメ!○○くん、あなたまで……!

瑛紗の必死の叫びを振り切り、○○は裂け目に飛び込む。

裂け目の中は、時間の流れが交錯する混沌とした空間だった。○○は必死に意識を保ちながら、過去へと進む。

○○:(明里を守るために変えた過去……でも、その選択が瑛紗を傷つける未来を作った。この二つを両立する方法は必ずあるはずだ!)

やがて、過去の自分と向き合う瞬間が訪れる。

過去の○○:……これが俺の選択だ。

現在の○○:待て!その選択をするな!

過去の○○は驚いた表情を浮かべるが、現在の○○は強い決意で語りかける。

現在の○○:お前が守りたいのは、明里だけじゃないはずだ。大切な人たちを守るために、もう一度考え直せ!

過去の○○:……分かった。未来を信じてみるよ。

その瞬間、時間が静かに修復され始めた。

目を覚ました○○は、瑛紗と明里の笑顔に囲まれていた。裂け目の存在は完全に消え、世界は元の平穏を取り戻していた。

瑛紗:○○くん、おかえりなさい。

○○:ああ……ただいま。

玲:君たちの選択が正しかったようだね。これからは自分たちの未来を自分の手で作るんだ。

○○と瑛紗は静かに頷き、夜空を見上げた。そこには無数の星が輝き、新しい未来への希望を象徴していた。

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