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零時のペンダント~episode2~

○○がペンダントの力で過去を変え、明里を救った瞬間から数時間後――。
いつもの公園のベンチで○○は呆然と座り込んでいた。明里を救ったはずなのに、胸の中に広がるのは不安と違和感だった。

明里:○○、大丈夫? さっきからぼーっとしてるけど。

○○は顔を上げると、そこには笑顔の丹生明里が立っていた。

○○:あ……ああ、大丈夫だよ。

明里:本当に? なんか変だよ、いつもと。

○○は平静を装って言葉を返すが、玲の言葉が脳裏をよぎる。

「過去を変えることで何か別の『歪み』が生じる。それだけは覚えておいて。」


明里:ねえ、どうかした?

○○:いや……なんでもない。

明里の無邪気な表情に罪悪感が込み上げる。これが本当に「正しい未来」なのか――答えはまだ見つからないままだった。

次の日、○○は学校で奇妙な違和感を覚えた。
いつもと同じ教室、いつもと同じ友人たち。だが、微妙に記憶と現実が食い違っている。

友人A:おい、○○! 今日の数学のテスト、勉強してきたか?

○○:……テスト?

周囲が一瞬ざわめく。

友人B:お前、何言ってんだよ? 今日は中間テストだろ?

○○:え……?

○○の記憶では、テストは来週のはずだった。だが、誰もが「今日がテスト」と言い切る。
焦りを感じながら問題用紙に向かう○○。だがさらなる異変が襲う――答えがわからない。

○○:(……俺の記憶がズレてる? まさか、過去を変えた影響か?)

困惑しながら放課後を迎えても、その違和感は消えなかった。

○○が校門を出ようとしたその時、誰かが声をかけてきた。

瑛紗:○○くん……ちょっといい?

振り返ると、そこには同じクラスの池田瑛紗が立っていた。彼女は普段目立つ存在ではなかったが、その日の瑛紗はどこか不安げな表情を浮かべていた。

○○:……何か用か?

瑛紗:ねえ、○○くん……最近、変な夢とか見ない?

○○:夢?

瑛紗は俯きがちに続ける。

瑛紗:私ね、毎晩変な夢を見るの。私の知らない時間、知らない出来事。それに……必ずあなたがそこにいるの。

○○:……!

○○の背筋が凍った。瑛紗が言う『夢』――それは過去改変の影響なのか?

○○:……気のせいじゃないか?

瑛紗:気のせい、かな……。

瑛紗は小さく笑ったが、その目は笑っていなかった。

帰り道、○○は一人考え続けていた。過去を変えたことで何かが狂い始めている――そのことだけは確かだった。

玲:やあ、○○。

突然聞こえた声に振り返ると、そこには玲が立っていた。

○○:玲……!

玲:どうやら、もう気付いたようだね。過去改変の影響に。

玲は静かに言葉を続ける。

玲:君が明里を救ったことで、時間の流れに歪みが生じている。小さなズレが、やがて大きな崩壊を生む――。

○○:……崩壊?

玲:そう。このままでは君の知っている世界そのものが壊れる。

玲の言葉に○○の顔が強張る。

○○:じゃあ、どうすればいいんだ……?

玲:それはまだ、君次第だよ。

玲の冷たい声が耳に残る中、○○の心には一つの疑念が浮かんでいた。

○○:(本当に明里を救ったことが正解だったのか……?)

その夜――。
○○は机に座り込み、ペンダントを見つめていた。

○○:俺は……間違えたのか?

すると、不意にスマホが震える。画面には見知らぬ番号からの着信。
恐る恐る電話に出ると、低い声が響いた。

???:お前が過去を変えたこと、後悔するなよ。

○○:……誰だ?

返事はなく、電話は切れた。

その瞬間、ペンダントが鈍く光を放ち、窓の外の夜空に『裂け目』のようなものが広がっていくのが見えた。

○○:(世界が……壊れ始めている――?)

初めて、本当の恐怖が○○を襲った。

続く…

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