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君の背中を追いかけて

的野美青は、ずっと自分に自信が持てないまま、毎日を過ごしていた。高校の教室にいると、周りの笑顔や声がどんどん遠くに感じられ、自分だけがその輪の外にいる気がしてしまう。

そんなある日、彼女の視線はふと廊下の向こうにいる一人の先輩に引き寄せられた。先輩の名前は小林由依。クラスや部活でも頼られる存在で、笑顔が誰よりも輝いていた。

美青は、いつもその背中を遠くから見つめていた。「私もあんなふうになれたら……」そう思いながらも、何も言えずにいる。

ある放課後、部活を終えた美青が帰ろうとすると、憧れの先輩、小林由依が声をかけてくれた。

由依:「美青、今帰り?よかったら一緒に帰ろう」

驚きで声が出ない美青は、ただ小さくうなずくことしかできなかった。夢のような瞬間が、自分に訪れるとは思ってもみなかった。

二人で学校の外に出ると、先輩はゆっくりと歩きながら話しかけてきた。

由依:「いつも頑張ってるね。私、ずっと見てたよ」

その一言に、美青の心臓が大きく跳ねた。先輩が、自分のことを見てくれていたなんて思いもよらなかった。

それから数週間、美青の生活は少しずつ変わっていった。由依と話す機会が増え、少しずつ自分に自信が持てるようになった。

しかし、美青にはもう一つ心の中でくすぶっている思いがあった。それは、彼の存在だ。

彼の名前は〇〇。彼とは同じクラスで、初めて会ったときからずっと気になっていた存在だった。彼はクラスの中心にいるわけでもなく、目立つタイプでもない。けれど、彼のさりげない優しさが、美青の心に静かに染み込んでいた。

ある日、美青が忘れ物を取りに教室に戻ると、〇〇が一人、窓辺で本を読んでいる姿があった。その穏やかな表情を見ていると、心が落ち着く。思わず声をかけようとしたそのとき――。

美羽:「美青!やっと見つけた!」

同期である村山美羽が、元気いっぱいに教室へ飛び込んできた。村山は、美青と同じ部活に所属していて、いつも彼女を励ましてくれる大切な存在だ。

美羽:「もう、ずっと探してたよ。早く部活に行こ。」

美青は慌てて返事をし、〇〇に何も言えないまま、村山に引っ張られて教室を後にした。心の中では、〇〇に話しかけたかったという後悔が渦巻いていたが、同時にその瞬間に何もできなかった自分を責めていた。

その夜、美青はベッドに横たわりながら、ぼんやりと天井を見つめていた。由依さんに憧れているけれど、〇〇のことも気になる。この複雑な気持ちを、どうすればいいのか分からない。

翌日、また〇〇と目が合った瞬間、美青は決心した。今日は、絶対に話しかける。

放課後、〇〇が部活の準備をしている美青のそばを通り過ぎた。その瞬間、美青は勇気を振り絞って声をかけた。

美青:「〇〇君、ちょっといいかな?」

〇〇は驚いた顔をしながらも、すぐに微笑んで立ち止まってくれた。その優しい微笑みが、美青の心をさらに温かくした。

美青:「あの……前から気になってたんだけど、今日少しだけ話せる?」

〇〇:「もちろん、どうしたの?」

彼の言葉に、美青は胸がいっぱいになった。たった一言を話せただけで、これまでの不安や緊張が消えていくようだった。

次第に、美青と〇〇の距離は少しずつ縮まっていった。笑顔で会話をする二人を見守る小林先輩と、元気な村山のサポートを受けながら、美青は少しずつ自分に自信を持つことができるようになっていった。

――そして、ある日。

〇〇との距離が少しずつ縮まっていく日々の中で、的野美青は毎日が少しずつ輝いて見えるようになっていた。以前は目立たない自分が嫌だったけれど、〇〇との関係が進むにつれ、自分のことを受け入れ始めていた。

ある日、放課後の帰り道、〇〇と美青はいつものように一緒に歩いていた。ふと、いつもより静かな〇〇に気づいた美青は、少し心配そうに声をかけた。

美青:「〇〇君、なんか元気ない?」

〇〇は少し困ったように笑いながら、ポケットに手を突っ込んだ。

〇〇:「いや、大丈夫。ちょっと考え事してたんだ」

その表情に何かを感じ取った美青は、足を止めて彼の方に向き直った。

美青:「何かあったなら、私に話してくれていいんだよ?」

〇〇は美青の真剣な表情を見て、少し照れくさそうに頭をかいた。そして、ゆっくりと美青に向き直る。

〇〇:「美青……俺、ずっと前から君のことが好きだった」

突然の告白に、美青の胸は大きく高鳴った。驚きと喜びが同時に押し寄せてきて、言葉が一瞬出てこなかった。

〇〇:「でも、君に似合うかどうか分からなくて。俺みたいなやつじゃ、ダメなんじゃないかってずっと悩んでたんだ」

彼の不安な気持ちが伝わってきて、美青は自然と微笑んだ。彼が自分のことを思ってくれていたことが、何よりも嬉しかった。

美青:「〇〇君が言ってくれて、すごく嬉しい。私もね、ずっと〇〇君のことが気になってたんだ」

美青は、彼の瞳をまっすぐに見つめながら続けた。

美青:「だから……私も、〇〇君のことが好き」

その言葉に、〇〇の表情は驚きと安堵が入り混じったものになった。お互いの気持ちを確かめ合った瞬間、美青の頬はほんのりと赤く染まった。

〇〇:「本当に?……俺、すごく嬉しい」

美青は照れながらも笑顔を返し、〇〇の手が自分の手にそっと触れた瞬間、世界が急に柔らかく包まれたような気がした。

〇〇:「これからも、ずっと一緒にいられるといいな」

美青は小さくうなずき、心の中で新しいスタートを感じていた。ずっと遠くに感じていた恋が、今は目の前にあり、手を伸ばせば届くものになった。

その後、二人は正式に付き合うことになった。周りの友達や部活仲間には驚かれたものの、美羽や由依も温かく見守ってくれていた。

由依は笑顔で言った。

由依:「やっぱり、美青も素敵な恋ができるんだって思ってたよ。おめでとう!」

その言葉に、美青は少し照れくさそうに微笑んだ。憧れの先輩から祝福されるなんて、夢のようだった。今まで、自分に自信が持てなかった彼女が、ようやく一歩踏み出すことができた瞬間だった。

〇〇との日々は、これまでとはまるで違っていた。毎朝、学校に向かう足取りが軽くなり、彼との時間が何よりの楽しみとなっていた。二人で過ごす時間は、何気ない日常の中に輝きをもたらしてくれた。

そんなある日、二人はいつものように放課後の帰り道を歩いていた。〇〇は、美青の隣で軽く笑いながら、彼女にふと尋ねた。

〇〇:「そういえば、憧れてる先輩って、小林先輩だよね?」

美青は少し驚いた顔をしながらも、素直にうなずいた。

美青:「うん。由依さんは、いつも優しくて、頼りになるからね。私も、いつかあんなふうになりたいって思ってたんだ」

〇〇はそれを聞いて、少し考え込むように黙った後、ふと笑顔を浮かべた。

〇〇:「でも、俺は美青のままがいいと思うよ。無理に誰かに似せる必要はない。美青は、美青のままで十分素敵だから」

その言葉に、彼女の胸はまた大きく高鳴った。〇〇が言ってくれた「美青のままでいい」という言葉が、彼女の心に深く響いた。由依のようになりたいという憧れはあったけれど、自分らしくいることの大切さに気づかせてくれたのは、〇〇の存在だった。

美青:「ありがとう……〇〇君」

彼女は素直にそうつぶやき、隣にいる彼に少し近づいた。手をつないで歩くその瞬間、美青は自分がこれから歩んでいく未来が少しずつ鮮明になっていくのを感じていた。

〇〇と一緒にいることで、自分を好きになることができた。そして、これからも少しずつ前に進んでいける気がした。彼の隣にいられること、それだけで美青は幸せだった。

――それからしばらく経ち、季節は夏から秋へと移り変わっていった。付き合い始めてからも、二人の関係は変わらず穏やかで、日々を大切に過ごしていた。

ある日の放課後、学校の屋上で風に吹かれながら、〇〇と並んで夕陽を見つめていると、ふと美青が口を開いた。

美青:「ねぇ、これからも……ずっと一緒にいられるかな?」

彼女の問いに、〇〇は少しだけ考え込むように視線を遠くに向けた後、彼女の方に向き直って笑顔で答えた。

〇〇:「もちろん。俺は美青と一緒にいると、いつも楽しいし、安心する。これからもずっと、隣にいてくれると嬉しいよ」

その言葉に、美青の心はまた温かさで満たされた。これからも二人で歩んでいけるという確信を感じながら、美青はゆっくりと〇〇の肩に寄り添った。

夕陽が少しずつ沈んでいく中で、二人の影は長く伸びて、まるでこれから先の未来を示しているかのようだった。

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