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いつか変わる今を抱きしめて
朝日がカーテン越しに差し込み、部屋の中が少しずつ明るくなっていく。ベッドの上で、小林由依は目を覚まし、隣にいる彼、○○の寝顔を見つめていた。
由依は大学の4年生で、○○も同じ大学に通っている。二人は一年半前から同棲を始め、互いに助け合いながら忙しい学生生活を送っていた。毎日が穏やかで、平和な日々だったが、どこか当たり前のように感じてしまう瞬間もあった。それでも、彼の隣で目を覚ますことは、由依にとって特別なことだった。
彼の顔をじっと見つめながら、ふと由依は昔のことを思い出す。
まだ同棲を始める前、デートの帰り道、二人で話していたことがある。
由依:同棲なんて、なんだか夢みたいだよね。ほんとにできるのかな…
○○:俺も最初はそう思ってたけど、二人ならきっとうまくやっていけるよ。
その時の○○の言葉が頭をよぎり、由依は微笑んだ。今や彼の言葉は現実になり、二人で築き上げた生活がそこにあった。
彼がまだ寝ている間、由依はそっとベッドを抜け出し、キッチンへと向かった。いつもなら、彼の方が早起きしてコーヒーを入れてくれるが、今日は由依が先に起きてしまった。
コーヒーの香りが部屋に広がり、朝の静かな時間がゆっくりと流れていく。マグカップを二つ手にしてリビングに戻ると、○○はまだ寝たままだった。
彼の隣にそっと腰掛け、顔をのぞき込む。
由依:もう、いつまで寝てるの?
少し不機嫌そうに囁くと、彼はやっと目を開けた。
○○:ん…もう朝?
由依:そうだよ。いつもなら先に起きてコーヒー淹れてくれるのに、今日は私の勝ちだね。
○○:負けたな。ごめん、ごめん。
彼は笑いながら起き上がり、由依からマグカップを受け取った。二人は何も言わずにしばらくコーヒーを飲み、静かな朝を楽しんだ。
大学の授業が午後からだったため、二人はこの朝の時間をゆっくりと過ごすことができた。リビングに座り込み、テレビをつけて適当にチャンネルを回すと、面白そうな映画がやっていた。
○○:これ、前に観たやつだよね。
由依:うん、覚えてるよ。
○○:じゃあ、続きを観ようか。
映画を見ながら、二人は自然と寄り添い、彼の肩に頭を乗せる。こんな何気ない瞬間が、二人にとって最も大切な時間だった。
午後になり、彼は授業の準備を始めた。大学生活は決して楽ではなく、課題やプレゼン、研究と忙しい日々が続く。しかし、二人で過ごすこの日常が、少しだけ彼らの心を癒してくれた。
○○がカバンを手に取り、玄関に向かう姿を見送る由依は、ふと考えた。これからも同じように、平凡だけれど幸せな日々が続くのだろうか、と。
由依:気をつけてね。
○○:うん。すぐ戻るから。
玄関で手を振り、彼は大学へと向かった。
由依はその背中を見送りながら、少しだけ寂しさを感じたが、彼が帰ってくる場所が自分の隣であることを知っているから、すぐに笑顔に戻った。
夕方、○○が帰宅すると、二人で夕食の準備を始めた。メニューは二人が大好きなオムライス。作りながら、二人はいつものように他愛ない話を交わす。
由依:今日の授業どうだった?
○○:まぁまぁかな。プレゼンが思ったより早く終わって助かったよ。でも、教授がめっちゃ質問してきてさ…
由依は笑いながら、彼の話に耳を傾ける。こうした日常の会話が、二人を繋げる絆のように感じられた。
オムライスが出来上がり、二人はテーブルに座って食事を始めた。ケチャップで描いた笑顔の顔が、彼女の作った料理に彩られている。
○○:これ、今日も上手く描けてるね。
由依:うん、練習したからね。
夜が更け、二人は再びベッドに横たわる。明日のことを考えると少し憂鬱になるが、この瞬間だけは何も考えず、ただ彼の隣にいることが幸せだった。
由依は彼の手をそっと握り、また目を閉じた。
平凡な日常かもしれない。でも、この日々が続く限り、彼女は満足していた。
次の日、朝がまた訪れた。いつものように、光がカーテン越しに差し込み、由依は目を覚ます。隣を見ると、○○はまだ寝ていた。今日は彼が早く授業に行かなければならない日だったのに、いつもの朝よりも遅く起きているようだ。
由依はそっと彼の肩を揺らしながら、少し心配そうに声をかけた。
由依:ねぇ、もう朝だよ。今日授業早いんじゃなかった?
彼は少し目を開け、まだ眠そうな表情で時計を確認した。焦る様子もなく、ゆっくりと体を起こして顔を洗いに向かった。
○○:ああ、そうだ。ありがとう、忘れてたよ。
由依はその背中を見送り、軽くため息をついた。○○はいつもどこか抜けていて、こうして彼のことを世話するのが彼女の日常の一部になっていた。
彼が支度をしている間、由依はキッチンで簡単な朝食を準備し始めた。トーストを焼き、コーヒーを淹れる。二人で過ごすこうした時間が、由依にとっては小さな幸せだった。
○○がキッチンに戻ってくると、テーブルには既に朝食が整っていた。
○○:うわ、ありがと。助かるよ。
由依:ううん、今日は早いって分かってたからね。食べて、早く行かないと遅れるよ?
彼は少し慌てながらトーストをかじり、コーヒーを一気に飲み干す。
○○:今日は昼過ぎには戻れると思うから、何か買って帰るよ。何か欲しいものある?
由依:特にないかな。帰ってきたら、夕飯一緒に作ろうよ。
○○:そうだな、じゃあ帰ったら一緒に。
彼は軽く手を振りながら玄関を出て行った。静かな部屋に戻り、由依は一人の時間を過ごすことにした。洗濯をしたり、部屋を片付けたりと、同棲生活では当たり前のようになっている作業をこなしていく。
それでも、ふと彼がいないことに寂しさを感じる瞬間があった。家事をしている間、彼のいるリビングの風景が頭の中に浮かび、その静けさが逆に彼の存在を強く意識させた。
夕方、○○が帰ってくると、二人で夕食の準備を始めた。今日は由依がリクエストしたパスタを作ることになった。彼が野菜を切り、由依はパスタソースを作る。二人で一緒に作業をしながら、自然と会話が始まる。
○○:今日、学校で教授が面白いこと言っててさ…
彼が話す大学での出来事を聞きながら、由依は笑顔で相槌を打つ。彼が何かを一生懸命話している姿を見るのが、由依は好きだった。彼の楽しそうな顔を見ていると、自然とこちらまで楽しくなってくる。
由依:それで?どうなったの?
○○:結局、教授もよく分かってなかったみたいで、みんな笑ってたよ。
二人で笑い合いながら、夕食を仕上げた。出来上がったパスタを二人で取り分け、テーブルに座って食事を始める。何気ない会話と、何気ない食事。それでも、この瞬間が彼女にとっては何よりも大切だった。
夜が更け、二人は再びリビングでくつろいでいた。テレビをぼんやりと見ているうちに、由依はふと口を開いた。
由依:ねぇ、最近思うんだけど…こうして毎日一緒に過ごしてると、ほんとに時間が早く感じるよね。
○○:そうだな、大学に入ってからあっという間だったよな。
由依:うん、気づいたらもう卒業も近いし。…少し寂しいかな。
彼女の言葉に、○○は少し驚いたようだった。
○○:寂しい?どうして?
由依は少しだけ黙り、彼を見つめた。
由依:なんだろう、こうやって一緒にいられる時間が、いつか終わっちゃうのかなって思ったら、少し怖いかな。もちろん、これからも一緒にいたいし、ずっと一緒だって信じてるけど、何かが変わるのが少し怖いんだ。
○○はその言葉を聞いて、そっと彼女の手を握った。
○○:変わることもあるかもしれない。でも、俺たちが一緒にいる限り、何があっても大丈夫だよ。俺もずっと一緒にいたいと思ってるし、これからも二人で乗り越えていけるって信じてる。
その言葉に、由依はほっとして、静かに微笑んだ。
由依:ありがとう。…やっぱり、あなたと一緒なら大丈夫だよね。
二人はしばらくの間、何も言わずに寄り添っていた。ただ、その温もりを感じながら、明日もまた同じ日々が続くことを願って。
静かな夜、二人は一緒に眠りについた。その穏やかな時間が、永遠に続くようにと。