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櫻坂46

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櫻坂の中編をまとめてます。 古い順に並べてます。
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#村山美羽

届かない声を抱きしめて

届かない声を抱きしめて

高い青空の下、白い雲が静かに流れていく。秋の冷たい風が吹き抜け、校舎の窓から差し込む光が廊下に淡い影を作り出す。〇〇はその影を踏みしめながら、無意識に彼女のいる教室へと足を運んでいた。

村山美羽——クラスではあまり目立たない彼女のことが、気が付けば気になって仕方がなかった。いつも窓際の席で、無言で本を読んでいる姿。感情をほとんど表に出さない彼女の存在は、まるで掴みどころのない影のようで、近くにい

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穏やかな風のように

穏やかな風のように

澄んだ秋空の下、彼女は静かに微笑んでいた。公園のベンチに腰掛け、舞い降りる枯葉を見つめる村山美羽。その隣には、彼女の幼馴染であり、長い間の親友でもある○○が座っていた。

○○:…なあ、美羽。最近、何か悩んでることとか、ない?

彼の問いかけに、美羽はふっと顔を上げた。その大きな瞳には、何かを探るような光が宿っている。

美羽:ううん、特に何もないよ。ただ…

ふと視線を外し、遠くの風景に目をやる

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眠れない夜が教えてくれたこと

眠れない夜が教えてくれたこと

村山美羽は、ベッドに横たわり、天井をじっと見つめていた。

頭の中には、あの曲のフレーズがぐるぐると巡っている。好きな人を思う夜はなぜか眠れなくなる、という歌詞が、まるで自分の気持ちを代弁しているかのように感じられる。

この想いを、誰かに伝えられたら、どれだけ楽になるだろうか。でも、それができないから、こうして一人、深夜の部屋でため息をつくしかない。

ふと携帯を手に取り、幼なじみである○○の名

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君に捧ぐ、小さな恩返し

君に捧ぐ、小さな恩返し

雨音が、静かに街を包み込んでいた。秋の夕暮れ時。普段なら薄暗くなり始める時間だが、雨雲が厚く立ち込めた空は、昼間のような明るさを許さない。濡れた路面が、微かに反射する光をまとっている。

そんな景色の中、一人の女性が歩いていた。長い黒髪が濡れて肌に貼りついているが、彼女は気にする様子もなく、ただ穏やかな顔をして空を見上げている。

通りがかった○○は、思わず足を止めた。雨の日、しかも傘を持たずに外

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