みんな、アーティスト
昨年、歌手のスティングがセルフカバーアルバム『My Songs』を出しました。
67歳になってセルフカバーアルバムを出す背景には「僕の歌によって影響を受けた人が世の中を変えたらいいなと思って歌っている。移民がもたらすものは多様性だ。移民を受け入れなくなったら死んだも同然だ。」という思いがあるのだそう。
スティングの数あるヒット曲の中でも有名な『Englishman in New York』はイギリス人であり、ゲイである作家とニューヨークで出会ったことから生まれたもの。
歌詞にはこうあります。
『I'm an alien. I'm a legal alien.
(中略)
Be yourself no matter what they say.』
「alien(よそ者)」と表現したのはニューヨークにおけるイギリス人ということと、ゲイであるということ。
その方がイギリスにいた頃は、ゲイは法律で禁止されていたという時代です。
しかし彼は自分の「態度」を貫きました。
自分は英国人であり、ゲイだということを自分の立ち居振る舞いや、身につけるもの、つまり自分らしさを貫くことで表現したのです。
この曲はそんな彼に感銘を受けたスティングが「自分らしく生きろ」という素敵なメッセージとして世に送り出した歌なのです。
同じく昨年、松任谷由実さんは45周年のベストアルバム『ユーミンからの、恋のうた。』を出しました。
アルバムにはこんなメッセージが書かれています。
『この先がどんな世の中になろうとも、人は生きていけると思うのです。
いちばん大切なことさえ忘れなければ。
純粋さを捨てないこと。
"私"で生きていくこと。
旅をやめないこと。』
アーティストはいつの時代も常に「問い直し」をしています。
それは自分に対しても、社会に対してもです。
ユーミンはテレビ東京のワールドビジネスサテライトに出演した際、「私が出した作品の後にマーケットができていた」と言っていましたが、それは彼女の問いかけに世の中が共感したということだと思います。
スティングが今になってセルフカバーアルバムを出すというのも、彼自身の「問い直し」でしょう。
もちろん、世界に対しても問い直している。
そうやって問い直し続けることは大事です。
そうすることで「自分はどうなんだ」と考えるので、「自分らしさ」も見えてくる。
アーティストのように「問い直し」を表現することは難しいように見えますが、そんなことはありません。
人と対話することだって表現ですし、日記に書く文章だって表現です。
そこにユーミンが言うところの「純粋さ」と「私」を持つことで、「自分は何がしたいのか」「周りの人(社会)に何を伝えたいのか」が見えてくる。
一人ひとりにこれが見えてくると、社会全体が動き出すのではないかと思います。
みんな、アーティストなのです。