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アフリカでポーカーと読書だけで生きる独身男性の一週間 【#1】

いよいよ、ケニアポーカー日記『世界を相対化する技術』はじまります。

ケニアで読書とポーカーだけをして暮らしている独身男性の謎の生活をつまびらかに記述していきます。

有料マガジン『世界を相対化する技術』の事始め 4/4(mon.) 

朝イチ、学生時分からお世話になっているメンター的存在のGCPの投資家・高宮慎一さんと、NewsPicksの編集部と、ぼくの三者でミーティング。新企画の仕込みと合わせて、取材も行う。ミーティング後、高宮さんといつものように雑談。ケニアで暮らしている身としては、日本の方々と定期的にコミュニケーションをとれる回路は貴重だ。

高宮さんは、折に触れて、ぼくの人生相談に乗ってくれる。個としての戦略的な情報発信についてアドバイスを乞うたところ、「実は日記こそがぼくのキラーコンテンツになり得るのでは」と指摘してくださり、得心した。

アフリカに住んで、毎日ポーカーやってる日本人はおそらく自分くらいのものだろう。つまりぼくにとっての日常は間違いなく、他のだれかにとっては非日常なわけで。思い立ったが吉日、すぐにnoteに定期マガジンの開設を申し込む。

当初、ぼくは月額500円くらいを想定していたけれど、友人の濱名リョウタ君がもっとお金を払いたいです、とのことだったので新書をイメージして980円に決めた。第一号読者になってくれた濱名くんは「毎日、惰性で飲んでいるコーヒー二杯分で、人生が変わるかもしれないよ」と、この新しいマガジンを紹介してくれた。その期待に応えられるよう、皆さんにとっても気づきがあるような、文章を書きたい。

この企画を始動するにあたり、編集的観点からアドバイスをくれたのは、かつての弟子で今は師匠のオバラミツフミだ。ぼくは半引退している商業ライティングの世界で、彼はいまも前線で戦っている。他にも、ぼくがケニアにやってくるまで一緒にモメンタム・ホースで共闘していた小池真幸鷲尾諒太郎がいまも編集の業界で奮闘している様子をうかがい知ると、ぼくも大いに刺激をもらう。

ポーカーテーブルにおける“オーガナイザー”という存在

マガジン開設にあたっての準備で午前が終わり、ジムで軽めのランニングを挟んで、カジノへ向かう。その道中、馬で移動している人たちを見かける。モビリティとしての馬。ナイロビでは、他にも、ラクダで移動している人もよく見かける。馬でカジノ通勤してみたい。実にクールだ。

カジノへ着くなり、ポーカーの師である中国人のジェイソンが「また一緒にオーガナイズしようぜ」と声をかけてきた。ナイロビのポーカーテーブルには“オーガナイザー”と呼ばれる役割の人たちが存在する。

ラスベガスなんかでは、黙っていてもお客が世界中から押し寄せるので、こんな役回りの人はいないのだろうが、ナイロビのようにポーカープレイヤーの数が限られている場所では、ある意味でコミュニティマネージャーのような立場の人がチーム単位で求められる。

オーガナイザーはテーブルにプレイヤーを集客し、卓がフルではない限り、自分たちもプレイヤーとして席に座る。麻雀でいう、代打ちのようなものか。ぼくは、去年の半年間ほど、ジェイソンと共にオーガナイザーとして毎日動いていた。ただ、一度オーガナイザーになると、かなり自由が奪われる。決まった時間にカジノへ行き、基本的にはゲームが終了するまでテーブルに居続けなければならない。朝帰りになることも少なくなく、自由時間はかなり失われる。

けれど、ぼくがナイロビでポーカー生活を送るようになったのも、その手ほどきをしてくれたのもジェイソンだ。だから、前回もジェイソンが「もうやめるわ」と言ったときは、ぼくも「じゃあ俺も」と同時に辞したし、今回も「またやろう」と言うのなら、「やるか」と、彼をフォローしていくのみだ。

ナイロビのカジノ戦争と中国人のビジネス馬力

それにしても、ナイロビでは雨後の筍のように、カジノが乱立していく。今回、オーガナイザーをやることになったカジノもまた新規で今週オープンする場所だ。カジノが増えようが、カスタマーの絶対数が増えるわけではない。かなりゼロサム的な側面が強いので、毎回「もうカジノ要らんわ!」とみんな口を揃える。お客の取り合いもさることながら、オーガナイザー人材の獲得競争も激しい。

オーガナイザーの必要要件はそれほど多くはない。まず、毎日ポーカーを打ち続けられる暇人かどうか。まず、この要件のハードルが高すぎるだろう(笑)。次に、ポーカーで月単位で負けないかどうか。オーガナイザーといえども、プレーする際は自費で戦わなければいけない。基本的に勝ち続けられるポーカースキルは必須となる。副次的な必要要件として、チームの和を乱さないか、集客できるか、が挙げられる。

去年も今回も、ぼくはチームで唯一の外国人で、残りのメンバーはみんな中国人だ。だから、中国語の必要性を痛切に感じる。読書の時間を削って、中国語の学習に充てる時間を確保することを本格的に検討したい。もちろん、英語が喋れる中国人もいるが(ジェイソンなどは流暢)、中国語しか喋れない人が多数だったりする。環境こそが言語習得の最短の近道であることを知っているので、これ以上ないタイミングと場所なのは間違いがなく、あとは重い腰を上げられるかどうか。

ケニアにいる(おそらく他のどこの国でも同じだろうが)中国人のバイタリティの強さには目を見張るものがある。英語ができないとか、文化を知らないとか、一切関係がない。自分たちの論理で、異国の地でバリバリとブルドーザーのようにビジネスを開拓していく姿は壮観ですらある。いいか悪いか、というよりも気合いがまず違う。そこらじゅうで道路や橋、インフラのあれこれを掌握している。

なので、中国語を身につけることはもちろんのこと、同時に、将来的に彼らとビジネスをする可能性もなくはないので、彼らなりの文化や論理についての理解も掴んでおきたいところだ。

オーガナイザーをすることになったカジノへ出向く。サイズはそれほど大きくはないものの、内装や雰囲気は悪くない。チャイニーズ資本のカジノはどうしても中華色が強くなり、非中国人が敬遠したくなるような空間になりがちなのだけれど、今回のカジノははなからインターナショナルな客層を意識しているのだろう、それほどチャイニーズ感を覚えなかった。

【本日のポーカー収支: - ¥90,000】

カジノ側との合意事項を整理し、オーガナイザー間での役回りも確認するミーティングを済ませて、再びカジノへ。テーブル状況がすこぶるいい。フィッシュとされる下手なプレイヤーがラッキーを積み重ねてスタックを積んでいる。こうなると、彼らが帰るまでは帰れない。けれども、ぼくにはまったくハンドが入らないし、ボードと絡まない。フロップでナッツストレートができるも、フラッシュを引かれて甚大な被害を被る。テーブルがいいのに、自分は最悪。こういう日は何をやってもダメだ。結局、昨日買った7万円を上回るマイナス9万円を記録してフィニッシュ。

【本日の収支】- ¥90,000
【今月の収支】- ¥90,000

意気消沈しつつ、帰路へ。とはいえ、またオーガナイザーとして活動できるのは間違いなく吉報で、すぐに気持ちを切り替えることができた。夜は、居候させてもらっている河野さんと、軽くぼくのこれまでを振り返りながら、ポーカーで生活するための「能力」や「資質」の話をした。その内容は、下記のnoteにまとめた。個人的には重要な事柄を言語化できている気もするけれど、やはり体験してみないことには真意は伝わらないのではないかとも思っている。

光合成をする自由 4/5(tue.) 

文章の“接着剤”に書き手のクリエイティビティが現れる

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