一歩前へ


私は介護施設で責任者として利用者様の身体ケアのほかに、事務仕事や、お客様対応、現場スタッフの育成やメンタルケアを含む業務を管理者として従事してきた。他のスタッフに協力をお願いしようにも、私たちの施設も今の介護業界の実情のように人員が不足しており、忙しく一人で残って作業することが増えていった。体調的にも精神的にも悪くなっていったが、「まだ大丈夫」と自分に言い聞かせてごまかしながら仕事を続けていた。案の定倒れて仕事を辞めることとなった。

退職してから、数日後、友人がある話をしてくれた。
「君は一生懸命になんでもやる。それは素晴らしいことだけど、時には休むことも必要じゃないかな?ずっと休まず走り続けているように見える。ちゃんと立ち止まって、景色を見たり、水分を補給したりしないと倒れて動かなくなってしまう。そして人に頼ることを恥ずかしいことだと思わないで、頼ったっていいんだよ」

その言葉を聞いて肩の荷が取れたような気がした。そして涙がこぼれた。

 前よりも人に頼れるようになった私は、体を休めながら小説を書いている。そして私の隣にはあの言葉を言ってくれた友人、いや恋人が。私は新たな道へとゆっくり進み始めた。

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