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酸っぱい
「カンパーイ」
「どうも」
オレは後輩を連れて行きつけの居酒屋にやってきた。
「そんな落ち込むなって、誰だって失敗はあるんだし」
「けど、俺のせいで取引なしになったって聞きました。俺の準備不足でこんなことに、すいませんでした。」
後輩はテーブルに手をつけ頭を下げた。
「ちょ、ちょっと頭上げて、みんなが見てるから。落ち込むのは分かる。俺も同じような失敗したことあるし」
「えっそうなんですか?先輩が?仕事いつも完璧じゃないですか!」
「そんなことないぞ、俺だって初めからできたわけじゃないし。入ってきた時は本当に失敗ばかり、大事なプレゼンを一人で任されて頑張ってたんだが、プレゼンの前日、全然眠れなくて、お酒を飲んだら止まらなくてな。そしたら案の定二日酔い。頭痛いわ、吐き気はするわでな。そんな中プレゼンして大失敗。取引先には酒臭いと言われ、上司に怒られもう散々だった」
「先輩でも、失敗するんですね、まだおれの方がマシかも・・」
後輩は俺の話を聞いたせいなのか、酔いが回ってきたいなのか分からないが、笑って話を聞いていた。
「おい、それはいいすぎじゃんか」
「いや、先輩それはないです、俺でもそんなヘマしたことないですよ」
「あー、しゃべりすぎて喉が渇くな、すいませーん、レモンサワー二つ下さい。」
「かしこまりましたー」
「ここのレモンサワーめっちゃ人気だぞ、飲んでみな。今日は俺がおごってやる」
「先輩、オレ、ここしかおごってもらったことないです。」
「そ、そうだったっけ?」
「ここ安いからですよね?」
「あれ、なんか今日はやけに暑いなっ。ほら、遠慮なく食べて飲んでくれ」
「今、ごまかしましたよね?」
「お前、今日二千万損失だったんだぞ、反省してるのか!」
「さっきと言ってること違うし・・」
「レモンサワーでーす」
店員が凍ったレモンがたくさん入ったジョッキを持ってきた。
「のど渇いてたんだよねー、ほら遠慮せず飲め」
「・・せんぱい・・・」
「じ、じゃあ改めて」
『カンパーイ』