
スカッシュと私と留学生活 ー 中学編
アブストラクト
留学に関する記事を書くと、スカッシュ仲間や友人にはすぐに私の正体がバレるだろう。IYKYK(If You Know, You Know)のカッコつけた感じもへったくれもない。
私は中学の途中から、日本ではかなりマイナーなスポーツ、スカッシュを始めた。きっかけはボストンのジュニアボーディングスクールでの放課後アクティビティだった。
※スカッシュ自体の説明は省くが、気になった方は「Squash」とYouTubeで検索し、ガラス張りのコートでハエ叩きのようなラケットでボールを爆速で打ち合う映像を見てほしい。(上記に参考リンクを添付しました)
ジュニアボーディングスクールのスポーツ制度

私の学校では、1年を通じて季節ごとに3つの異なるスポーツに取り組む。
「季節は4つでは?」と思うかもしれないが、アメリカでは夏は3ヶ月まるごと休みなのだ。
- 秋:フットボール、サッカー、クロスカントリー
- 冬:アイスホッケー、レスリング、スカッシュ、バスケットボール、スキー
- 春:野球、陸上競技、ラクロス、テニス
このように、日本のように1つの部活を通年で続けるスタイルとは異なり、季節ごとに新しいスポーツを選ぶシステムになっていた。
私は秋はサッカー、春は陸上(中距離走)と決めていたが、冬のスポーツだけは最後まで決めかねていた。
冬のスポーツ選びと「消去法」でのスカッシュ
結局、私はほぼ消去法でスカッシュを選んだ。
- レスリング→ タイトなユニフォームに抵抗があったし、体重別とはいえ力負けしそうなので断念。
- アイスホッケー→ スケートが少し滑れる程度の初心者がやるにはレベルが高すぎる。この学校のアイスホッケーチームはニューイングランドエリアで無敗を誇るほどの強豪で、入っても4軍の補欠が関の山。
- バスケットボール→ やれたら最高だった。華麗なプレーを決めれば人気者になれるのは間違いない。しかし、中学なのに190cm超えがゴロゴロいるレベルの世界。私はちっこい日本人、戦場に出るまでもなく敗北確定。
- スキー→ 毎日放課後に片道1.5時間かけてスキー場に行き、1時間半滑ってまた帰る。単純に移動時間が長すぎる。週末に滑るなら最高だけど、毎日はただの苦行。
こうして「体力維持もできるし、フィジカルコンタクトも少ない」という理由でスカッシュを選んだ。
ハーバード大学での練習とエリートのスポーツ文化
スカッシュの練習は、当時学校に専用コートがなかったため、車で15分ほど移動して行われた。行き先はハーバード大学のMurr Center。
私は当時その施設が何なのか分かっていなかったが、とにかくカッコよかったし、そこにいる大学生たちが私たちを親切に迎えてくれたのが印象的だった。後に知ることになるが、ここはハーバードのアスレチックセンターで、エリートたちが集う場所だったのだ。
ここでふと疑問が浮かぶ。
「なんでこんなマイナーなスポーツが、アメリカの名門校に選択肢としてあるのか?」
その答えは、スカッシュがニューイングランドのエリート文化に根付いているからだ。
ウォール街の投資銀行家やPEファンドのエリートたちは、忙しすぎてゴルフのような長時間のスポーツはできない。
そこで、20~30分で滝のように汗を流し、しかも戦略性が求められるスカッシュが「エリートのための社交スポーツ」として受け入れられているのだ。
だから、ボストン、コネチカット、ニューヨークを中心とするアメリカエスタブリッシュメントの名家の子供たちはスカッシュに夢中になる。「スカッシュが強い=ステータス」という文化が、彼らの中には存在しているのだ。
スカッシュと進学の関係
私がいた学校にはスカッシュアメリカU15代表が2人いた。彼らに続くように、他にもレベルの高い選手がいたが、共通点は家庭が超富裕層だったこと。
彼らは幼少期から、スカッシュを帝王学の一部として習っていたのだろう。
そして実際に、スカッシュのスキルを活かして名門高校・名門大学へ進学していった。
右も左もわからない私は運良くスカッシュを始めたが、結果的に高校、大学と歳を重ねるにつれ自分のメインスポーツとなり、進学のプロセスでも大いに役立つことになる。
アメリカ留学では、課外活動のスポーツですら、進学の鍵を握るのだ。
まとめ
私は偶然スカッシュを始めたが、振り返ると、アメリカのエリート文化の一端を知るきっかけになっていた。
この時点では、スカッシュが自分の人生にどんな影響を与えるかは分かっていなかった。しかし、大学進学・その後のキャリアを見てみると、明らかにスカッシュのコミュニティは金融業界などで派閥を形成している。
つまり、スカッシュは単なるスポーツではなく、「名門校・エリートネットワーク」への入り口の一つだったのだ。
この先の話では、スカッシュが高校·大学受験にどう関わっていくのかを深掘りしていきたいと思っている。