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スカッシュと私と留学生活 ー 大学受験
アブストラクト
我が子の才能は世界一ィィィ!!!
日本の大学受験が格闘技という競技だとするならば、アメリカ受験は何でもありの戦争だ。
「塾で数百万円、入学まで通算数千万円かかった」という次元の話をしているのではない。
「高2の夏休みで1億円。1年で3億。ドネーションや課外活動は青天井。」
20億、50億、100億、まるでオークションハウスだ。
アメリカ留学の記帳とは戦争の歴史である。
それは親の戦闘力がそのまま子供の入学志望者としての戦闘力となる戦場の話なのである。ーーー
いや、申し訳ない。ちょっと盛った。Please accept my apologies.
しかし実際、Ivy LeagueやHidden Ivy、Little Ivyを志望する層の中には、こうした「キャッシュ掛け流し」勢が一定数決して少なく無い割合でいるのは事実だ。
私はアメリカの中学・高校で6年間過ごし、この2割のゲームに参加する道も見えていた。しかし実際、私はそういうゲームには参加していない、、、ハズ?(実際のところは後日また記事にします。)
そして断言する。そのゲームに参加する必要はない。
なぜなら、別に灘や開成レベルの神童でなくとも、Ivy LeagueやHidden Ivy、Little Ivyに合格することは、決して不可能ではないからだ。
そう、スポーツなら。ーーーーー
ホリスティック·アプローチとは?
アメリカの大学受験は、日本のような「筆記試験一本勝負」ではない。
それぞれの大学が「ホリスティック・アプローチ」と呼ばれる選考基準を採用している。
これは、日本の就職活動に近い。
単に学力だけでなく、エッセイ、課外活動、推薦状、個性、価値観、将来のビジョンまでを総合的に評価する。
そして、多くの私立大学では、数学オリンピアンやプロレベルのアスリートが「特別枠」として合格するように、すべての出願者が以下の5段階のプロセスを経てふるいにかけられる。
(※以下私の知るリベラルアーツ大学の2020年度の選考プロセスの一部。ホリスティックアプローチについての具体的な言及ではありません。)
第一段階:足切り
- まず3割は論外。
- 5割まではアプリケーションの説得力に欠ける(テストスコアが低い、経歴と志望理由が一致しないなど)。
→ここですでに半数が落ちる。
第二段階:フラッグチェック
- 過去の統計から「リスクがある」と判断された出願者を差し戻す。
第三段階:グループ分け
- 残った志願者を4つに分類する。
1. 典型的に優れているグループ
2. 典型的に劣るグループ
3. 非典型的で弱いグループ
4. 非典型的で魅力的なグループ
→ ここで「典型的に劣るグループ」が大半ふるい落とされる。
第四段階:Overqualified(過度に競争力のある候補者)の除外
大学の受験プロセスでじゃ、非常に優秀な候補者が除外されることは決して少なくない。そしてその数は「典型的に優れているグループ」から約3分の1にものぼる。その理由は、あまりにも優れすぎると「滑り止め」として見なされるためだ。
このような候補者たちは、他の大学に合格する確率が高いため、大学側としては合格率(Acceptance Rate)をコントロールしたいという戦略が働く。合格率を適正な水準に保つことが、大学のブランド力を維持するためには重要だからだ。
そのためあまりにも高すぎる競争力を持つ候補者は、不必要な「上位層」の合格通知を出さないという選択がなされることがある。これは、大学側が確実に入学する可能性の高い候補者を選ぶための戦略と言える。
第五段階:個別評価
ここでようやく、候補者のペルソナが学校と合うか?感情移入できるか?といった「主観的な評価」が入る。しかし常に、第一段階でパスする生徒や、各段階で非常に少数ながらパスする生徒もいる。 そして私は多分、第一段階か第二段階でパスした生徒の一人だったと言える。
アメリカ大学受験の合格はホント運。
大学の合格は本当に受験者と大学側の相性に依存する部分が多い。私の出願書もどんな感じでスキャンされたのか、だいたいわかる。
【大学側の特徴】
リベラルアーツ系で、学生数が約3000人以下の大学。インターナショナルな生徒を歓迎しつつ、東海岸のエスタブリッシュメント(上流家庭)の家庭出身の生徒も多く受け入れるという。特に、哲学、社会学、科学、宇宙科学の分野に定評があり、学生の約半分がスチューデントアスリートであり、アート、表現の分野にも力を入れている。
【私のプロフィールのスキャニング】
・志望度: Early Decision(お、どれどれ)
・出身地: アジア。。。あ、でも日本人、(お、珍しい。)
・テストスコア: (英語は問題なし、成績はまあ平均的)
・エッセイ: なるほど。(特別悪くはないが、うん。)
・課外活動:なるほど。( 一貫性はある。)
・推薦状: 効果的
・出身高校:おぉ、なるほど。
・ジュニアボーディング校出身: お、珍しい!(おやおや。)
・希望選択科目: 哲学とアート。。。(あぁ、、察し。)
・趣味: スカッシュ(はいはい、)
・備考:スカッシュのヘッドコーチからのプッシュあり。アートの教授からもプッシュあり。(オッケー、はいはい。)
→合格通知。
私はこの「プッシュ」という部分が、非常に効果的だったと感じている。特にスカッシュのヘッドコーチからのプッシュは強力だったようにも思う。しかしこのプッシュが起きたのも言ってしまえば運で、
私の高校のスカッシュコーチをしていた若い先生が、大学時代、その大学のコーチをしており、その縁で推薦を受けた。また、中学時代の先輩が3名、スカッシュチームでキャプテンを務めており、私を覚えていてくれたのも大きかった。
通常は、12月から本格化し、1月に眠れぬ夜を過ごすアメリカの大学受験のプロセスだが、私は11月終わりの出願から2週間ほどで決着し、感覚的には戦わずとして決着が決まった。
しかし準備は必ず必要
実際、いろいろな準備をしていた。
夏休みは3ヶ月間韓国でのSATプレップに通わされ、太陽を見ない時期もあった。サンクスギビング(感謝祭)にはホテルに缶詰で、TOEFLの勉強を毎日18時間していた。
意気揚々と、12月からの長期戦になるかもしれない戦場に備えて、Common Appのエッセイもすべて完成させ、いつでも出願できるように入念にチェックをしていたタイミングでの合格には良い意味で出鼻をくじかれた。
また今回の要因には、私がEarly Decisionというシステムで出願したことに依存する部分も多い。このEarly Decisionとは、受かればその大学に行くという事実上のコミットメントを意味するからだ。
通常このシステムは、Far Reach(入学が極めて難しいがどうしても入りたい大学)に使われるものだが、スカッシュのコーチや私のガーディアンが強くお勧めしてくれ、私もその大学にぴったりだと思った。先輩3人が同じチームでいるなら、それは運命的だし、条件も良いとも直感的に思った。
結果として、私の出願には大学のスカッシュチーム内でも盛り上がりがあり、コーチから「本当に来るのか?」と確認の電話をもらい、
私がEarly Decisionを出したと伝えると、
「おけ、プッシュしておく」と言われた。
最終的には、その「プッシュ」が直接的に合格に繋がった。
アメリカの大学受験の実情
極めて表面的なベクトルで、潤沢な軍資金を燃やし続けながらラットレースを続ける層は毎年後を経たない。
しかし、少しの地道な努力や小さな繋がりを伝手に、アスレチックプログラムのヘッドコーチ、教授からのプッシュは、単なる推薦状以上に絶大な効果を持つ。
実質的にこれらのプッシュが、「通行書」を手に入れることに等しい。
平たく言えば、私のケースではスカッシュとアートの要素が絡み合い、運も手伝って成功を収めた訳なのだが、日本では多くの若者がその独自性を活かし米国大学への留学を成功を収めることができるシナリオはいくつもあると思っている。
実際、韓国の一部のアメリカ留学専門塾では、このようなプッシュを戦略的に活用し、ビジネスモデルとして確立しているところもある。
日本にはまだこのようなエージェントがあることは多く聞かないし、また、実際にあるだろうと検討のつくところも1つあるか無いか程度である。
確かにかかる費用と渡米者の母数を考えれば、日本でのビジネスとしての合理性はまだ低いのかもしれない。しかし、今後こういった体験談を楽しむ方で、チャレンジしてみようと思う方が一人でも増えれば大変うれしく思う。
まとめと今後の展望
私の体験は、アメリカ大学受験を目指す人々にとって、再現可能性の高い事例ではないかもしれない。実際、アメリカ人がアメリカの大学を受験する際にも、オーソドックスなアプリケーションで学力を念頭においた戦略を組み立てるケースは極めて一般的だ。
故に今回の事例は、確実に参考になる部分はあるだろうし、また、汎用性もあると思っている。
また別の機会で、さらに詳しく受験プロセスについて深掘りし、韓国での缶詰の日々や、才能あふれる若い日本人の具体的な留学のプラン等を紹介できればと思っている。
次回は、「スカッシュと私と留学生活」の最後、アメリカの大学でのスカッシュ体験について言及する予定だ。ただの感想文みたいになってしまうかもしれないが、読んでもらえると冥利につきる。