不確実な赤さ


鏡よ鏡、この世で最も美しいのはーーーー


私は生まれてからずっと
同世代カーストトップクラスにいる女だった。

裕福な両親に大事に大事に育てられ
近所で会う大人たちは誰もが私を可愛い可愛いともてはやす。

同級生の男の子たちは
いつも私にいじわるしてきたり
からかったりするくせに
私が通るとそわそわしてチラチラ見てくる。

そんな男の子たちとは対称的に
女の子たちはあからさまに私を
仲間外れにしたり持ち物を隠されたり
スカートを切られたり、真冬に水をかけられたりしたこともあった。


それでも私は泣かなかった。
家に帰れば相変わらず両親は甘々だし
周りの大人たちは優しいし、

高校生になったくらいから
どこから湧いてくるのやら
私には私を助けてくれる
優しい男の人の存在がひっきりなしに
現れては消えていった。

私は最高級に容姿に恵まれていたが
サッパリとした性格で
あまり感情というのを持たないタイプだったので、

私に近づいてきた男の中には
そんな私の可愛げのなさに
耐えられなくて逃げ出した者も少なくなかった。

来るもの拒まず、去るもの追わず。

人生は単純でシンプルだ。
なぜ大半の人間は馬鹿みたいに
好きだ嫌いだとグチグチ悩んだり
文句を言うのだろう。

そんな人間たちを心底見下し、憐んでいた。


そんな私は順調に女子大生になり
(この時期は毎月数千万単位で貢がれた)

"女は27歳が最高値で売れる"という
某ドラマのセリフじゃないけど

マジでその通りに27歳で最高級スペックの
男と結婚した。

結婚生活も順調に数年が過ぎていったある日

いつものように朝起きた私は自分の驚愕の姿を目にする。


なんと…

あの『りんご病』にかかっていたのだ!

私の最高級レベルの顔が赤く腫れ上がり、
見るも無残なオカメ納豆みたいな顔……

私の顔にベタ惚れな夫は
持てる力の全てを使い、
世界中の名医と呼ばれる医者を探し出した。

が、

どんな医者に見せても、
原因が分からない。

なぜ幼児がかかるはずの病にかかってしまったのか…

結局、私の顔は何をしても治らず
誰も何も分からないまま時は過ぎたーー

私はきっぱりと諦めて
この煩わしい世界に見切りをつけ

気でも違ったか、なぜか神社に籠もり祈祷をし続けている。

来るもの拒まず、去るもの追わず。

こうなってみて初めて、
私は私の最高級の容姿にでさえそんなに
執着していないことを思い知った。

ほんとに容姿以外に何も持っていなかった。

感情さえも。

本当に、ただ流されて生きてきただけだった。

結局、人間なんて世界なんて
ただ一瞬そこにあるだけのものに過ぎない。

美しい容姿なんて、まさに

ただ、そこにある。

それだけのもの。

[テーマ→林檎、神社、煩わしい]



いいなと思ったら応援しよう!