内部監査の在り方 Part. 11 - 会議体 -
今回は、会議体を通して内部監査の在り方を考えてみたいと思っております。
会社にとっての会議体
皆さんの会社では、毎日のようにいろいろな場で会議が開催されていると思います。会議の目的、開催のタイミング、出席者等は様々ですが、それら会議体を皆さんの会社ではどのように管理されていますか?
「内部監査の在り方」を皆さんと考える中で、会議体について取り上げることにちょっと不思議に思われるかもしれませんが、内部監査にとって会議体は非常に重要です。なぜなら、会議はあらかじめ定めた目的を持ち、その関係者が招集され、定期的に開催され、議論/審議されたのちに意思決定(決議が行われるまたは結論が出される)が行われますので、内部監査としては定例の業務監査またはテーマ監査の際の証憑・資料としてその会議の議事録はとても有効なのです。ですから内部監査としては、社内の会議がいつ・どこで・誰がどのように開催されているのかという情報は大切です。皆さんの会社の内部監査規程に「内部監査は、監査の遂行上必要と認めた場合に限り、会議への出席または議事録の閲覧を求めることができる。」という条文があると思いますが、これは単に会議の構成員として陪席することを義務付けているのではなく、ある特定の監査テーマについて監査する際に、どのような形(出席者構成、会議の目的、議論・審議の経緯、議事録の有無等)で事業活動について意思決定されているのかを把握し、監査するためです。ですから会社にとって会議体が重要であるのと同様に、内部監査にとっても重要なのです。
内部監査にとっての会議体①
内部監査にとって会議体はどのくらい重要でしょうか。その目的を考えてみます。
【会議体を重要と考える目的】
監査資料・証憑として情報収集するため
意思決定の経緯を確認するため
何を議題として挙げ、何を議題として挙げていないかを確認するため
主要メンバーと直接コミュニケーションを取ることができるため
その他・・・
まず、真っ先に思いつくのは監査資料・証憑としてその会議の議事録を閲覧・収集することではないでしょうか。その会議に直接出席しなくても、どのような目的で、どのようなメンバーが招集され、どのような議論/審議がなされ、どのような経緯を踏まえて意思決定がなされたかがその議事録をみることでわかるからです。会議体の中にはその会議が会社にとってとても重要な意思決定がなされる場であるにも関わらず、議事録・メモを記録していないケースがあるかもしれません。会議体規程が無いまたは会議体規程で指定された会議ではないため、議事録等記録を保存・保管していないなどが理由として挙げられることがありますが、複数部門のメンバーが招集されている会議や部門内である程度重要な意思決定がなされるような会議では、会議体規程で指定されていなくても議事録・メモを記録することをお勧めします。これはIPOを目指す会社やIPO準備中の会社の皆さんであれば、なおさらです。議事録・メモを記録することはもちろん、内容(意見者の名前、意見の要約等)の記録の仕方も重要です。フォーマットはどのような形でも構いませんが、少なくともその会議でどのような目的で、どのようなメンバーが招集され、どのような議論/審議がなされ、どのような経緯を踏まえて意思決定がなされたかを記録することが大切です。
話は内部監査に戻しますが、内部監査がそれぞれの会議について知りたいことのひとつに、その会議で何を議題として挙げ、何を議題として挙げていないかという点です。これは意思決定の経緯を確認することにもつながります。会議では、選択肢として①意思決定をすること、②意思決定しないこと、③議題として挙げないこと。この3つがあります。例えば、リスク管理委員会において会社が特定の事象についてリスクとして認識しているのか/いないのか。リスクとして認識している場合はそれの対応策を講じたか講じていないか。講じていないならば、なぜ講じていないのか。また、リスクを認識できなかった場合は、なぜ認識できなかったのか、または認識しないことと判断したのか。このようにいろいろと想像することができますが、内部監査としては先の想像をしながらその会議で何が議題として挙げられ何が議題として挙げていないかを知ることで、監査対象の範囲や深さなど監査項目等が変わってきます。ましてこれが不祥事・不正行為に関する内部監査であれば、なおさらこの点が重要になります。そのような特別な監査でなくても、普段の業務監査において定期的に会議の議事録を閲覧・収集し、もし議事録が無いような会議体があればそれに対してコンサルティング業務として指導することで義務付け、習慣化を推進することをお勧めします。
内部監査にとっての会議体②
内部監査が会議体を重要と考える目的として、主要メンバーと直接コミュニケーションを取ることができることも挙げられます。これは一般社団法人日本内部監査協会が2006(平成18)年06月に改訂・公表した「内部監査基準実践要綱」に、次のようにあります。
ここでは内部監査部門長と取締役会または経営層との直接的なコミュニケーションのことを示していますが、もし内部監査がさらに積極的に「高いレベルのリスク、システム、手続またはコントロールのあり方についての問題を、初期の段階で把握」したいのであれば、取締役会または経営層だけでなく社内の主要な会議に陪席して、各部門長、管理職その他主要な従業員の会議の場での議論・審議の経緯や意見の内容を把握することも必要でしょう。また、顕在化した問題やリスクだけでなくむしろ潜在化した問題やリスクを初期段階で把握することのほうが、内部監査にとってとても重要です。そう考えると、どちらかというと各部門長、管理職その他主要な従業員の会議の場に積極的(*もちろん必要に応じてですが)に陪席して必要な情報と各部門の状況を把握することを強くお勧めします。内部監査は経営者層の考えと各部門の状況のどちらも知ること・把握することができる立場です。むしろその両方を知って把握しなければ、企業価値の向上に貢献できる内部監査を実施することは難しいでしょう。
内部監査が、特に会議体について考える機会は少ないかもしれません。しかし、内部監査を実施する目的やその目的のために内部監査の皆さんがやるべきことをいろいろ考えると、社内の状況を効率的かつ効果的に把握するために、また社内の顕在的・潜在的な問題を初期段階で把握するためには、皆さんの会社の会議体の在り方を深く考え、企業価値の向上に資するためのコンサルティング業務を行うことをお勧めします。
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