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- 内部監査に必要なこと -

今回はIPO準備企業における「内部監査に必要なこと」をお話しします。内部監査も内部統制と同じく、IPO前と後で監査項目や監査手続・内容に違いがありますが、IPO前のものをお話しします。
(約5分ほどでお読みいただけます。)

内部監査と内部統制の隣接線・重複部分

 みなさんご存知のとおり、内部監査と内部統制は、まったく別のものです・・・が、実際に実務を行うと、くっきりとわけられる業務(隣接線)と同じ部分を監査(評価)する業務(重複部分)があることに気づかれると思います。
 話は逸れますが、上場企業においては、監査を役割とする登場人物がいます。会計監査人(監査法人)、監査役、そして内部監査です。それぞれが違う立場で、その企業を監査するので、必然的に監査する範囲が重なります。範囲が重なる=重複する部分を監査することになりますので、(量的/時間的な)ムダが生じます。
(*あくまでこの " ムダ " は量的/時間的なムダであって、監査目線で必要と思われる業務等を、意図的に範囲を重ねて、違う目線で監査するケースもあります。業務上のムダではないことをご留意ください。)

この量的/時間的ムダを極力省くため、この三者が協議して監査する範囲の重複を回避し、効率良く監査を実施する。これを「三様監査」と言います。監査する側としては、監査する範囲が重複することは十分承知のうえで、この協議を行なって住み分けを行うのです。そのためこの三者は、定期的に会合をもつことはもちろん、不定期でも会合をもつことをお勧めします。(特に監査法人から、定期的に会合を開催する旨のおすすめがあると思いますので、これに従ってください。)

さて、このとき内部監査は「内部監査を実施する」立場として監査実施計画を立案しますが、メインは「業務監査」で、

  1. 業務が法令遵守、企業のルールに従って遂行されているか?

  2. 企業が定めたルールに準拠していないルール(ローカルルール)を作成して業務を遂行していないか?

  3. 企業が定めたルールが、業務の実態にフィットしているか?既存ルールをもっと効果的なルールにできる部分はないか?(アドバイザリーの観点)

このような内容を踏まえた監査テーマ項目を挙げていきます。

内部監査は何を見る?

 さて前述を踏まえて、改めてお聞きします。これは内部統制とまったく別のモノでしょうか?答えは「No」です。別モノではありません。
理由は、

  • 監査対象は「企業」

  • 財務諸表監査(会計監査人監査):財務諸表(表面に出る・結果としての数字)を監査する。

  • 内部統制評価監査(経営者による監査):財務諸表として出てくる数字が、企業のルールに従って出されているものなのか。その業務流れ、稟議承認状況、これらを証する証憑の存在を監査する。(あくまで監査範囲は、原則として財務報告に係わる業務がメイン。)

  • 内部監査:財務報告に係わる業務だけでなく、全社を範囲対象とした、コンプライアンス・ガバナンス観点の業務監査。

上記のとおり、じつは内部統制評価監査と内部監査は、監査する切り口は違いますが、監査する範囲は重複しますし、この重複があるからこそ、財務諸表監査の監査結果に直接的ではありませんが、これを証する根拠となりえます。
(*なお監査役は、会計監査人が行う会計監査人監査が正しく行われているかを監査することを、役割としています。根拠:会社法)
以上のとおり、内部監査と内部統制は、非常に近い存在であることは、ご理解いただけたかと思います。ただ、出てくる答え(監査報告)の内容が異なるので、別モノに見えてしまうのかもしれません。

 実際に監査すると、内部監査で監査報告に添付する証憑が、内部統制評価監査の証憑と同じものになる可能性があります。(例:稟議フローの承認状況確認。)この場合、偶然にも同じものとなった場合は仕方ありません。無理にサンプル抽出をし直すなど、意図的な(改ざんとは言いませんが)行為を行うことはお止めください。いったん会計監査人に確認する等の対応を行ったうえで対処してください。

内部監査の目標は「出来具合80点」

 監査する側として、企業が「100点満点の業務遂行を行なっている」という監査報告をしたいものです。監査報告を確認する経営者側も同じでしょう。しかしその「100点満点」はどのような意味をもつでしょうか?または、企業のルールが完全に遂行されていることが証明できたといえるでしょうか?

 もしこのような意味で「100点満点」いうのであれば、前提として「その企業のルールが100点満点である」必要があることになります。企業のルールは、日が経つにつれてどんどん陳腐化します。まして関係法令の改正があれば、その関係法令に準拠した企業のルールであれば、そのルールも改正し続けなければなりません。また、そのときの「100点満点」は、間違いなくその時点での100点満点であり、将来的な100点満点を約束しているわけではありません。つまり、その時点での「100点満点」は、企業にとってはあまり意味がないかもしれません。
 一方、監査報告で「出来具合80点」となった場合はどうでしょう。企業は全社を挙げてでも、残り20点を取り戻すために、必然的に指摘事項の対応等を行なって改善を行い、その際に業務自体の改善が必要であれば業務改善も並行して行うハズです。すると、業務改善後には結果的に「120点」いや、それ以上の点数になる可能性を秘めているのです。

 つまり、内部監査の結果で出てくる「指摘事項」は、間違い探しの結果ではなく、むしろ企業価値を高める「お宝」になることもあります。そうみると、「問題なしの100点満点」の監査報告を見るより、「出来具合80点で指摘事項あり」の監査報告を見たら絶好のチャンスと思いませんか?非常に価値の高いものです。積極的に指摘事項に対する改善と、業務上の余裕が出た段階で業務改善にもチャレンジしてください。あわせてフォローアップ監査しつつ、さらに精度の高い業務への成長と企業の成長・業績向上の材料にしていただけると、効果は絶大です。そのための「内部監査」です。

 内部監査に必要なのは、アシュアランスを主な目的とする内部統制評価監査に対し、アシュアランスと並行して、企業価値を高めるアドバイザリーのポイントを生み出す「お宝」なのです。さあ!お宝を探しにいきましょう!!


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