内部統制に向き合う Part.07 - 業務プロセス⑤ -
2023年04月内部統制報告制度(J-SOX2023改訂版)が15年ぶりに改訂されて内部統制が様変わりし、皆さんの会社では豊富な知識と蓄積された経験をもとに日々内部統制を進化させていることと思います。その豊富な知識と蓄積された経験をいったん振り返って整理し、さらに実践に役立つ戦略・戦術として活かすことを考えてみたいと思います。
今回も、業務プロセス(以下「PLC」といいます)の続きです。
【参考となる書籍】
・今から始める・見直す 内部統制の仕組みと実務がわかる本(浅野雅文著・中央経済社)
・情報システム監査実践マニュアル(NPO法人日本システム監査人協会著・森北出版)
PLCの整備評価のポイント
前回を含め数回に分けて業務プロセスについて、特に評価範囲の選定とITACとの関係について少し深掘りしましたがご紹介しました。他の全社統制(CLC)、決算・財務報告プロセス(FCRP)、IT統制(ITGC/ITAC)もとても大切な統制・プロセスなのですが、この業務プロセス(PLC)は各業務を担当している部門・部署の皆さんの業務を事細かに評価する部分であるため、何をどこまで評価範囲としてどの程度の深さまで評価するかが私たち評価者としては重要なポイントとなります。また、評価される側である各業務を担当している部門・部署の皆さんとしても「いったい、何をどこまで評価(監査)されているの?」と疑問と不安を持つと思います。
内部統制にとって、各部門・部署の皆さんに疑問と不安を持たれてしまうことは最も芳しくないことです。そのため、今回の記事以降では、評価する側である私たち評価者がPLCの整備/運用評価の際にどのような考えでどのような評価をするのかを今一度把握・理解し直す機会として整備/運用評価それぞれのポイントを押さえていきたいと考えております。そして、各部門・部署の皆さんから内部統制についていつ質問、問合せが寄せられても簡潔明瞭で明確な回答ができるように、そのご準備をお願いします。
これから皆さんと一緒に考えるのは、PLCの整備評価、運用評価それぞれの評価作業を行う際のポイントとなります。まずはPLCの整備評価のポイントです。
【PLC整備評価のポイント】
各業務を担当している部門・部署の実務担当者への説明
3点セットのうち業務記述、業務フロー(フローチャート)の再確認
証憑となる資料の確認
会計監査人(監査法人)との打合せ/3点セットの内容確認
各業務を担当している部門・部署への資料提出を依頼するタイミング
上のポイントをご覧いただくともうお気づきの方もいらっしゃるかもしれません。この5つのポイントは、評価者が評価を実施する以前のものばかりです。整備評価で大切なポイントは事前の準備段階にあると考えます。
【ポイント①】部門・部署の実務担当者への説明
前段でお話ししましたとおり、PLCは各業務を担当している部門・部署の皆さんの業務を事細かに評価する部分であるため、何をどこまで評価範囲としてどの程度の深さまで評価するかが私たち評価者としては重要なポイントです。これは評価者である私たちだけでなく、評価される側である各業務を担当している部門・部署の皆さんにとっても重要なことです。例えば、各業務の担当者たちは、業務記述と業務フローの存在を知っている方又は見たことのある方は少ないでしょう。逆に、評価者としてはお手元の業務記述と業務フローは正しい(その内容どおりに業務が遂行されている)と思っていても、実際の現場ではそのとおりに業務が遂行されていないかもしれません。
私としては、むしろ実際の現場では手元の業務記述・業務フローどおりに業務が遂行されていないことを望んでいます。なぜなら、実際の現場では日々業務改善が行われているハズだからです。期初であれば、改善された業務内容に従って業務記述・業務フローを修正すること自体、とても喜ばしいことです。そのため、評価者としてはその改善状況を早くに(できれば期初に)把握するためにも、各業務を担当している部門・部署の実務担当者へ説明する機会は必要です。このことは各業務を担当している部門・部署の実務担当者の側からみても疑問と不安を解消できる機会となります。実務担当者は日頃から業務の完全性・正確性を確保すべく誠実に業務を遂行されていますが、業務改善したい!という考えを持つのは当然です。そのときに、その実務担当者がいま遂行している業務の内容と意図、記録・保存している資料(証憑)の意味と意図を正しく理解していなければ、内部統制から外れた業務改善(又は改悪)になる可能性があります。評価者としては、実務担当者が行なっているその業務遂行を評価しつつ、業務改善の促進を期待したいところです。そのため、部門・部署の責任者だけでなくむしろ実務担当者に対して内部統制が何をどこまで評価範囲としてどの程度の深さまで評価するかを説明することをお勧めします。
PLC整備/運用評価のポイントは奥が深いですので、次回以降も少々長くなりますが数回に分けて皆さんと一緒に考えていきたいと思います。内部統制の整備/運用評価は、3点セットを作成したら毎年それを機械的に評価し続けるというものではないと考えております。もし皆さんの会社で、毎年決まった時期に証憑を提出してもらい、毎年同じ統制項目で評価しているとしたら、万一社内で不正行為が行われていたときそれを見逃してしまうことになるかもしれません。内部統制はポイントを押さえて評価を実施することができれば、不正行為等を見逃さないだけでなく企業価値の向上につながる要素をもっています。
ぜひこの機会に、皆さんの会社の内部統制に向き合ってみることをお勧めします。