アナログ漫画初心者向け道具入門(詳しい説明ver)
はじめまして、るぅ1mmです。よく漫画を描いています。
友達がアナログ漫画を始めるらしく、漫画道具のnote記事作って!と言われたのでおすすめの道具をまとめようと思います。
ちなみに筆者はアナログとデジタルを併用しており、下書き〜線画(人物と背景)まではアナログ、
トーン処理はデジタルで行っているので、アナログトーンはほぼ使っていません。
はじめに
道具は自由です!
漫画は絶対つけペンとインクで描かないといけないということはありません。
インクが推奨されている理由は、モノクロ印刷に適しており、原稿の保存がしやすいからです。
製図ペンで描いてもいいし、画用紙に鉛筆で描いてもいいし、筆で描いても大丈夫です。自分が一番描きやすいものを使うといいと思います。ボールペンはインクが経年劣化で薄くなってしまうので、数年経っての再スキャンなどがしにくい点は覚えておいたほうがいいと思います。
この記事では主につけペンを使うことを想定した道具の紹介をしていきます。
アナログ漫画には何が必要?
紙(原稿用紙)
下書きようの鉛筆(消しゴム)
ペン
インク
筆
定規
修正液
トーン(カッター)
スキャナー(トーンをデジタルで貼る場合)
忙しくて文章を読んでいる時間がない方は、最後におすすめの道具の揃え方が書いてあるので、それを見ていただければと思います。
紙(原稿用紙)
サイズ
原稿用紙は同人誌用(A4)、投稿用(B4)があります。
その名の通り同人誌用ならA4サイズのもので問題ありませんが、B4サイズで描くと線をB5に縮小した時ちょっと細く出力されて綺麗な気がします。
どちらでも大丈夫ですが、B4以上の原稿をスキャンできるスキャナーを買おうとするとびっくりお値段なので、スキャナーと相談して考えるのも手です。
厚さ
紙の厚さは110kgと135kgがあります。消しゴムでクシャってなりにくいので135kgがおすすめです。私は135kgでもたまにくしゃるので、110kgは繊細すぎて怖いです。
トレース台があるなら、110kgを使うのもおすすめです。
メーカー
muse(ミューズ) 漫画原稿用紙
私が初心者さんにおすすめして回っている原稿用紙です。インクが滲みにくく、つけペンの擦れる音(引っ掻き音)があまりしなく、ガリガリと描けます。PILOTの証券用インクは少し滲みました。
下書き用の水色シャーペンも色が出やすいです。しかもお値段も安い。全員買ってほしい。
アルテ 漫画原稿用紙
museより少し細い線が出るかもしれない。museよりはすこしつるつるしており、インクが滲みにくいです。ペンの擦れる音がほぼ全くしなく、ガリガリ描けます。かなり扱いやすい原稿用紙だと思います。大好きなので全員買ってほしいです。
IC(アイシー)マンガ原稿用紙
比較的ツルツルした紙で、細い線が出やすいです。滑りが良くペン先の摩耗も少ない気がします。
紙が黄色味がかっているので、目に優しいという噂があります。
大体どこの画材屋さんでも売っているので、この原稿用紙に慣れていれば廃盤の恐れが少なく将来安泰かもしれません。
DELETER(デリーター)原稿用紙
ペンが少し引っかかりガリガリ描く系の原稿用紙です。私の荒めなペンタッチでは滲んでしまいましたが、
こちらも画材屋さんによく置いているので、将来好きな原稿用紙がなくなって苦しむことがなさそうです。
おまけ 鉛筆や薄墨を使いたいとき
鉛筆や薄墨のグレーを使いたい時は、メモリの入っている原稿用紙はおすすめしません。メモリの水色が残ってしまうからです。
画用紙などを使ってもいいかもしれません。
下書き用の鉛筆(消しゴム)
水色シャーペンで下書きをすると、原稿をモノクロ2階調にしたときに消えるので、消しゴムかけで腕が攣ることがなくなります。
水色シャーペン
0.7mmしかないのですが、濃く出るし、ちゃんと消せるし、原稿用紙を潰さないのでおすすめです。
このシャー芯のためだけに0.7mmのシャーペンを買う価値は絶対にある。
おすすめの消しゴム
フォームイレーザー
私が高校生のときこれがものすごくよく消えると噂でした。私も使っています。
文房堂の練りゴム
下書きを薄くしたいときにおすすめです。文房堂の練り消しは粉が出ないので最高です。
おまけ 下書きを印刷する
下書きをデジタルで描いて水色で薄く(7%〜11%)し、原稿用紙に印刷するという手があります。ついでに枠線も印刷しちゃうと楽です。
※コンビニの印刷機に原稿用紙を通すと壊れちゃうので自宅のプリンターで印刷してね!
ペン
つけペン<Gペン、丸ペン、クローム、スクールペンetc……>
ペン軸
製図ペン
サインペン
つけペンは強弱がつくので、人物や効果を描くのに適しています。つけペンにはペン軸が必要です。
製図ペンやサインペンももちろん作画に使えます。背景などは製図ペンで描くと楽かもしれません。
描き文字などにも使えます。
つけペン
とりあえずGペンと丸ペンがあれば漫画が描けるのですが、初心者が使いやすいのはサジクロームとスクールペンという矛盾があります。4種類試してみると、つけペンの苦手意識がなくなるかもしれません。
メーカーは試すしかないので自分で好きなペンを見つけてください。
ニッコー(日光)、ゼブラ、タチカワの3社がお店でよく見かけるのでおすすめです。
ペンを洗うための、筆洗も必ず用意しましょう。プリンカップとかでいいです。
何も考えずにこれを買う手はある。インクとペン軸は別のも買って試してみてください。
Gペン
強弱がつけやすいため、柔らかい線も強靭な線も描けるスーパーマン。みんな使ってるイメージがあるけど癖が強いです。はっきりした線が描けます。メーカーで描き味がかなり変わるので、Gペンだけは全社試したほうがいいです。
ニッコーN-Gペン
3社の中でも一番硬い描き味らしいです。強靭です。ありがとう、いつもお世話になってます。職人が削ったものがあるのでそれもおすすめです。
ゼブラ
3社の中で一番柔らかい描き味らしいです。細い線が出る……らしい……です。人気があると思います。
タチカワ
私はタチカワGペンが全然適合しなくて何もわからないのでレビューできません。無念です。
丸ペン
細い線が描けます。人物だけでなく、効果線や背景にも使えます。繊細な表現が必要な少女漫画などでかなり愛されているイメージ。Gペンと同じくニッコーが硬くてゼブラが柔らかかった気がします。
クロームペン
Gペンよりコントロールしやすく、一定の太さの線が描けます。私は吹き出しや描き文字に使っています。日本字ペンとの違いがわからない。何か違うのでしょうか。日本字ペンのほうが少し柔らかいのかな。
ちょっと全社Amazonで見つけられなかった。みんな頑張って探してください。世界堂とかならもっとメーカーがあると思います。
スクールペン
私が初心者の時に一番描きやすいなと思ったペンです。細めで一定の線が出るので背景に向いていると思います。ストロークは短めです。
ちなみに、つけペン全社全部試したけどだめだった……と挫折するのは早いです。インクとペン軸と紙で本当に全然変わるので、見直してみてください。
ペン軸
ペン先の挿し方、グリップがついているか否か。
だいたいこの3種で大幅に描き味が変わります。個人的にメーカーの差異はあまり感じませんでした。
グリップがついているのは軸が太くなるので、太い軸が好きな方におすすめ。
スライダのペン軸は手の微細な動きがそのまま出ます。補助が少なめです。
グリップのないフリーサイズペン軸を買えばハズレはないと思いますが、スライダを試してみるのもおすすめです。
製図ペン
枠線を引いたり背景を描いたりに向いてます。このペンで人物を描いている人もいるので使い慣れてたらそれでもいいと思います。
中には修正液が使えないものがあるので注意。背景には0.05mm〜0.1mm、枠線には0.5mm〜がおすすめです。
サインペン
描き文字や枠線に使えます。
パイロットのペンが修正液も使えて安心なので好きです。サイズは太・中・細があったと思うんですが……中は枠線にも程よく使える太さだと思います。
インク
インクはとっても大事です。インク一つで描き味がガラッとかわります。
とりあえずパイロット証券用インクか墨の華とタチカワジェットブラックインクを買うのがオススメです。
パイロット証券用インク
伸びがよく、動きを補正してくれます。太さが一定で、安定した線が出る印象。消しゴムで強く消すと薄くなりますが、心配しすぎることはないと思います。乾きが早いのが利点です。
耐水性ですがガッツリ水彩などには向きません。少し滲みます。原稿を汗で汚さない用の耐水性だと思います。
タチカワジェットブラックインク
太いです。イラスト向きの不思議な線の描きごこちです。超耐水性なので水彩も問題なく使えます。
インクがとても乾きやすいので蓋を開けっぱなしにしないようにしましょう。
カラー作画をする方はとりあえずひと瓶持っておくといいと思います。
墨汁 墨の華
上記のページは正規価格かわからないです。
速乾で伸びが良く、濃く、消しゴムをかけても安心です。線の補正は証券用に比べると少ないです。逆に自分のそのままの線が出るので私は好きです。繊細な表現ができます。
水溶性なので水には注意。
開明墨汁
安い!!どこにでも売ってる!!みんなの味方です。墨の華と比べて乾きが遅いので原稿を汚さないように注意。個人的な感想だと墨の華よりも細く繊細な線が描ける気がします。
もちろん水溶性です。
替え瓶
インクは開けっぱなしにしたり、温度の変化などで劣化します。
小瓶に移し替えて、1ヶ月程度で交換し、本体は冷蔵庫に保管するのがおすすめです。
2本買っておくと、洗って乾かしている間にもう1本が使えて便利です。
筆
筆は、ベタ(黒い部分)を塗ったり、髪の毛のツヤベタを表現したり、味のある描き文字を書くときに使うことができます。
なくても平気だけどあると便利です。ベタ部分はマッキーとかでもいいのでベタのためだけなら無理に買わなくてもいいと思います。
筆ペン
ぺんてる筆ペン
筆の掠れ感が出るので描き文字に適しています。一本持っておくと便利です。
筆先が荒いので、これで髪ベタを表現するのは結構難しいと思います。
ゼブラ 筆ペン 軟筆
柔らかく扱いやすいので、髪ベタの表現までできます。修正液も使えるので安心。描き文字の筆らしさはあまり出ません。
※23.1.16日追記
修正液使えませんでした!製図ペンもタチカワのFINEPOINT SYSTEMはミスノンがききません。
筆
筆は広範囲を塗りやすく描き文字も黒ベタも担えるのですが、痛むと使えなくなってしまい半年に一回くらいは買い替える必要があります。
描画に適していない彩色筆などを買ってしまわないように注意しましょう。
削用筆(さくようふで)
塗りやすく、扱いやすい。使えば間違いないけど高いです。ちゃんと画材屋さんで4000円くらいのものを買いましょう。
コリンスキー
こちらも扱いやすいそうです。今度使ってみます。
定規
定規は、枠線を引いたり、背景を描いたりするのに使います。
厚さの薄い透明の三角定規と、円が描けるパターン定規があると便利でしょう。
すごく便利そうな三角定規を見つけました。これいいなぁ〜!
円が描けるテンプレート定規はなんと100円ショップで売っています!
修正液
ホワイトと呼ばれているものです。ハケ型の修正液が、修正した後に描き直しやすいです。
ペンをつけて使えるホワイトはわからないので有識者様はぜひメーカーややり方を私に教えてください。
ミスノンは緑じゃなくて青いほうにしましょう。
濃くなったら水で薄めて使います。
トーン(カッター)
これは画材屋さんで絵柄を見て好きなものを購入したほうがいいでしょう。
カッターは小回りの効くデザインカッターを使いましょう。
砂消しゴムがあると、トーンを簡単にぼかせます。
余談ですが、原稿をデータ化したいときは、デジタルトーンがおすすめです(自分でスキャンしたアナログトーンはモアレになりやすいため)。
アナログトーンを使った原稿は、印刷所でスキャンしてもらいましょう。
スキャナー
トーンをデジタルで貼るときや、原稿をデータ化したい時に使います。
B4サイズがスキャンできるものはとても高価です。コンビニのスキャナーを使うのも良いでしょう。
スキャナーを買う場合は、1200dpi程度までスキャンできるものを選べば、漫画原稿をデータ化するには十分です。
漫画をスキャンするときは、必ず600dpi以上にしましょう。
おすすめ!道具の揃え方
おすすめの道具の揃え方をご紹介します。
上の記事を見て自己流で揃えたい方は、読み飛ばしてください。
★お金に余裕がある方
上記の紙・ペン先・ペン軸・インクを全種類買いましょう!
修正液と定規、筆や製図ペンなども適宜買いましょう。
地道に試してなんだかんだ全部買うことになる可能性も高いので腹を括るのもアリです。
画材廃盤の危機を救うのはあなたのような勇気ある方なのです。
★最短で安価にはじめたい方
紙はmuseかアルテ、ニッコーのGペン10本入り、開明墨汁、フリーサイズペン軸を購入。
書きやすい道具を探すのではなく、自分が道具に慣れるということは、どんな環境でも生き残れる希望的な手段だと思います。
★時間に余裕のある方
《紙》
①museとICを購入し描き比べる。
②museでガリガリ感が物足りなかったらデリーター、ICの引っ掻き音が耐えられなかった&museよりもう少し細い線を出したいならアルテ。
《ペン先》
・Gペン
①ニッコーとゼブラを試す。
②合わなかったらタチカワ。
③どれもダメだったらニッコーの超研磨
か、ゼブラのチタンGペン
も、ためしてみてください。もちろんGペン以外に気に入ったつけペンがあれば、Gペンに固執する必要はありません。
・丸ペンとクロームペン(日本字ペン)とスクールペン
どこのメーカーでもいいので、3〜10本入りのものを買って試めしてみましょう。
《ペン軸》
こういうやつと、スタビロを買ってみる。
お金が惜しければ上の商品のようなフリーサイズペン軸は癖がないのでこれだけでもやっていけると思います。
《インク》
①パイロット証券インクとタチカワジェットブラックを試す。
②なんか違ったら墨の華、もしくは開明墨汁を買う。
③上記で納得しなければインク探しの旅に出る。ドローイングゾル、レタリングゾルも描きやすいと思う。
おわりに
ここまで読んでくれてありがとうございました!
最初に、道具はなんでもいい!と言いましたが、専門の道具に触れたり、揃えたりするのって楽しいですよね。
新しい道具に触れて、ワクワクしながら漫画を描いてもらえたら私も嬉しいです。
最後に私が現在使っている道具を紹介します。
写真に写ってないですが、紙はmuseとアルテを愛用しています。
つけペンはほぼニッコーで揃えています。Gペンと丸ペンと日本字ペンを持っています。
Gペンは超研磨の特上品というものです。細い線が出やすいです。ひと作品に大体3、4本ペン先を交換するので、たくさんあると安心します。
インクは詰め替えてしまっているのですが、墨の華です。
三角定規には裏に厚めの紙(180kgくらい)を貼って、原稿用紙から少し浮くようにしています。そうすると、インクが擦れることなく綺麗に線が引き続けられます。
雲形定規もありますね。たまにつかいます。楕円のテンプレートは買ってよかったです。
それでは、楽しい漫画ライフを!
2023.01.15 るぅ1mm
追記 2023/02/09
CLIPSTUDIO PAINT用の素材で、スキャンしたアナログ原稿を簡単に綺麗なモノクロ原稿に変換してくれるオートアクションをアップロードしました!
ぜひ使ってください!