詩(踊る男)
Ⅰ
あなたの目は洞窟を見飽きた
あなたは踊る男
鍛え抜かれた死体
どうしたらわたしたちは青空から逃れられる
わたしたちは血の泉を汲み
生まれたこともしらない
この街は
吐き出す群衆もないまま
中空に発信し、発情している
だから鳥たちは微熱のまま
かわいた海を求め
記号に変換される
1号、2号よ、
わたしたちの青よ、青や赤、
短い永遠よ
わたしたちの短い永遠
わたしたちの持つ暗い洞窟
わたしたちの言葉
あなたの目は見飽きた
あなたは踊る男
鍛え抜かれた死体
そうしたたくさんの次元の発条
存在に畳み込まれた発火装置を
日々の回路で素通りして
わたしたちは延命し
わたしたちは持続し
生まれたことも知らない
Ⅱ
それはなんの薔薇か
廃墟に咲く氷の崩壊
死んだ男が踊る
氷の生成と亀裂
その音だけを調べに
わたしたちは遠くへもゆくことが出来る
もっと遠くへ
惰眠と疲弊を重ね
過食と拒食の虹の彼方へ
わたしたちはゆくことができる
物質の半減期や宇宙の曲率
名辞した向こうへ
ゆくことができる
夕暮れ 全方位からの
ニュートリノに晒され
それが哀しみであるかのように
それがうたであるかのように
わたしたちは
踊る男よ
わたしたちはおまえを見ることもできる
影を踏むように こどもが泣くように
Ⅲ
夜中に水を飲むように
わたしたちは不幸の見分けがつかない
そんな神を宿し
わたしたちは少女期を過ぎた
この星はほんとうに丸いのか
猫を抱いて乳房を押し当てる
受信機は壊れた
ほんとうはなにも発信されなかった
夜の粒子はどこから来る
書物はすべて読まれない
また来る青空に
印字はすべて消去される
世界はリセットされる
安全管理、品質管理、工程管理、、
すべてリセットされる
あなたは踊る男
鍛え抜かれた死体
箱を開けるたびに戦場を散りばめる
あなたは踊る男
鍛え抜かれた死体
あなたの目は見飽きている
あなたはわたしたちを見飽きている
洞窟のように
空っぽの写真集のように
あなたの目は洞窟を見飽きた
あなたは踊る男
鍛え抜かれた死体