詩(月)
あいあいと哭く声がして
またあいあいと哭く声がして
丘の上の月が深くなる
わたしは暮らしを眠らせ
窓を開け
身をほぐす
うたうまいぞ
うたうまいぞ
世界の水が流れ
風がゆく
やさしくかなしく
はじまりのおわりへ
おわりのはじまりへ
あいあいと哭く声がして
またあいあいと哭く声がして
山の木々がさわめく
わたしはもう魚のからだで
月光に透け
空の水底を
おどるまいぞ
おどるまいぞ…
世界の潮が満ち
海草がゆれ
やさしくかなしく
はじまりのはじまりへ
おわりのおわりへ…