詩(猿 が 哭 く)


 

夜中に
猿が哭いている。

寒く
梢をゆらして、

猿が哭いている。

私は笛だ。

だれが
吹くのか
知らないけれど・・・・

こんな処で
猿が哭いている。

みんな幻。

けれど猿が哭いていて、
私の笛が音をする。

坂を登ると、
北風が吹いた。


地軸を傾け 地軸を傾け、
私は坂をのぼったよ。

どこへ行っても
どこへ行っても、

うたはなく、
うた、はなく。

猿の哭く声だけが聴こえた。
猿、だけが哭いている。

高い木よ、

なにが 全体の 出来事なのか、
地軸を傾け 地軸を傾け、

地を嘗め、 地を舐め、
私は、

ただ手のひらのように暮らしを見つめ、
めまいのように私を離れる。

みえないものは、
あまりに近いので、

猿が哭く、
猿が哭く、

猿がどうしようもなく哭く。


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