詩(「恋する惑星」)
魚だったんです。眠れぬ夜の。水の中にも風は吹く。
星の光が水底に届く時刻でした。わたしは鰓をひらく背びれをたてる。
金の銀のこころが揺れる。
魚だったんです。雨に濡れ。見えない惑星に上陸し、肺を痛めて。
胸鰭をたてる、歩き出す、斜めの未知、背骨が軋むさ、
ゆくも戻るもただ哀し。
旅をしました。
見るために、感じるために。
はじまりのおわりへ、おわりのはじまりへ。
まあるいまあるい形象。それも折り畳んで、
わたしは醜い次元を生きて、
魔につかれて…。
旅をしました。
陽の色、月の色、眠るもの、眠れぬもの、
天罰のように。天啓のように。
猿だったんです。吹雪の山の。生きることにかじかんで。
はじめての垂直。哭いてみたら何かに触れて。
それが何かは解らず…。
猿だったんです。鳥にはなれず。木を降りて。
地を這いずり。海に焦がれ。
花に狂う猿だったんです。
花。花。
花が咲いていました。
花が、花が咲いていました。
恋する惑星、
虚空に浮かび、
花が、花が咲いていました。