詩(夜明の寒さに目覚めれば)
夜明の寒さに目覚めれば
炊飯器の飯の炊ける音がし
鈴虫 こおろぎの虫すだく
乾いた壷のひびのように
人の世が遠くある
庭にひまわりは首を垂れ
花は散って地ににじみ
種子が静かに時を集めている
しだいに宇宙は空に還り
人々は今日も手足を動かすのだ
夜明の寒さに目覚めれば
風はまた家々を渡り
森や鉄塔を渡り
河や海を渡り
そうして何処かへ消えてゆくのだ
夢の水際を乾かして
わたしはもう起きようか
溶けたわたしの赤子の朝を
母のように起こそうか
未知のもの世にまだ満ちると