【限定2色オーバーライト】 第2話
亜桜は激怒した。
かの邪知暴虐の女を除かねばと決意……は特にしていない。が、誰かがどうにかしないかな、とは思っていた。
最初の印象通り、墨波金糸雀という女教師……あらゆる授業に代打出来る特別非常勤のエリート様は凄まじく厳しかった。比喩でも何でも無く暴君そのもの。
夢で逢った美人……というロマンチックな第一印象は跡形もなく消滅。
遅刻したらその場での反省復唱、校則違反には即指導と問答無用の反省文。しかも、ボロカスに添削さて、日本語指導の追加単元。どれもが反骨心という心をへし折ろうとしてくる。生徒にバイトの予定が入っていようと完了するまでは連絡すらさせず、クビになったなんて話も聞こえてくるほど。
「あの鬼看守、どうにかなんねぇのかよ」
クラスメイトの誰かの愚痴。今日に限った話ではない。毎日、どこかで誰かが不平不満を吐いていた。それ以外にセンセへの対抗手段がないから。
春の終わりに赴任してたった一ヶ月足らず。
短い期間で打ち立てた伝説的偉業は枚挙にいとまがない。
夜のバーだか居酒屋だかでバイトしていた女生徒を摘発。止めようと絡んできた強面店主を正論と物理のダブルパンチで撃沈。ついでに絡んできた酔っ払いを纏めて薙ぎ倒したのだとか。
深夜に原付で徘徊していた生徒に生身で追いつき制圧。原付は没収され、校内のどこかに幽閉中だとか。
「この間なんて、秋内がつるんでたって言う他校の半グレ連中を全滅させたらしい」
「……マジかよ」
(多分、マジなんだろうなぁ)
噂は、校内に留まらず他校にまで知れ渡っている。警察ですら手を焼く不良集団に単身乗り込み制圧したのだとか。ステゴロで。
「カナ先、やっぱ軍人上がりってマジなんかな」
「え? なんかのSPじゃないの?」
「俺が聞いた話だと戦場帰りって聞いたけど」
(ちなみに私がよく聞くのは、やばい監獄の看守長ってやつ)
一人、窓際で問題集を適当にこなしながら、脳内で勝手に相槌。
教師と生徒。カナリアセンセの行動は暗黙不文律の境界線を好き勝手に踏み荒らす。それだけ強権を振るい、暴力を振るい好き勝手するとPTAから文句が噴出……しても、封殺。校区内外の問題を激減させる実績で黙らせる。
ゴリ岡の言っていたとおり、確かに、優秀だった……現実離れなほどに。
センセは宣言通り、教科問わずに代打として教壇に立った。
真面目に聞いていない生徒はすぐに振り落とされるが、要点が過不足なくまとまった板書は写しているだけでノートをまとめ直す作業がいらない。
(雑談一つないし淡々としてるけど……まぁ、分かりやすいのが腹立つんだよねぇ。元々の担当より分かりやすいんだもん)
ジジジジ。スピーカーからノイズ。
『二年D組、烏羽原。二年D組、烏羽原亜桜。生徒指導室まで来い。以上』
ぶつん。言いたいことだけ言って切り上げる。問答する気のなさが伝わってくる校内放送は、呼び出し主の性格を表していた。
教室が静かになって、窓際の私へと視線が集中。
「何?」
どうして、雑談をやめる。私が呼ばれたことがやめる理由にはならないだろうに。それか、私に話のターゲットを変えるための前振りだろうか。どちらだっていい。
「私に気を遣わずに、好きに喋ってていいよ」
あぁ、クソ。面倒くさい。上から押しつけてくるセンセも面倒くさいけれど、同じぐらい暗黙の了解が勝手に走り回る教室もうざったい。
集まった視線は、異物に対するもの。
「うっとい」
吐き捨てて、問題集を閉じる。椅子をお尻で押し退けて立ち上がる。二つに縛った髪から、お気に入りのピンク色がちらり。背筋が一本、真っ直ぐ通る。
誰が何を言ったって関係ない。私は私だ。
奇異の視線を払いのけ、生徒指導室前にたどり着く。引き戸の鉄金具に手を添え……止まる。
これからのことを思うと、憂鬱。
『烏羽原。入れ』
扉向こうに居る憂鬱の原因。女王さまは一切合切お構いなし。どうやって気付いたんだか。
「失礼しまぁす」
間延びした誠意の欠片もない声で入室。ちっぽけな反抗心。狭い長方形空間……教師用の無骨な机が右壁際に並び、反対側、左壁に資料棚があるだけの味気ない一室。
「今日も清々しいくらいの桃色だな。反省の色なしのピンク頭、と」
「お褒めに預かり光栄です。先生も綺麗なブロンドですね」
皮肉を込めて返してやる。センセと向き合うには覚悟を決める必要がある。こいつには屈しない、と。
「いいだろう? 自慢の地毛だ」
どこ吹く風。私の皮肉も軽く払い落とし、ワークチェアがキィと鳴く。サラリと揺れるブロンドは憎たらしいほど綺麗な金糸雀色。枝毛一つなさそうだ。
名が髪を表している。
「どうして呼ばれたんですか? 私、結構真面目なんですけど。テストの点数も良かったですしぃ?」
近くにあった来客用の椅子を引いて、すとん。腰を下ろす。
「賢いはずの烏羽原はそんなことも分からないのか? ……なんて、茶番に付き合うほど私も暇じゃない」
センセの指導は、挨拶時の印象より理性的。刃向かったり反抗がしつこければ痛めつけるが、跳ねっ返りを相手にしたときくらい。挑発されてもバカにされても、鉄面皮はピクリともしないし、顔を赤くすることも無い。瞬間湯沸かし器のゴリ岡とは正反対の、冷血具合。
基本攻撃は逃れられない拘束による、正論と嫌味のダブルパンチ。最初は誰もが意地を張って、根比べを挑んだのだけれど……センセは我慢比べで負けることは無かった。『もういい』と途中で解放することはない。土日に突入し、翌日の月曜日になっても平気な顔するものだから……どんな生徒も折れてしまった。
私以外は。
「今日は何枚書けば良いですか? それとも満足するまで書き続ければ良い感じですか?」
他人にどう思われたって関係ないから、幾らでも謝罪の言葉を並べる。自分がしたい姿のためなら、何時間何日だって拘束されたって構わない。
「校則に則った格好をする気を見せろ」
「する気を見せてもしないって、センセも分かってて呼んでるんでしょ」
ネイルに鞄、メイク……それからインナーカラー。どれか一つでも指導される違反であることは分かっている。分からないのは、何故違反に定められているのかということ。
ゴリ岡に見つかる度に怒鳴られ、担任にも『折角成績優秀なのだから』なんて諭されても去年一年間貫いた。今更、イモ引いてなんかやるもんか。
まさか、怒鳴り散らしてくるゴリ岡が恋しくなる日が来るなんて。
「誇るといい。これまでで一番しぶといバカは初めてだよ」
「奇遇ですね。私も墨波先生ほど、しつこ……粘り強い人、初めてです。初めてどうしですね」
「もう一度染めてやってもいいんだぞ? 粘り強くな」
舌打ちしそうになるのを抑える。出来るだけ、付けいる隙は見せないように。
「出来ればやめて欲しいですけどね。元に戻すのが大変なので」
「だが、戻すんだろう?」
「そりゃ勿論」
「少しは悩め」
思い出すのは、ここ最近での最悪の一日。
きっかけはなんてことはない。インナーカラーやめろと、ネイルを落とせと言われたのを拒否しただけ。ゴリ岡にしていたのと同じように。
いい加減にしろと怒鳴られたって関係ない。そんなの聞き流す。
卒業できないぞと脅される。赤点どころか常に成績上位を維持しているのに進級できないというなら好きにしろ。体罰だって殺されるわけではないなら問題ない。
だが、この女はそんな生易しいものではなかった。
亜桜が従うつもりがないと知るや否や、有無を言わせない暴力による脅し。それすら無視したことで、勝ったと思ったけれど……甘かった。
ジェルネイルは無理矢理剥がされ、髪を黒く染め上げられた。半グレだかヤクザだかに単身で殴り込めるほどのバケモノ女に、体力測定でいいとこ中の下の私が敵うはずがない。
毟り取られるのを眺めることしか出来ない。口では罵詈雑言吐いたところでどこ吹く風。無力だった。
「翌日に染め直してきたのは、お前が初めてだ」
「それはどうも、今度はバリカンで坊主にでもしますか?」
「それもアリだな」
「もうウィッグ用意してますからね」
「本当にしぶといなお前は」
それだけのことをセンセは平気でやる。だから、事前準備は欠かさない。
ゴリ岡ですら『……いい加減直した方が良い。墨波先生は俺にも止められん』と私の肩を持つほど。少し前まで私を締め付けてきた筆頭すら、カナリアセンセの所業を止められないし、ドン引きしていた。
ここに本来城を構えているはずのゴリ岡は、尻尾を巻いて職員室へと逃げている。
お陰で、今や墨波金糸雀専用部屋。別に権力を振りかざして追い出したわけではなくて、ゴリ岡の心も同じようにポッキリと折られただけ。
『北岡先生、指摘が遅れて申し訳ありません。生徒の指導を行うにはその恰好は相応しくないかと』
センセは学年を集めての服装チェック時にゴリ岡に対して生徒と同じように規則違反を指摘。面食らうゴリ岡。
『何が相応しくないのか、ハッキリと伝えて下さらないと分かりませんなぁ墨波先生。どの規則の、どの項目なのか。物覚えが悪いもので』
嫌味たっぷり。指導という自身の領域に踏み込まれたカウンターを虎視眈々と用意したのだろう。
『全てを覚えるなんて不可能でしょう。臨機応変に指導するのが現場のやり方なんですよ。墨波先生は経験が浅いから分からないでしょうが』
『いえ、その程度のことも覚えていないのにどうやって教員免許を取ったのかと不思議に思っていただけです』
ゴリ岡の自信満々の理論武装は、淡々と教員指導要領を諳んじるセンセに封殺された。ジャージのようなラフ着は相応しくない、サンダルは禁止されている。生徒指導室にある私物に対する指摘まで。
生徒たちの前でこき下ろされたゴリ岡だが、素直に非を認めて「直します」と言うことはなく、渋々頷くだけで……表情には、苦虫を噛み潰したような不服満天。
ゴリ岡が生徒にさせてきた表情を浮かべているのは、胸がスッとした。その後も威勢がなかった。
数少ないセンセの好感度が跳ね上がったエピソード。だったのだが、その後の検査であらゆる生徒をボロカスに締め上げたので、即大暴落。プラスマイナスで言えば、マイナスに傾いた。
同僚である教師に対しても牙を剥くセンセは当然、孤立。かといって、国から派遣されたセンセは、解雇を行う事は非常に難しい。派遣元……つまりは国に直訴して認めさせる必要がある。それ以前に仕事の速さが段違いなもので、瑕疵が欠片も無いからどうにもできないのだとか。
というわけで、専用に使ってくださいという建前の元、教師からも鼻つまみ者として離されているらしい。センセから直接聞いたのだから間違いない。
「どうして、そこまでして拘る。翌日に染め直したり、丸刈りにされてでも続ける理由が分からん。損得が釣り合ってないだろう」
「……丸刈りにはまだされてないですよ」
「するか?」
「反省文書きますから、出来ればやめて欲しいですね」
黒染めされたり爪を剥がされたりを三度も繰り返したときには、センセも無駄だと悟ったのか別のアプローチを取ってくるようになった。
私のキューティクルはボロボロに傷んだが……なんとか、負けることだけは避けられた。貴い犠牲。アーメン。
「ふむ。じゃあ、朝まで書いてもらおうか」
「げっ……」
「当然、書くだろう?」
書きたくないに決まっている。だが、解放の条件がそれしかないなら私のすることは決まっている。
「……本屋大賞が狙えそうな大作を書き上げますよ」
意地を張る。それが私に出来る全て。
センセが生徒に課す罰の中で、シンプル且つ最も効果的なのが反省文……を理由にした長時間の拘束。書き切ったものを目の前で破り捨てられて『反省が見当たらん。文章として成り立ってない』とかなんとか言われて最初から……そんなのを何度もやらされれば心が折れる。
通称、賽の河原の計。ネーミングした生徒は、センス二重丸。
当然、やっていられるか、と逃げ出そうとしたこともあるが……失敗。まわりこまれてしまった!!
反省文用わら半紙を、センセの後ろの棚から引き出して机の上に積み上げる。ペンは既に持参済み。いつも通りの根比べのはじまりはじまり。
カリカリカリ。宣言通り、黙々とペンを走らせながら、時計を見る。時刻は深夜。日を回ろうとしていたが……朝までとなるとあと九時間はある。
「なぁ、烏羽原」
同じ空間で仕事をしていたセンセが話しかけてくる。生徒一人、見回り教師一人回ってくることのない生徒指導室にカンヅメ。気が滅入る。
基本的に私から喋りかけるとボロカスに罵られた上で罰が増えたりするので、出来るのは黙ってペンを走らせることだけ。
「どうしてそこまで拘る。労力に見合わないだろう」
「さっきも同じ事聴いてませんでした?」
「答えて貰ってないことを思い出したんだよ」
拘っているつもりはない。労力に見合わないのはそうだが……そういう基準で考えてもない。
適当に反省を織り交ぜて答えようか、そう考えたところで
「ただの雑談だ。なんと答えようとも構わん」
なんて付け加えられた。鋭くて、察しが良すぎて普通に嫌い。顔と違って可愛げは砂粒一つ分もない。
少し考えてぽこっと出てきた答え。別に難しいことじゃない。シンプルな理由。
「自分しか信じられないから」
誰かが賞賛したものでも、周りが良いって言ったからでもない。
これまで、誰に言っても理解されなかった私の考え。私の生き方。
「不特定多数の価値観は信用ならないからな」
顔を上げると、目が合った。思わず息が止まり、生唾を飲む。
初めて見たセンセの楽しげな笑みに見惚れてしまう。どんなに指導が嫌いでも。どれほど仕打ちが理不尽でも。
それはそれとして、吸い込まれてしまう。
「……センセ。私の格好は確かに校則違反だけど、誰にも迷惑を掛けてない。成績も素行も悪くない……けれど、罰を受けてる」
「そうだな」
「きっと、一人を許したら他が真似する……風紀が乱れるからダメとかそんな理由なんでしょ」
「あぁ。真似をする奴が出るだろうし、そいつらはお前のように自分一本軸で生きていない。『何で私だけが』『他にもやっているヤツがいる』だとか互いに影響をして、影響を受けて、変化して、進歩して……変わっていく。そして、お前はそれが理解できない」
「……分かるの?」
「分かるさ。同情でも何でもなくな。烏羽原が自分という絶対値だけで生きていることくらいな」
昔から、空気が読めないと言われてきた。自分自身の価値観でしか判断できない。周りの価値観を飲み込めない。
「烏羽原を認めれば他を認めることになる。そして、他の人間は都合良く受け止めやすく、歪めて真似をして……広がり浸透する。そうしてダメになっていく」
「そんなの関係ないでしょ。自分の価値観で生きていないヤツに慮るのなんて気味が悪い」
「人間は社会的動物だ。社会……というと堅苦しいが、否応なく影響し合う生き物なんだよ。皆が美味しいって言っているから、美味しいものなんだろうって先入観が働くのが普通」
「つまり、私は社会不適合者だとでも言うの」
「あぁ、私も、お前もな。大体の人間は、相対値で動いているからな」
確かに。センセも空気なんて読めないだろうし、合わせたりも出来なさそうだ。
「烏羽原、お前自身は悪くはない。周りがどうだからと指摘されるのは随分腹が立つだろうさ。知ったこっちゃないんだから」
指導として、私の髪を無理矢理黒染めにした暴君からの言葉とは思えない。なんだ、同情で私を改心させようとしているのか。
「まっ、納得できなくとも人間っていうのは互いに影響しあう。だから止めろと言うだけさ」
最後の終着点は結局、同じ。止めろという話。
「なにそれ。真似して勝手に乱れる方が悪くない?」
「本人に症状が出ないからといって、ウイルスに罹ったまま登校したら感染が広がるのと同じだ」
「くっだらない。病気じゃなくて考え方じゃん」
ウイルスに例えられるのはいい気がしない。
「考え方のほうが却って、広がると取り返しの付かないことだってある。病原体と違って薬がないからな」
なんとなくセンセの行動原理が『規則だから』という、一辺倒で思考停止していないことだけは分かった。
「自分自身が社会不適合者であることを呪え」
少し良いことを言ったと思ったらこれだ。
キリがいいのか、それ以上ペンにも端末にも触れずに伸びをするセンセ。長い腕にかかった金糸が腕に引っかかり、はらり、はらりと、こぼれていく。サラサラ。艶めいたブロンドは少し動くだけで光の粒子がこぼれるみたい。
「ふむ。今日はこんなものにしておくか」
「朝までじゃないの?」
「朝までやったところで、お前は変わらん」
分かっているのなら、無茶苦茶な罰を科すのは止めて欲しい。
「そんな顔をするな。たまには人と帰りたかったからな」
冷血で感情は存在せず、規則が服を着て歩いている……そんな印象は会話を交わせば交わすほどに薄れていく。
原稿用紙をまとめて渡すと、特に読むこともなく適当に机の上へ放り投げられる。
投げられた先に、生徒指導室にもセンセにも似つかわしくない毒々しいチラシ。黒背景に紫やら赤がペイントされ可読性のかの字もない。なんとか拾えたのは『来る世界破滅』『終末』『空から地』『肉塊』だとかいう物々しくも胡散臭いワード。カルト宗教か陰謀論のチラシにしか見えなかった。
「……オカルト、好きなんです?」
「それをどうにかするのも仕事の内なんだよ」
「世界を救うのが仕事なんだ……生徒を小突いてるだけじゃなくて?」
「バカ言え。風紀を守るのが仕事だ」
今すぐ真実に目を向けろ……なんて偉そうに書いてあるチラシ。真実だというのなら、うさんくさいデザインを止めてもう少し見やすくしてほしい。
「学校の外までやるの? 面倒くさくない?」
「予防というやつだ。阿呆が引っかかる前に芽は摘んでおくべきだろう? 騙すクズがいるということは、騙される間抜けもいるということさ」
「こんな胡散臭いのが、広がったりするぅ? 誰がどう見ても怪しいけど」
「普通なら、ない。ないんだが、最近、国内で惨い事件が起きているだろう?」
朝、お弁当を作っているときに付けっぱなしにしているワイドショーから流れてくる、気が滅入るニュースを思い出す。センセーショナルな話題は高校生に限らず、あらゆる人間の話の種。
「なんでも、その集団はそれを予言していたらしい。十中八九偶然なのは裏が取れている。時刻や場所が微妙にずれているからな……だが、人によっては面白おかしく騒ぎかねん」
「信じるかは別にしても、盛り上がりはしそう」
「あぁ。だから変に広がる前に根元から締め付ける。烏羽原にしているようにな」
鞄を手にとり手早く片付けていくセンセを見る。
センセの指導の根元には確固とした思想。規則だから、そういうものだから、皆がそうしているから……曖昧でふわふわした指導ではない。
一つを許すと、そこから周りは勝手に染まっていくから巻き込み事故で指導をしなければいけないのだ、と。
考え方自体は嫌いじゃない。割り切った、一本筋の通った考え方。とはいえ、いくら考え方が嫌いではなくとも、実害を受けているなら話は別。どうにかしたいなぁ……でも、センセは頑固だしなぁ……なんて問いを自分自身へ投げかけておいた。答えは返ってきそうにない。
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