きえちゃうキャンディーは何を消してしまったのか
《はてなブログからの移行記事になります。移行するほどの無いようじゃないと問われれば、そう。》
先日、3月21日にDiscordにて通話中の折、ある一人の
「最近は童心に返って、きえちゃうキャンディーを食べてるけど美味しい」
という発言が、深夜、Discord上、光ファイバーケーブルを通って、インターネットの片隅に木霊した。
その時、通話グループ内を満たしたのは、人数分の疑問符。
あたかも、全員が知っているような、話し方、しかし聴いたことのない製品名。
もしかしたら、実際に触れ、舌の上で転がしたことはあるのかもしれないが、記憶の彼方、忘れているだけなのではないだろうか?
気の知れた友人を疑うくらいならば、と、真っ先に自身の大脳皮質から掘り出すために、Google検索へと走った。
だが、知らない。
食べたことがない、と言ったレベルではなく……見たことすらない。そういう次元であった。ならば、この 製品は特定の地方にしか売っていないのか?と考えたが、通話中、発言者と同じ地域に住んでいる参加者も知らない。
誰も知らないことを槍玉に挙げられると、発言者は「ぷくぷく鯛」と同じくらいにはメジャーではないだろうか。知らない方がおかしいのでは? そう疑義を呈した。
瞬間、四面楚歌。
我々は、その発言者に対し『記憶からきえちゃうキャンディーなのでは?』 や、『日本に住んでいるのか?』 とフォローを行ったがそのフォローは、火に油を注ぐものとなった。
そこで、白黒ハッキリつけるために、Twitterのアンケート機能でもって『知っているか/知らないか』を採ることになったのは、避けられない運命と言える。
アンケート当初は、我々の予想通り『知らない』が過半数を越え、「まぁ、そうなるだろうな」という空気で満たされた。発言者も焼き土下座の鉄板を用意していた。
しかし、時間を経過するにつれ、ジワジワとバランスを取り戻していく天秤。若干の焦り。「本当に、それほどの知名度を誇るものなのか?」と。
アンケートの締め切り十分前。ほぼ同率だが、『知らない』が数%を上回っている。故に私は
「意外と健闘したよね」
と、枕を高くし、眠った。
しかし、朝起き、結果を見た時、愕然とした。
『知っている』が、51%の得票を得て、勝利していたのだ。
喉が渇く。指が震える。頭痛が止まらない。
この日、私は、関ヶ原の戦いにおいて、小早川秀秋に裏切られた時の石田三成の感情を世界で最も理解した男になったのだった。
結果が全て。数字が真実。どれほど、喚こうが、きえちゃうキャンディーは、その名を天下太平へと刻んでいたのだ。
きえちゃうキャンディーは、色や味が変わるが、何を消すのかを語ってはいない。
私は当初『記憶からきえちゃうキャンディーなのでは?』と考察していたが、それは的外れであった。そして、真実にはいまも辿り着けていない。
だが、少なくとも、小早川秀秋の裏切りによって敗北を喫したことによって、『自尊心』は消え去ってしまった。
きえちゃうキャンディーは、知らない人間の『自尊心』を消しちゃうことに成功しているのだ。
どうして、こうなったのであろうか。
『知っている人間』『知らない人間』
数日前までは、一つだったはずなのに、今では、奈落よりも深く、暗黒よりも暗い、大きな溝で分かたれてしまった。
もしも、もしも、私にも何か一つだけ消せるのであれば、
この大きな『溝』をきえちゃうキャンディー、させてほしい。
そう、切に願う。
PS.普通に美味しそうなので買います。金箔ゴールドマンっていうネーミングが好きなので、当てたい。