渦 第8話
つなぎとしか思ってなかった仕事を辞め、都会に引っ越した
やけくそだったが、人生の探し物は見たことない場所に
あったりするのではないかと思ったからだ。
傷ついたと認めるのが癪で、思い出となるような匂いの残る
全てを見たくないと蓋をした。
都会で就職し、仕事が意外と楽しくなり、数年は目まぐるしく変わる
仕事の内容と責任と成果と役職というステイタスに
生きる力をみなぎらせていた。
仕事は、渦を強くはしなかったが、消してはくれなかった。
仕事しかしない日常になれた頃
1人の年上の女性と知り合う。細身で小柄なその女性は
一見小学生なのではないか?と思わせる無邪気さがあり
かわいらしいが、会話をすると重さがあり引き込まれる
そのため、何故か話を聞いてもらいたくなるの人だった。
だからだろうか、はじめて渦の話が口から洩れてしまった。
『幼い時から怖いものがあるんです』