渦 第7話
居場所を確かなものにするために
婚姻を結ぶのが近道だと思った。この勢いで
つながっていれば海の町にいれる。渦がなくなる。
と思っていた。人の感情の動きなんて全く考えずに。
彼がけがをして入院をすることになったと知らせが友人から
入った。仕事が休みの日にお見舞いに病室に向かうと
見つめあい、顔を近づけて小声で楽しそうに話す彼と
看護師の姿があった。私に気づくと彼は彼女の腰に手をまわし
笑っていた。恥ずかしそうに手をどかそうとする彼女の顔が
私はしらけていた。
何を話したか全く覚えてはいないが、人生に嘘をついていた
私には、この場を楽しく装うことは簡単だった。
失礼にならない時間を過ごし、駐車場に向かい車に乗る間に
携帯の履歴をすべて消去した。
『平気。私は大丈夫』