渦 第1話
暗闇。瞼の裏側を見ているのか、目を開けているのか
自分の体がついているのか、手、体の輪郭も
視覚では確認ができない
暗闇があることに恐怖はない。しかし暗闇の中にいると
認識をし、一人だと感じたとき。
孤独がせかすようにささやいてくる
孤独、疎外の感覚が私を追いかけてくるのだ。
追いかけられる恐怖感が私に恐怖を植え付けるのだ。
私は、その恐怖を見ないように逃げるように
声をしぼりだす、
すぅ~と闇が消えていく・・・。
目の前が、日常に戻り布張りのソファーに座り
TVから流れる音楽、人気のPOPが流れ
家族が口ずさんでいる景色が戻る。
安心して座る体勢を少し動かし座り直す
そしてまたTVを見つめる。
TVの映像が少しづつ遠くなる
自分の視界からTVの映像が遠くなり米粒くらいの
サイズまで映像が遠くにいく
その粒が渦巻きの粒になり近づいてくる
1つの渦巻きの粒が増えて2つの渦が近づいてくる
渦が高速で回りながら2つ目の渦が高速で逆回転して
近づいてくる。
視界いっぱいに渦が近づきぶつかると
体は硬直して、汗が吹き出し
絶望と不安で苦しくなる
慌てて声を絞り出す。
幼少期からづづくこの感覚はなんなのかわからない。
何があったわけじゃない、何かされたわけでもない
それが不安感、孤独感という言葉を知る前から
襲ってくる感覚は説明できるはずもなく
誰のにも言えなかった。
しかし気を抜くと必ずやってきたのだ。
13歳になってその感覚を渦と名付け、その渦を消すために
儀式をあみだした。
両手で自分を抱きしめ『大丈夫。私は大丈夫。』
この儀式をすることで渦は引き潮のように
静かに消えていくのだ。