本当にあった葬儀の面白い話~先輩から聞いた、住職の絵本とカッパにまつわるお話~
葬儀では、多くの方々が多かれ少なかれ、悲しみの感情を抱いて参列します。そんな中では、微笑むことはあっても、笑うということは少ないものです。
もちろん、笑いが全くないというわけではありません。
「生前、あの人はこうだったなあ!」
「あの時は、本当に大変だったよ。今となっては、笑い話だけどな!」
「湿っぽいのは嫌いな人だったから、笑顔で見送ってあげてください!」(目に涙を浮かべながら)
「あら、お久しぶりです!」
そこでは、様々な人間模様を垣間見ることができます。
今回は、仲の良い先輩から直接伺った、先輩自身の体験談です。
通夜の席での出来事
それは、お通夜での出来事でした。
檀那寺の住職さんによる読経が終わった後、住職さんによる法話の時間になりました。
当時でも少なくなってきた方ではありましたが、まだ通夜のときに法話を行う住職がいました。(もちろん、全くいなくなったというわけではなく、今でも法話を行う住職さんはいらっしゃいます)
「人の生涯とは、実に儚いものです。それを見事に描いた絵本があります。今日はその絵本を読んで、法話に替えたいと思います。しばらくのお付き合いを、よろしくお願いいたします」
なんと、住職は絵本を持って来て、それを読むことになりました。
これには先輩も驚いたらしいです。10年以上、葬儀の現場でやってきて、初めてのことだったみたいです。
「今日持ってきましたのは『カッパのフレディ』という絵本です」
住職は題名を告げて、読み始めました。
「カッパのみんな、同じ形をしていると思っていましたが、やがてひとつとして同じカッパはいないことに気づきました」
先輩は「そうだよなぁ。カッパが全員が全員、同じ形をしているわけじゃないよなぁ」と感心しながら、住職の朗読を聞いていました。
やがて、それが後半に差し掛かった時です。
「どれも同じカッパなのに、どうして違う色になるのか、フレディにはふしぎでした」
この時に、先輩は「あれっ?」と思ったそうです。
「あれっ? カッパって、そんな色を変えたりしたか?」
疑問に思うのは、当然です。
僕もゲゲゲの鬼太郎や、多くの妖怪の文献を読んできましたが、どこにも「カッパは色を変える」なんて記述や描写はありませんでした。
もうこの時点で、僕はオチが分かり切っていました。
そして読み終えますと、住職は最後にタイトルを読み上げます。
「以上、『葉っぱのフレディ』でした」
絵本は「カッパのフレディ」ではなく「葉っぱのフレディ」でした。
つまり、先輩は「葉っぱ」を「カッパ」と聞き間違えていました。その聞き間違えたイメージのまま、朗読を聞いていたのです。
「いや~、カッパじゃなくて葉っぱだと気づいた時に、やっとしっくり来たんだよ。カッパが色とりどりに色を変えるなんて、そんなこと初耳だったから、そこで初めておかしいって思ったんだ」
先輩はタバコを片手に、そう笑いました。
こらえきれずに、僕も笑いました。
聞き間違えで、有名な絵本が摩訶不思議なカッパたちのお話に、フルモデルチェンジしたお話でした。
それではっ!