深夜バス。地獄への入り口。
見慣れた新宿の夜の街を颯爽と駆け抜け、高速道路に乗るところまでは少し興奮していた。あとはひたすら、何も見えない夜道を走り続けるだけ。
『バスタ新宿』のスタイリッシュなロゴが好きでいつもここからにしてしまう。でもロゴ以外は、雑多。
今日は土曜日で、バスターミナルのベンチはほとんど埋まり、いろんな年代の人が溢れていた。
あぁ、深夜バスって誰でも乗るんだなぁ。
お金も時間もない僕だけかと思ってた。
みんなお金も時間もないのかなぁ。
好き好んで深夜バスに乗る人なんているのかな。
トイレ前で立って歯磨きしてるおじさんと目があった。ターミナルで歯磨きするのは気まずい。家を出る前に歯を磨いてくるべきだったか。
最近はようやく普通の生活ができるようになったけど、バスに乗ろうと思っただけでそれができない。
かろうじて空いてるベンチに座る。最近買ったSwitchも持ってきたけど、出すのが怠かったのでとりあえずスマホでさなりのprinceを聴きながら20分後のバスを待つ。
この曲のPVにはすごくお洒落な新宿駅南口が映っている。でも今日見た新宿駅南口は路上の歌い手が飽和して、わけわからんことになってた。
空港も好きだけど、より強く、どこかに行ってやろうという意志が渦巻く、深夜バスの待合室が僕は好きだ。
①2012年、深夜バスに乗れば京大にも行ける
初めて深夜バスに乗ったのは高校3年生のとき。京都大学のオープンキャンパスに行くため、行き6000円、帰り4000円の深夜バスを予約して京都に行った。安いけど高校生の自分にとっては大金だからはっきり覚えている。なのにどこかに泊まった記憶も観光した記憶もない。ただ、京都大学の底抜けに面白そうな学生を眺めていた。
半年やそこらで行ける大学ではなかったんだけど、何も考えずに深夜バスに乗った当時の僕は無敵だった。
②2018年、深夜バスに乗ってアルバイト先へ向かう
次に乗ったのは栃木で1ヶ月住み込みバイトをしたとき。京都の時と同じく、独りでバスに乗って、着いた先も自分ひとりしかいない住み込み寮。
でも働く場所はホテルだからちょっと寂しさが薄れた。スキーか温泉のために特急か自家用車でお越しになったお客さんのために、寿司をせっせと運ぶ。
③2020年、深夜バスに乗っても観光はできない
そして一年前は、神戸。本当は友達と姫路に行く予定だったんだけど、友達が風邪を引いてしまって、でもバスだけはキャンセル料取られるから、じゃあ一人で(中継地点の)兵庫にでも行くか、と乗った時。
このときは3列でカーテンもあったからそこそこ快適だったんだけど、Switchとか面白いスマホゲームはなかったし、多分めっちゃ暇な時期だったから、全然寝れなかった。
仕方なく作ったプレイリストが『地獄への入り口』
深夜バスに乗ったときにだけ聴きたくなるような曲を集めたプレイリストだ。寂しくなりすぎてしまう可能性の方が大きい。
このときは兵庫も大阪も京都もそこそこ観光して、疲れたから帰りは新幹線にしたんだけど、自分の金で新幹線乗ったのなんて初めてだからめちゃ早くて感動した。意外と社会人らしいことしてたな。
④2022年、深夜バスの移動はライブよりも安い
そして今日。今回はミスチルのライブのために大阪に行く。大阪に行くほどミスチルが好きかと言われたら、好きだけど、いざ大阪いけよと言われるとえーってなる。
3公演まで申し込めて、東京東京大阪と申し込んだら、大阪だけ当たったんだから仕方ない。
そもそも当たるとは思ってなかった。誰も知らないアイドルのチケットが当たるのとは訳が違うから、最初はぽかんとした。でも当たったからには行くしかない。
来月も授業の関係で大阪にいかなきゃいけないのもあるし、何より新幹線代がライブのチケット代より高くなるのが嫌だったから、今回は行き帰り深夜バスで行くことにした。訳わからんタイミング(発売から2年半で新作も発表されていた時期)に買ったポケモンシールドを進めたかったという気持ちもある。
今回はSwitchがある(そして推しポケモンのジメレオンをいくらでも戦わせられる)から孤独感はかなり薄い。
でも深夜バスだ。しかも4列。今んとこ隣はいないけど、1時間後に横浜に着くからそこで誰か乗ってくるかも。それまでに寝ちゃいたいな。
隣には誰も来てほしくないけど、遠くにいる誰かに「今、深夜バス乗ってるよ」とラインしたい。でもどうせ「そうなんだ!いいね!ライブ?いいね!」と返ってくるだけだ。電話もできない。
あんまり早くSwitchを出すと、今日中にジメレオンがインテレオンに進化しちゃいそうだし、とりあえず『地獄への入り口』プレイリストを更新することにした。
(以下、Spotifyプレイリストの紹介です)
1.Baby's on Fire/電気グルーヴ
電気グルーヴがMステで生演奏してた曲。衝撃を受け、その後TSUTAYAで電気グルーヴのアルバムをいくつか借りてきた。PVの人の体内みたいな工場みたいな世界観も恐ろしくて地獄だし、曲の電子音がバリバリ鳴ってる感じも地獄。
2.飛ばしていくよ/矢野顕子
矢野顕子は最初のイメージは弾き語りライブだったから、結局どういう人なのか全然わかってないんだけど、とにかくこの曲は独特な電子音と推進力がくせになる。この曲の上原ひろみコラボバージョンを昔カバーしたんだけど地獄だった。
3.Devil Inside/Utada
宇多田ヒカルがアメリカでUtada名義で出した曲。サウンドも電子だし構成も結構硬派な感じで新鮮だった。この曲は内なるデビルを呼び起こす曲。まさに地獄。
4.Grab Her!/disclosure
渋くてクールなEDMを生演奏する兄弟ユニット。自然の中で演奏していたり、血の通った曲も結構あるんだけど、この曲は音楽PV共に地獄。
5.STOP/Stray Kids
ストレイキッズはコアなダンスミュージックが多くて深夜バスに合うんだけど、さすがにアイドルがここまでゴリゴリな曲を出すのは意味がわからない。地獄。
6.GO CRAZY!/2PM
K-POPは地獄の土壌があると思う()謎に筋肉押してきたり、ダンスがシンプルでもはやネタだったりする2PMだけど、スタイリッシュな曲が多い中でこんな風にクレイジーさもきちっと表現できる彼らはさすがK-POPの大御所。
7.JUMPER/CAPSULE
一人暮らしして前の大学に通ってる時にひたすら聴いていたカプセル。強烈な孤独に寄り添ってくれるのは強烈なEDMかメタルしかないと思う。走るというより、飛ぶ曲。
8.WORLD OF FANTASY/CAPSULE
これは間違いなく車の曲。飛行機や新幹線ではなく、車に6分間乗り続けるコアなダンスミュージックだけど、これを経てPerfumeが生まれていると思うと感慨深い。
9.Kremlin Dusk/Utada
中学か高校の時に出会った曲でかなり地獄みを感じていた。深夜バスでふとこの曲を聴きたくなったところからこのプレイリストが始まっている。そしてこの曲単体でクライマックスへ向かう。
10.edge triangle-mix/Perfume
Perfumeで1番好きな曲、かつ多分1番長い曲。8分43秒。結構有名なアルバムなのにこの長さの曲が入ってるのがアツいよなぁ。歌詞のズブズブにハマっていく感じがまさに地獄。
11.Touch(feat. Paul Williams)/Daft Punk
このプレイリストの締めに相応しいのはダフト・パンク。地獄から呼びかけているような声と、何かを渇望しているような歌詞が強烈。
深夜バスなんて仕方なくの移動手段でしかなかったわけだけど、
この記事を書くためにプレイリストを聴き直しているうちに、
またバスタ新宿に行って適当なバスに乗って適当な場所に行こうか、
なんて考える。
おやすみ。