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エッセイ【女子高生に私の小説を読んでほしいと思った話】

※現在、ネットプリント掌編はお休みをしています(2024/10〜)
私はコンビニのマルチコピー機を使って、ネットプリントで掌編小説の配信をしています。2年ほど、奇数月に主人公が各話ごとに違う話を書いていたのですが、そちらに終止符を打って、現在は偶数月の第3週に『BLACK TEA』というタイトルで掌編オムニバスを展開しています。

主人公は私の代表作の主人公であり、世界観を共有する様々な話を股に掛けて渡り歩く銀の長髪碧眼の化粧男こと通称『魔術師』。
ネットプリント『BLACK TEA』は、ダークスーツが戦闘服で、煙草と紅茶が好きな本業は商売人である彼の、虚無的な日々の物語です。
魔術師がホームにしている話の題は『La maison de noir(略称『L.M.D.N.』)』と言って、独立していて魔術師は作中で店主やら店長やら色々な呼ばれ方をしています。
別のタイトルをつけた理由はちゃんとあります。様々な名前の中から、魔術師、という、怪しい呼び名に彼の虚無的な影の一面を含ませて書こうと決め、魔法的優しさは皆無で虚無を書こうという指針があって、スピンオフともまた違った立ち位置の話になりました。
人の多面的な部分を書くのが私は好きです。同じ主人公でも、焦点を当てるところが変われば、物語は変わります。好きな話を書いたというよりも、光の当て方を好きなように変えたというのが、正しいかもしれません。

この、魔術師という虚無を持つと、すでに物語がある人物を、ネットプリント配信用のコンテンツとして新しく始める物語の主人公に持ってきた理由が、とても不思議なのですが聞いて欲しいのです。

魔術師を、女子高生に、好きになって欲しかった。

魔術師という人物と魔術師の虚無に、女子高生に恋してほしいと思った。
なぜそう思ったのか……私は最初に、女子高生にこの虚無の男を好きになってほしいと思った時は、我ながら笑いがこみ上げたのを覚えています。だって、私の小説を知っている方には想像するのが簡単だと思うのですが、私の小説の読者さんの年齢層が低いわけがないのです。むしろ、10代の読者さんなんているのかな? と言った具合です。

でも、私の中には、魔術師という人物と女子高生という年代にはちゃんとつながるものがあるのです。

上述しましたが、魔術師には本拠地というべき物語があります。彼はそこで主人公をしています。その話を書き始めたのが、私が現実で女子高生と呼ばれるあたりの年齢だった時なのです。
魔術師の話を書きながら、英語の模試か何かで、
『紅茶のことを英語ではブラックティーという』
ということを知りました。
赤じゃ無くて、黒なのか。そう思った私は、いつかこのフレーズを物語の使うだろうと漠然と思っていました。それがこう言った形に、時を経て変わったわけです。

10代の終わり。魔術師を書いていた頃、私は居場所を失っていました。私は、同じ環境にいた誰一人とも、同じ道を行かなかったのです。広義でいうところの、進学も就職も就職ではない仕事をすることとも無職になることとも違う道にいくことになっていました。
今思うと、魔術師は完全に、居場所がない私の虚無から発生した人物です。
そう思うと、魔術師も付き合いが長いキャラクターなのだなあと思います。

私が女子高生だった頃に、変な反骨精神? といいますか、疑問がありました。
当時の私の疑問。同級生のギャルが、クラスの目立つ男の子(目立っているだけで決して大人びているわけではない)とばかり付き合っていることが、不思議だったのです。
もっと分かりやすくいうと『明るくて目立つ子(男女問わず)にばかり恋人がいるのが不思議だった』のです。
男女問わず、目立つだけのムードメーカー(そんなムードなんか作らなくていいよと思う煩いだけの子たち)が、同じような異性を恋人にしているのを、私は傍観者のくせに、くだらないと思っていました。

普通に考えれば、同じようなタイプの人が付き合うのは当然なので、当時の私は何をそんな大真面目に不思議がっていたのか謎です。
僻みに聞こえる書き方にならずに書くのが難しいのですが、恋人がいることで急に女子として男子としてカーストが変わったと言いたげなその子たちの雰囲気が、私には不思議だったのですよね。別に、相手がすごく自慢できるような社会的地位があるとかお金持ちだとかでもあるまいに。だって、同級生だし。せいぜい先輩後輩くらい。
(ちなみに私が通っていた学校は新しい学校だったので先輩が一学年しかいなかった。笑)
恋人がいることがそれだけでステータスだというのならそれまでですが、私がそこにステータスを感じていなかっただけかもしれません。私は学生時代、家庭環境がとてもつらかったのと、学校というものには小学生の頃から馴染めなくて駄目だったので、いい子のふりをして荒んだ子供でした。恋人がいることを素敵だと思える子に成長できればよかっただろうに……

話がそれましたが、私は誰とも親しくすることなく小説を書いていました。高校時代は特に、同性の友人もいなかった。いたんですが、私が離れて行ったのだと思います。私の他に、関われる子なんていくらでもいるのが学校ですし。
一人で、休み時間に動くこともせず、魔術師の話を書いていました。時々周りの景色を見ている時もありました。恋人がいる派手な子を見ているうちに、思ったことがありました。

同級生ではなくて、歳の離れたお兄さんに憧れている子は、ここにいないのかな?

自分が原稿を書いていたレポート用紙を見つめながら、異性とクラスという箱の中で喋っていない子を見つめていました。

普通に女子高生をしていたら出会わないような、寂しい荒み方をしているお兄さん。そんな人に憧れている子はいないのかなと、思っていました。
そう考えると、寂しく荒んだ男(年上)と、同級生に興味がない女子高生(年下)という何だか少女漫画みたいな状況が発生しますが、私はそんな女の子がいないか探していたのです。今はよく分からないですが、単に私が女子高生だった頃にそういう異性に憧れがあっただけなのかもしれない。

寂しさを含む荒み方はある種の感受性に訴えると思います。
女子高生の年代の女の子って、秘密しかないと思うのですよね。
私が家庭のことでぼろぼろだったことを、誰も気がつかなかったように。私には家のことが秘密だったし、身体がぼろぼろだったことも秘密でした。
これは私だけではないと思うのです。秘密がない女子高生なんて、女子高生じゃないと思います。

そんな秘密だらけの女の子に、多くを語ることない女の子たちに、新しい秘密として魔術師のことを内緒にしておいて欲しかった。
秘密の恋になるような、そんな相手として魔術師を書きたかった。

虚無のモチーフとして書き続けた魔術師に、恋をしてほしかった。
虚無のうちに生きる、孤独な男に。
秘密で閉ざされた女の子の、心の隙間に入り込むお話になりたかった。

恋の物語は、現実が素敵な恋愛で満ちている人もためにあるものではありません。

誰とも仲良くない女の子が、こっそり放課後に会うお兄さん的な。
そんな寂しさを、鬱屈を埋める、物語を作りたかった。

女子高生に、魔術師の虚無を愛してほしい。
その試みが成功しているかはさておき、女子高生も私の話や魔術師の物語を読んでいてくれたら嬉しいです。
私のかつての荒んだ心が墓標に刺されて、昔の私の憧れなのか反骨精神なのか曖昧な思いが、誰かの心に打たれる麻薬になってくれていたら。
私は書いていて良かったと、また噛み締めることになるのでしょう。

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