僕之大学生活トハ何であつたの乎、論
僕の大学生活は、幕末だった。
遡ること22年前、僕は生まれた。
それはもはや、江戸幕府の成立のようで、
徳川家康が緻密に「僕」を作り上げた。
その後、高校卒業まで、僕の江戸時代は続いた。
すべては家康(ゼーレ)のシナリオ通りに。
その太平の世に終わりを告げたのは、ペリー提督たる、友利君であった。
黒船来襲、否、友利君の襲撃は突然であった。
「サークルの新歓」という名のそれは、僕という国家の全身を揺さぶり続けることとなり、結局は、精神大革命の火種となったのであった。
友利君が襲来して以来、僕の精神は常に目まぐるしく変化した。
昨日と今日で、言っていることが百八十度違う、ということが日常茶飯事的に繰り返された。
僕の精神の「幕末」は二年間続いた。
あれは確かに僕の人生史上初めて現れた「激動の時代」といえる。
まさに、
泰平の眠りを覚ます上喜撰 たった四はいで夜も寝られず
と、いったような状態であった。
新しきものと旧きものがぶつかりあった。
時には血が流れた。
新選組のようなテロリズムが、僕の心を常に徘徊した。
薩摩藩士も、長州藩士も、土佐藩士も、水戸藩士も、会津藩士も、朝廷も、幕府も、脱藩浪士も、
みんながてんでバラバラに、やりたい放題、言いたい放題だった。
僕という人間が大人になるうえで、あれは避けては通れない道だったんだと、今では思う。
青くて成熟していないものが、どこに進めばいいのかわからないままに全力で走り回るという意味合いにおいて、
それは「青春」と呼ぶべき類のものだったのかもしれない。
そんな幕末は突然終わりを迎える。
tiktokがバズったのだ。
これは王政復古の大号令に相当する。
tiktokがバズったことにより、明治維新が成立した。
その後、「tiktokショック」たる戊辰戦争が勃発し、僕は一か月間、何も手につかない日々が続いた。
戊辰戦争の終結後、すぐ、今度は卒論という名の西南戦争が訪れた。
国家は、ぶち壊すよりも作り上げるほうが何倍も難しい、ということを思い知った。
そんな西南戦争も、今や終わろうとしている。
木戸孝允はもう死んでしまったし、
西郷どんが死ぬのも時間の問題だ。
僕の精神は、川路利良が暗躍している。
僕を支えてきた大久保利通が、たぶんもうすぐ暗殺されてしまう。
青春は、終わった。
大きな音を立てて軋みながら、時代は大きく旋回した。
これから、何が起こるんだろう、と僕は思う。
具体的な輪郭はまだ見えていないが、
たぶん、自由民権運動と明治憲法の発布が僕を待ち受けているんだ。
僕はそれを感じることができる。
来たるべく日清・日露戦争へ向けて、準備を怠ってはならない。
僕の精神上の太平洋戦争はいつやってくるのだろうか。
30歳くらいだろうか。
その時、僕は生きていられるだろうか。
どこまで落ちるだろう。
とにかく、先のことなんて気にしていてもしょうがない。
僕は、目下新国家づくりにいそしむ伊藤博文である。
だんだんと成熟し、大人になっていく自分を明治国家に重ね合わせながら。
「つならない大人」にならないよう、細心の注意を払いながら。
今日も僕は生きる。
卒業と云ふは大人になる事と見つけたり
(以上、卒業のタイミングで大学生活の振り返り、中二病バージョン)
あなたがサポートしてくれると、僕の怠惰な生活が少しだけ改善するかもしれません(保証はできませません)