小説を書くのって、気恥ずかしいと思わない?
村上春樹は、小説を書き始めるとき一行目しか考えないらしい。
逆に言うと、一行目が決まればそのまま書き進めて、一つ小説が出来上がるらしい。
そういうのって、かっこいいと思わない?
と君が言う。
そうだね、
と僕が言う。
小説を書くのって、気恥ずかしいと思わない?
と君が言う。
小説なんて書いたことないからわからないな、
と僕は言う。
小説を書いてみるのも悪くないんじゃないか、と僕は思う。
小説を書いてみるのも悪くないんじゃないか、と君が言う。
小説を書いてみるのも悪くないんじゃないか、と僕は言う。
小説を書いてみるのも悪くないんじゃないか、とカラスが歌う。
そうしよう、とこびとは言う。
そうしよう、と僕は決める。
小説を書くというのは、気恥ずかしいことかもしれない、と僕は思う。
でしょ?と君は言う。
でも、僕は書かざるを得ない。
自分が書いた文章を読んで、友達がどんなことを思うのか。
自分が書いた文章を読んで、知り合いがどんなことを思うのか。
考えれば考えるほど、気恥ずかしい。
思わず顔を覆って、見て見ぬふりをしたくなる。
でも、僕は小説を書こうと思う。
誰がなんと言おうと、僕の人生だ
僕のことは、僕が決める。
ああ、
と僕は言う。
厄介なことになった、
とても、厄介なことになった。
僕が小説を書いたら、君は僕のことを嫌いになるだろう。
そんなことないわ、と君は言う。
そんなことあるわ、と僕は言う。
そんなことある。
そんなことはあるんだ。
だけど、僕は書き始める。
さて、一行目は何にしようか。
その先にある、無限の可能性と君の嫌悪の予感が
僕の心を同時に襲う。
僕は息ができなくなる。
落ち着くんだ、と僕は言う。
落ち着くんだ、ここは君の家だ。
僕は一体、何を書いているのか?
僕は一体、なぜ小説を書かなければいけないのか?
僕は一体、なぜ小説を書きたいのか?
僕は小説を書きたいのか?
僕はなにがしたいのか?
僕は、
何がしたいのか、どこへ行きたいのか
僕の青春をあざ笑うように、カラスが鳴く。
よし、前に進もう。
あなたがサポートしてくれると、僕の怠惰な生活が少しだけ改善するかもしれません(保証はできませません)