緑の指
植物を見るのが好きだ。
けれど、育てない。
切り花も、ほぼ買うようなことがない。
小さなブーケが近所のスーパーで売られているので、小さな花瓶を買ってみたけれど、数回飾って終わった。
昔、吉本ばななの『みどりのゆび』という作品を読んだことがある。
「植物は仲間同士でつながっている」ということが書かれていて、そのことがずっと心に残っている。
小学生の頃、近所に住む伯母が旅行に行く際、夕方に庭の植木鉢の花や木に水やりをするよう頼まれたことがあった。
夏休みだったと思う。
一人暮らしの伯母は、たくさんの植物を育てていた。
薄情でいい加減な私は、適当な水やりをし、もしかすると、しない日もあったかもしれない。
その後何年もしてから、伯母は亡くなり、住んでいた家は、人手に渡った。
もう、伯母も大切にしていた植物もない。
私は、なんとなく植物に負い目があるのだ。
実家に帰ると、母がいろいろな花を庭に植えている。
働いていた頃は忙しくて出来なかった園芸を楽しんでいる。
私はそれを見て、楽しむ。
植物のことは好きなのに、どうしても距離がある。
緑の指は持っていないけれど、いつも緑を眺めては幸せを感じている。
大げさかも知れないけれど、通勤途中に見る花と葉の色合いの美しさを見られただけで、生まれてきた甲斐があったと思うことさえあるのだ。
いろいろなところに現れては、じっと見ている私のことを、植物が「またお前か」と笑って見てくれていたらいいな、と思う。