冬の記憶
今週は、久々に寒かった。
朝、外を見ると近所の家の屋根が白くなっていた。外に出ると、車に雪が積もり、フロントガラスも凍っていた。歩道の水は全て凍っていて、枯れ草は白くなっていた。
いつもより寒く、風も強く吹いている中を歩きながら、子どもの頃はよく雪が降っていたなぁ、と思った。
そう。昔はもっと寒かった。
私が住んでいる地域は年に数回しか雪が積もることはなかったが、今よりは頻繁に雪が降っていた。ただ、空から白い雪が降ってくるだけなのに、うれしくて走り回っていた。
夜、街灯の下で空を見上げると、光の中を無数の雪が落ちてくる。全く途切れることなく次々と落ちてくる雪に見とれて、ただただ見上げていた記憶がある。
それから、雪が積もった日に小学校から家に帰ると、家の外にある水道管が破裂していて、近所のおばさんがタオルをぐるぐる巻きにしてくれていたりした。子どもだったからよく分からなかったけれど、今そんなことになっても、対処できる自信は私にはない。
しもやけもひどかった。
手も足も酷いしもやけになっていた。
いつのまにかならなくなっていた。
冬が暖かくなったから。
部屋の中が暖かくなったから。
そうだよなぁ、と思う。
ちなみに、しもやけだらけの私は、小学6年生の時は一年中半袖で過ごした。
寒くてたまらないのに、半袖だった。
寒くてずっと腕を組んでいた。
バカだった。
そのバカな記憶も、中学になるとあまりないような気がする。いや、あったんだろうけど、今は思い出さない方が良いとの自分なりの判断なのかもしれない。
そう、冬の記憶だ。
小学4年か5年生くらいの頃、宿題で冬の星座観測があった。オリオン座とカシオペア座を見つけて、動きを観測するというものだ。
星を見るのだから夜だし、めちゃくちゃ寒いし、普段星に興味もなかったので、どこにオリオン座があるのか全く見当もつかなかった。
どうにもならず、母親と一緒に星の早見板を手に外に出てみたが、二人で夜空を見上げながら途方に暮れた記憶がある。そして、当時の担任が怖すぎた。
それから40年ほど経過し、今の私がいる。
星に興味を持つようになり、今ならすぐに見つけられる。分からなくても、スマホがあれば見つけられるし、夜でもスマホの画面はハッキリ見える。
寒さに震えながら情けない気持ちで星空を見上げたことは、私だけではなく、母も時折り話題に出すほど鮮明に覚えている。
昔のことをよかったと思うこともあるし、『今』もそのうちに昔になっていくんだろうなぁ、と思う。時は過ぎていく。
通勤しながら耳がしもやけになりそうなほど寒くて、昔のことを思い出した。またひとつ、冬の記憶が増えた。