海の上
海の上で空を見る。
地上で空を見るのとは、違う。
雲の見え方が違う。
子どもの頃から、フェリーに乗ったときによく思っていた。
雲がいつもより下の方にある。
少しがんばれば、手が届きそうだ。
大人になっても、物事の仕組みがよく分かっていない私は『大量の水の上にできている雲だから、こんなに覆いかぶさるようにあるのかなぁ』とぼんやり思っている。
もしかすると。
高さを比べるものがないから、低く見えるのかもしれない。
山や、ビルや、マンションがないから。
海の中には、別の世界があるのだろう。
フェリーに乗ると、生田春月の「海図」を思い出す。
水面を挟んで、それぞれの世界がある。
その水面を進みながら、波の動きと空の雲を眺める。
ほんのひととき、日常から離れる。