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ひっぱられはじめてから、1年半後くらいの話。

昔々の話です。
初めて旧東京宝塚劇場での観劇後、大劇場へはじめて行ったり、日本青年館で別箱の公演を観たり、色々な初体験がありました。
入出待ち、ガード、お花番、お花運び、並び、お弁当作り、のれん・楽屋着作り…
こんなに「そちら側」へひっぱられていくなんて思いもよらなかったけれど、まだ驚くようなことも起こります。

ご贔屓Mさんからの贈り物

ある日、たぶん、ご贔屓Mさんにはじててお会いしてから1年半後の夏。確か東京での公演中だったと思います。宅配便が届き、差し出し人を見ると、なんとご贔屓Mさんの本名!
(ご贔屓様の本名などは、ファンの方ならわかるかと思いますが、宝塚ファンになると調べたりしますよね…すみれコードはあれどまあ調べたらわかったりしますし、愛称から想像もできたりします。)

1ファンの私は何事かと包みを開けると、ボックスに入ったタオルセットにメッセージカードが入っていて、そこには、宝塚とお家と、東京のご実家の電話番号が書いてありました。東京出身のMさんは東京公演時はご自宅から通っていました。携帯電話もまだまだ普及しておらず、ポケベルから携帯へ移行するくらいの時代だったので、連絡先といえば家の電話です。その番号と、「これからもよろしくね。今度、ごはんでも行きましょう。連絡してね。」こんな感じのことが書いてありました。
…私は、嬉しいんだけど、なんで?なんで私に?個人的に?という感情が生まれたことを覚えています。
これ、代表さんは知ってるのかな、言った方がいいのかな、と混乱。いまはもう大人なので、連絡先を向こうから知らせてくる、ということはそういうことか、となんとなくわかるようになりましたが、その頃はまだまだ純粋なファンだったので、ただただ混乱した記憶です。

ご贔屓Mさんとの電話

連絡先を知らされた私は、混乱はしましたが、贈り物をいただいたお礼は言わないといけない、と思い電話をすることにしました。
東京公演中だから、東京のご実家にと思い、お家にいるだろう時間に、勇気を振り絞って電話。家電だから、誰が出るかわからない、ご家族が出たらなんて言ったらいいんだろうなどと考えながら。
電話に出たのは若めの男の人の声。…一瞬、え?と思いましたが、あ、確かお兄さんがいるって言ってたか、と思い、「◯◯ですが、M◎さん(Mさんの本名)はいらっしゃいますか?」と言うと、「あーちょっとお待ちください!」と。その後、保留にせずにMさんを呼ぶ声が聞こえました…「M◎ー!Mたろう〜Mすけ〜…電話だよー!」…普通だ、普通の家族だ、普通にお友達の家にかけたときと同じだ…お家でこんな風に家族に呼ばれてるのか、と、緊張していた私は少しだけほっとしました。

電話にでたご贔屓Mさんに、贈り物が届いたことのお礼を伝えました。すると、電話をくれてありがとう、今度、入りに来れる日の、入りの前に少しお茶でもしよう話たいことがあるの、とお誘いをうけ、約束をしました。
いくら、下級生で(失礼すみませんが)スター路線でもない男役さんでも、当時の私からしてみたら素敵なあこがれのお姉さんだしタカラジェンヌさん。この2人だけの約束が意味するところが、当時はまったくもってわからず、ただお誘いうけたから行こう!でもなんだか代表さんには言わないほうがよさそう、という気持ちだけでした。

ご贔屓Mさんとのお茶

その当日。劇場入り前のご贔屓Mさんと、有楽町駅前の某喫茶店で待ち合わせをしました。なぜそんな目立つところに!と今なら突っ込みますが、若かった私&若くてよくわかってないタカラジェンヌ、の組み合わせだったのでそんなところになってしまいました。

嬉しいより緊張しながら、Mさんはそれまでの、入出や差し入れが嬉しかったことや、お花番やお花運びのお礼などをお話ししてくださいました。そして、「代表さんとかできそうじゃない?どう?」と。
まだまだファン活動なんてわかってない大学生ファンに、そんなこと聞く?
その場では、これは回答はなんてしたらいいのかまったくわからず混乱してしまったので、「学生だし無理だと思います」としか答えられませんでした。だって、その当時は代表さんがどんなことをする人なのかなんて、よくわかっていなかったんですから、よくわからない、というのが本心で。なんだかわからないけど、Mさんをちょっとがっかりさせちゃったかな、と思いながら、劇場入りの時間になり一緒に劇場方面へ歩きます。

想像すればわかることなんですが、入待ちの場所は各生徒さんによってだいたい決まっていましたので、その場所で代表さんとファンの人は待っているわけです。そこに私を連れたご贔屓Mさんが現れたのですから、代表さんは「え?どうしたの?」と。
だよね、知らなかったんだよね。
なんか気まずすぎる、とおもったとき、Mさんが「ちょうど駅前で会っちゃったから一緒にきた」と。
この一連のお話し、何かのきっかけで何度も思い出しますが、代表さんにも仲良くしてもらったファンの人にも、話せなかった。今でも、です。

後に、さらに色々と経験した後に話を統合すると、その時期ご贔屓Mさんはもう卒業の日を考えていて、当時の代表さんはOLさんで大変そうにやってくれていたから学生の時間が融通がききそうな私なら、いいんじゃないかな、と思ったみたいでした。確かに代表さんは、忙しい忙しい、仕事も大変だしさ、なーんていつも言ってましたけど、私が近くで感じていたのは、大変大変と言いながらこういうのが好きなんだろな、というところでした。

この時の代表さんや、同期の代表さんスタッフさんには、本当に可愛がってもらい、学生の私を気遣ってくれて遅くなったらお家に泊めてくれたりごはんをご馳走になったり、お世話になりました。学生の私には社会人のお姉さんができたような、とても楽しく過ごせた良い思い出です。
なんにもわからなかった宝塚初心者の私が、一気に「そちら側」へひっぱられたのは、この2年くらいの経験です。

ご贔屓Mさんとのお茶は、その時1回きりです。
そして、Mさんの卒業が近づいてきます・・・



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