霧満るろ

主にファンタジー小説を書いています

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  • あくびの隨に

    境内であくびをした拍子に、世多逸流は日本国と酷似した世界――留包国へと神隠しに遭う。そこで自らを神と名乗る謎の少女・稲と出会った。元の世界に帰るためには、この世界に破滅をもたらす存在『邪なる蛇』を倒す必要があるという。そのためには、稲とともに旅をしながら、かつて神とともに邪なる蛇を封印した戦士の末裔である『五大光家』を探す必要に駆られた。 なぜ、逸流はこの世界に呼ばれたのか。そして、邪なる蛇とは何者なのか。その答えを目指す道程には、過酷な現実が待ち受けながらも、二人はその先に待つ真実へと歩んでいく。

  • 140字小説

    140小説まとめ

  • 短編小説

    短編小説まとめ

  • イジーさんに連れられて

    子供専門の人攫いイジーは、農村で不当な扱いを受けていた兄妹を誘拐する。当初は警戒心を抱かれるイジー。だが、その目的が不遇の子供を孤児院に連れて行くことだと知った兄妹は、少しずつ心を開いていく。しかしイジーが懇意にしていた孤児院には、イジーも知らない裏の顔があった。 果たして、イジーと兄妹に待ち受ける運命とは――

  • 武装甲女は解を求める

    王国騎士である武装甲女ジゼルは、その腕を買われて公国の貴族ケイリス卿の護衛を任された。脅迫状に悩まされていた彼を、ジゼルは部隊を引き連れて警護する。脅迫状の犯人は、ケイリス卿の身近にいる人間を殺して回っていた。その手口が過去に、この街で起きた惨魔と呼ばれた殺人鬼の事件と酷似している。ジゼルはこの街の過去を知る青年リアンとともに、不可解な事件に隠された真実に迫っていく。

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あくびの隨に 1話

 三日月を握り締める。  薄白い光を放つなだらかな弧。伸びる出で立ちは鋭利に研ぎ澄まされ、月光を受けて反射する輝きが、艶やかに濡れそぼって白刃を映す。    この刀が向けられるは、宵闇に晒される祭壇だった。  そこは深い森の深部。  鳥居を模した五つの門がある。  それぞれから続く石造りの道の左右は、並列する木柱で厳かに飾られていた。全ての道が交わる先は一点に集約し、祭壇へ向けて階段状に高さを増していく。床に仕込まれた松明が、消えることのない業火のように、煌々と周囲を浮かび上

    • 140字小説 「不釣り合いな家」

      都内に、古ぼけた家があった。周囲には高層マンションが立ち並ぶのに、そこだけ取り壊されずに残されている。昔、一人の少年が絵を描いたそうだ。近未来の絵である。背の高いビルや、空を飛ぶ車の絵。そこに、その家が描かれていたのだ。少年はのちに、画家として人間国宝になった。彼の生家だという。

      • 140字小説 「ある昼下がり」

        筆をサッと引いたような青空だった。私は紙を丸め、くり抜かれた筒を前のめりに覗き込む。昔、父に教えられたのだ。自分がそこにいる感じがする、鳥みたいに自由に飛ぶ想像をし、風を受けて大自然の一部として溶け込める、と――そのとき鳥が入り込み、目が合う。心なしか、父の視線を感じた気がした。

        • 140字小説 「印象名」

          私の名前は寿限無より短い。何を当たり前のことと思われるかもしれないが、割と人間は長い名前の方が覚えられるものだ。無論、暗記するわけではない。あの人の名前長いな、といった感じで印象に残る。反面、特徴のない名前は、誰にも覚えてもらえないかもしれないと、ふと思う。私の名前は、田中太郎。

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        あくびの隨に 1話

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        • あくびの隨に
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        記事

          140字小説 「丸く収める方法」

          あるところに三角島と四角島があった。二つの島に住む部族は言語の違いでいがみ合っていた。そこで両者の友好を結ぶため、丸島から派遣された使者が仲介に入る。しかし話し合いの場では角が立つばかりだった。仕方なく使者は本国に帰って報告すると、丸島の王は二つの島を丸で囲み、自国の領土にした。

          140字小説 「丸く収める方法」

          140字小説 「横文字」

          祖父が孫と外出した。プラレールが欲しいとおねだりされたのだ。両親は無駄遣いする必要ないと言うが、祖父はまあまあと甘やかす。しかし夕方に帰ってきた祖父は、眠っている孫を背負っていた。手ぶらだった。結局買わなかったのかと聞くと、ちゃんとモノレールに乗ってきたと言われ、両親は苦笑した。

          140字小説 「横文字」

          140字小説 「藁売りの少女」

          町場に貧相な身なりの少女がいた。籠一杯に藁を詰め、「藁、どうですか?」と売り歩く。しかし誰も少女に見向きもしなかった。すると一人の男が哀れに思い「その藁、一本もらおうか」と声をかけた。「お優しい方。貴方にはこれから幸運があります」と、少女は代金を受け取らず、何処に消えるのだった。

          140字小説 「藁売りの少女」

          140字小説 「子供の喧嘩」

          「夕飯のデザート、このレースで勝った方が貰えるってどうだ?」「今勝ち越してるからって、ずるいぞ」「そう言うな。こないだ、お前のが先に100勝してただろ」「それとこれとは、話が違うだろ。現役時代、そっちのが勝ち星上げてたくせに」「お爺ちゃんたち。ゲームは中断して、ご飯の時間ですよ」

          140字小説 「子供の喧嘩」

          140字小説 「食欲」

          男は食欲旺盛だった。食卓に出された全てを平らげた。黙っていれば保存食すら漁り、周囲に節制を求められた。だが男は飢え、次第に野生の生物を齧り、人間にも血走った眼を向けた。男は監禁され、人里離れた岩牢に幽閉される。後日、男は岩屋を虫食いに変え姿を消した。後世には人食い鬼の噂が伝わる。

          140字小説 「食欲」

          140字小説 「ジャミジャミ」

          子供の頃から僕は黒いジャミジャミが見えた。初めて見たのは学校の担任。その人は口煩かったが、それが見えて数日後、学校をやめた。それから僕を虐めていた同級生にもそれを見るようになり、彼らも例外なく転校した。未だにジャミジャミが何なのか分からない。今日もまた、会社の上司にそれが見える。

          140字小説 「ジャミジャミ」

          140字小説 「走れ者たち」

          大富豪が世界最大規模のマラソン大会を開いた。ワープ技術を用い、山頂や密林、洞窟、宇宙空間などを交えた大レースとなった。各国から優秀な選手が集まり、前人未踏のマラソン大会となる。だがその途中、次々と選手たちが失格となった。このレースはトライアスロンではないのに泳いだのだ。無重力で。

          140字小説 「走れ者たち」

          140字小説 「後ろにいる」

          『もしもし』「はい、どちら様ですか」『私のこと覚えてる?』「申し訳ありませんが存じ上げません」『ねえ嘘つかないで』「そうおっしゃられても記憶にございません」『ふざけないで。アンタのこと、後ろで全部見てんだから』「ですから、当方ではそのような依頼は受けていません」「この浮気野郎!」

          140字小説 「後ろにいる」

          140字小説 「金魚」

          ある日、川で友達と遊んでいたA君が溺れて亡くなった。深い川でもなく、流れも緩やかだったが、友達から見捨てられてしまったらしい。いじめられていたわけではない。話を聞くに、A君は前日、金魚の世話が面倒になり、トイレに流したと嘯いていた。溺れるA君の足には、赤い何かが纏わりついていた。

          140字小説 「金魚」

          140字小説 「九月九日」

          ある国のお殿様がいた。宴が好きで事あるごとに祝日を作り、宴の席を設けた。今日も九月九日は重陽の節句と、宴を家臣に命じるが、そろそろ財政が危うかった。仕方なく、家臣たちは安物の魚を市場で仕入れて来るが、実はそれが腐りかけでお殿様は腹を壊してしまい、その日は救急が必要となるのだった。

          140字小説 「九月九日」

          140字小説 「現代人」

          出先で腕時計が壊れたので、時計屋に行くことにした。十時開店だったのを思い出し、時間を確認するが腕時計は壊れていた。スマホを取り出すが、充電を忘れてバッテリーがない。仕方なく腕時計で時間を確認するが、腕時計は壊れていた。何か時間を知る道具はないかと周囲を確認し、諦めて腕時計を見た。

          140字小説 「現代人」

          140字小説 「中古ビデオ」

          「ビデオヘッドクリーナーって覚えてる?」「懐かしい。子供の頃、お母さんがよくやってたの見てたよ」「実は友達がビデオヘッドクリーナーマニアでね。最近も中古買ったんだって」「ニッチだなぁ」「それが実は呪いのビデオでさ」「まじ?」「でもテレビから出ようとした幽霊、掃除されちゃったって」

          140字小説 「中古ビデオ」