人生は計画外

小学生の頃、何度も何度も繰り返し見た作品の1つに、2009年の花組バウホール公演「フィフティ・フィフティ」がある。
ポップな衣装と背景ポスターが可愛らしく、上演前から気になっていた作品。登場人物の個性が強烈で、明るく賑やかでわかりやすい面白さに当時惹かれていた。数年前に改めて見た時、虐待などの社会問題を取り入れながら人生について考える実に深い作品であると気付き、ますますこの作品を好きになった。

作品中のセリフをメモした記憶があり過去数年分の手帳を見返したが見つからず、曖昧になってしまうが、

 “人生の面白さは計画外に転がっている“

というニュアンスのセリフが印象に残っている。
これを聞いた当時は素敵な言葉としか思わなかったが、この1ヶ月で私はこの言葉通りを体感することとなった。


7月末に退職を決意し職場に伝えた時、私は家も生活も未定だった。店長には社宅は引っ越して当然のように言われ、マネージャーには実家に帰らないなら生活できるお金の目処が立つまで仕事を続けるよう説得された。
それでも、4月からボロボロになった手の爪(初めて二枚爪になったが全く治らず、すぐに欠けてしまう)を見ながら、この職場から逃げないと肉体も精神も削られ続けていつか崩壊してしまうと思い、意思を曲げなかった。
習い事も部活も長続きするタイプで、こんなにも早く逃げ出したのは初めてだった。実家にも頼りたくなかったし、まさに崖っぷち状態で転職活動をスタートした。

しかし8月前半の時点で、心は折れかけていた。転職サイトに登録し、エージェント会社の方と面談もし、人生初のハローワークにも行った。求人を見てはお気に入り登録する日々。厳選して応募するも、全く通らない。書類選考にすら至らない状況に、焦りだけが募った。

幸いなことに、社宅は契約変更すれば住み続けられることがわかり、住む場所は確保できた。
しかし仕事が決まる気がしない。
そんな時、初めて面接の案内が来た。

私のよく知る会社で、大学時代に通ったお店もこの会社の支店。本当に嬉しくて久しぶりに気分が高揚したが、求人を改めてよーく見ると
「東京支店」のみの募集、、

働く自分をイメージできていただけに、ダメージは相当だった。見落とした自分が情けない、また1からやり直し、と言う絶望から立ち直れずにいた時、一本の電話が入る。
応募した会社の関西本社からだった。
ぜひ面接をしたいとの言葉に、胸が高鳴った。応募先を間違えた人間に、こんなチャンスが巡ってくるなんて。

それから先はスムーズに事が進んだ。
公の求人に出ていないだけで、本社は人を募集しており、私は条件にぴったりだった。
社員さんと軽い面接をした翌日、社長さんに会って頂きたいとの電話。そして先日ついにお会いし、その場で内定を頂いた。この会社には感謝してもし切れない。

この体験から、人生は諦めなければなんとかなると希望を持てたし、仕事でも何でも、結局最後はご縁なんだと思えた。
退職を決めた時の目標通り、1ヶ月で転職先を見つけることができたのも自信になった。

そして8/31の最終出勤を無事に終え、秋の始まりとともに新しい人生をスタートさせた。

宙組公演「シャーロック・ホームズ」に、

 “今新しい人生へ 新しい世界へ 
 新しい冒険へ 新しい空へ
 何かが待っている”

という歌詞がある。この歌に自分を重ね、輝かしい未来にワクワクしながら観劇したことを思い出す。


人生は何度でも始められる。
遠回りしても立ち上がって、欲しいものは自分で掴みに行く。
私だけの人生を、主人公として生き抜く。
強い決意をここに残し、次の一歩を踏み出す。

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