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お客様は神様ではない。

私は生まれてこの方、お店で物を買う時に自分が神様などと思ったことは一度もない。

むしろ自分が買いたい!と思える素敵なものが売られていて、親切に対応してくれる店員さんがいることに心底感謝の気持ちしか沸いてこない。

だが一昔前、いや二昔前くらいに「お客様は神様」なんて言われている時代がありました。

その頃から接客に携わっていた私は、若い頃は「そんなものか」と思いながら、理不尽なお客様にもかなり丁寧に接していた。

「お客様は神様じゃないのか!」と、お客様から怒鳴られたこともあった。
内心「自分で言うな」と思ったけれど、これでお金をもらっている職業だから仕方がない。この時代まぁこんなものだろうと思いながら働いた。

接客をしていると、何故こんな酷いことを言われなきゃならないのかと思うことが山ほどある。
(こちら側に非が無いことで)

言い返すことの出来ない店員という立場を利用して、ストレス発散の的にされているとすら感じることがある。

「こんな人にはならない様気をつけよう」「こういうのを上手く受け流せるのがプロの販売員だ」などと、とにかくその場で気持ちをさっと切り替えられるような前向きになれる捉え方を探して、なんとか乗り切った。

嫌な気持ちを引きずったまま、次のお客様の接客に気持ちを持ち込むわけにいかない。
 
そうやって長年やり過ごして来たけれど、心の奥底になにか溜まっていくのはヒシヒシと感じていた。

因みに私の母は、スーパーやコンビニの店員さんにも必ず会計後に「ありがとうございます」と言う人だ。

「お金を払って買うのに、どうしてお母さんがありがとうを言うの?」と子供の頃質問したことがあった。
「頑張って働いている人がいるからサービスが受けられるし、ものが買えるでしょ。どんなことも当たり前だと思ったらいけないよ。」
どんな職業の人も皆お金を貰って働いているけれど、それぞれの仕事で社会に貢献し、互い支え合って社会を回しているという様な話をしてくれた。
当たり前だと思わずに感謝をする」それが母の考え方だ。

そんな母を見て育ったのに、「お客様は神様じゃないのか」と自分から言ってくるような人や、店員だったら何を言っても良いと思っていそうな人、見下す態度を取るお客さんと出会ったことはとても悲しく、虚しいものに感じられた。怒りも湧いた。

接客に携わってから15年くらい経ったある日、私の中でなにかが突然変わった。

きっかけとなりそうな大きな出来事があった訳ではないので、心の奥に溜まってたものが限界を超えたのかもしれない。

悪くないのに「申し訳ありません」「すみません」どうしてこちらが謝らなければならないのか。

理不尽なことを言われているのに、何故店員の立場だと言い返すのが駄目なのか?
(特に百貨店などでは、スタッフがお客さんに応戦してしまうのは厳禁、御法度です)

仕事云々の前に、人権って何なんだ?
お互い人間同士として尊重すべきマナーがあるはずだ。

こんな感じの思いが心の中に込み上げてきて、大好きだった接客の仕事がちょっと嫌に感じられた。

購入したものやサービスに何か不備があった時、スタッフの横柄な態度やサービスを受けて嫌な思いをした時にクレームを入れるのとは全然違う。

正しい指摘をすることは、自分がお金を支払って物を手に入れる対価でもあるし、お店側のサービス向上にも繋がる。

そういう正しい指摘に腹が立つのでは全くない。

そうではなくて、店員だからこれくらい強気に言っても言い返すことは出来まいと横柄な態度をとるお客さんに対しての怒りだ。

売上が会社の利益となって、働くスタッフのお給料に反映されることは間違いない。だからと言って、消費者が買いたいと思えるものを作る作り手、販売する人、そういう会社がなければまず物を手に入れることが出来ないのだ。

買う方も買ってもらう方もWin-Winの関係である筈だし、そこに上も下も無い。

何かを購入する、サービスを受ける消費者側の立場である時、自分が神などと思うのはあまりにも傲慢であると私は思う。

私個人は百貨店や大型商業施設などで勤務することの多い職業だが、もしお客さんから理不尽な態度や発言をされたりすれば、店員として、人として、言い返す権利と反論しても良い権利があると思っている。

東京都で「カスハラ対策」という話が去年くらいにやっと出てきましたが、昔の常識みたいなものに囚われず、そういった悪い点は少しずつ変わっていける世の中になれば良いなと思っています。

長文になり申し訳ありませんm(_ _)m

最後までお読みいただいた方、ありがとうございました♪