慢性疾患外来、R6年6月からの生活習慣病管理計画書って外来の質向上になりますか?

令和6年度の診療報酬改定から、今まで外来患者の主な医療点数であった慢性疾患管理料から生活習慣病管理指導料に移行することになりました。

この生活習慣病管理指導料というのは、高血圧、糖尿病、脂質異常症に算定でき、当診療所では外来患者の8割程度が生活習慣病管理指導料に移行していく予定です。
生活習慣病管理計画書を患者ごとに作成して、4ヶ月に1度のペースで発行することが必要となりました。
多職種連携での指導を推奨していますが、当診療所では看護師の手も足りないので、医師が計画書を診察室の中で作ることになってしまいました。


計画書を作る大変さ

私の心の声です。聞き流してください。
この計画書を作る大変さよ・・・複写用紙作ったりしているところもあり医療DXに逆行する医療機関もありそう。慢性疾患外来半日で20-30人来るのに、一人一人に計画書を発行するってあなた、普段それぞれの患者に合わせて説明するのだけでも時間足りないのに、むしろ外来の質下がるよ〜〜!計画書を作ったことで患者の疾患管理の質あがるとかエビデンスあるんですか!?


ぼやいていても仕方がないので、

今回の診療報酬改定が決まった流れを確認してみた。

そもそも、診療報酬改定はどう行われているのか?
2年に1度改定されています。(2年前はそこまで意識が行っていなかったな反省。)

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000026444.pdf

ふむふむ、基本方針に則って、中医協で審議されるんだね。

今年の基本方針を見てみよう。
生活習慣病、外来診療に関わるところだけ見繕ってみました。

2.改定の基本的視点と具体的方向性
(2)ポスト 2025 を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療 DX を 含めた医療機能の分化・強化、連携の推進
○ 外来医療の機能分化・強化等 ・ 令和5年改正医療法も踏まえた生活習慣病等の継続的な医療を要する者 に対する説明に関する評価の見直し等、外来機能の強化を推進。
(3)安心・安全で質の高い医療の推進
○ 生活習慣病の増加等に対応する効果的・効率的な疾病管理及び重症化予防 の取組推進
(具体的方向性の例)
(4)効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上
○ 外来医療の機能分化・強化等(再掲) ・ 令和5年改正医療法も踏まえた生活習慣病等の継続的な医療を要する者 に対する説明に関する評価の見直し等、外来機能の強化を推進。 ○ 生活習慣病の増加等に対応する効果的・効率的な疾病管理及び重症化予防 11 の取組推進(再掲)

https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001177120.pdf

質が大切であることは医師であれば皆同意するところですよね。


中央社会保険医療協議会(中医協)というのは、支払側の代表、診療側委員の代表で決められている。

・生活習慣病管理料については、療養計画書を作成する医師の業務負担や高い点数設定 による患者の費用負担が算定の阻害要因となっている。そのため、電子カルテ情報共 有サービスが導入された場合、患者がマイナポータルで血液検査の結果等を確認でき ることを踏まえ、療養計画書の記載を簡素化することにより、医師の業務負担を軽減 するべき。また、その効果を点数に反映するとともに、月1回の受診を必須とする要件 を廃止することで、患者負担を軽減するべき。さらに、リフィル処方や長期処方に対応 可能なことも要件に追加することで、患者の利便性も高めるべき。医療の質の観点か らは、診療ガイドライン活用を徹底するとともに、連携の有効性を踏まえ、多職種連携 と医科歯科連携も要件とするべき。
・特定疾患療養管理料については、「プライマリケア機能を担う地域のかかりつけ医師が、 計画的に療養上の管理を行うこと」に対する評価として位置付けられているが、計画 書の作成や説明が義務付けられておらず、医療の質が担保されていない。エビデンス に基づく疾病管理の観点で、高血圧・糖尿病・脂質異常症は特定疾患療養管理料の対象 から除外し、生活習慣病管理料のなかで評価することで、計画書に基づく継続的な疾 患管理に関する患者の理解も深まる。併せて、特定疾患処方管理加算についても、位置 付けを明確化するべき。
・外来管理加算については、「処置、リハビリテーション等を行わずに計画的な医学管理 を行った場合」に算定することとされ、「丁寧な問診と詳細な身体診察を行い、それら の結果を踏まえて、患者に対して症状の再確認を行いつつ、病状や療養上の注意点等 を懇切丁寧に説明するとともに、患者の療養上の疑問や不安を解消するための取組を 行う」ことが求められているが、患者にとって評価の意義が極めて理解しにくい。さら に、同様に計画的な管理を評価する診療報酬である「特定疾患療養管理料」「生活習慣 病管理料」「地域包括診療加算」と併算定できることも踏まえ、外来管理加算は廃止す るべき。

令和6年度診療報酬改定等に関する1号(支払側)の意見 令和5年12月27日

(1)初・再診料、外来診療料の適切な評価(引上げ) 医師の技術料の最も基本となる部分であるとともに、経営原資となるものである。 物価高騰など、現下の経済社会情勢にも対応し、医療機関の健全な経営のために医師 の技術を適正に評価し、職員等の人件費や施設費等のコストに見合った点数に引上げ ること (2)再診料の見直し 地域包括ケアシステムの要である診療所・中小病院の再診料の水準を平成 22 年度改 定前の水準に戻すこと(平成 26 年度改定における再診料の引上げは、消費税率引上げ に伴う補填目的であり、平成 22 年度引下げ分の措置ではない) (3)同一医療機関における同一日複数科受診の評価 同一医療機関において、同一日に複数の診療科をそれぞれ異なる疾患で受診した場 合、すべての診療科について、初・再診料の区別なく、逓減することなく算定できる ようにすること (4)かかりつけ医機能のさらなる評価 超高齢社会及び新興感染症対応(ワクチン接種など)のため、地域包括ケアシステ ムの確立に向け、診療報酬上のかかりつけ医機能をより充実させる必要がある。具体 的には、地域包括診療加算・地域包括診療料、認知症地域包括診療加算・認知症地域 包括診療料、小児かかりつけ診療料における要件を見直すとともに、点数を引上げる こと 外来管理加算や特定疾患療養管理料等のかかりつけ医機能の評価に係る点数は、対 象疾患への関わりや機能の違いについて中医協で審議した上で導入されたものであ り、質の高い生活習慣病の治療・管理に貢献してきたことを踏まえれば、これまでの 経緯・運用を無視するような見直しはすべきではないこと かかりつけ医は、患者が自由に選択できるものであり、皆保険である日本の優れた 医療保険制度において、その根幹であるフリーアクセスを阻害するような評価となら ないよう注意が必要であること(過度な機能分化による受診抑制やかかりつけ医の制 度化など)

国民が望み納得できる、安心・安全で良質な医療を安定的に提供するための 令和6年度診療報酬改定に対する二号(診療側)委員の意見 令和5年12月27日


なるほど、診療側はむしろ再診料を上げてほしいと言っているのに、支払側の意見が大きく取り上げられている改定だということはわかった。
まあ、診療報酬改定全体のバランスがあるだろうし、どこを診療側に譲ってどこを支払側に譲るなどの交渉があるだろうと推測はされるし、この問題単体の問題ではないだろうが・・・


もうちょっと詳しい資料が出てきた。
以下からの引用です。
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001176510.pdf


うーん?生活習慣病管理指導料をとるって、計画書を策定するだけのことだけど・・・その管理は果たして本当に専門的なのか?
かかりつけ医機能は地域包括診療料で評価できるのか?うちのグループ病院の家庭医診療所みんなとってないけど・・・

一つの準拠として、医療法の改定により、策定と説明が義務付けられたよう。入院診療計画書は現時点で形骸化している(必要な書類だから作成しているのであって、特に意味があるものではないと臨床医は皆判断しているのでは?)のと同じように、生活習慣病管理計画書も形骸化するのでは・・・?むしろ今からその予感しかしていない・・・。(事前に用意しておいて渡すフローをXで観測した)そこに質はあるのか・・・?

おっ、エビデンスのページだ・・!

こんなことは医師ならば皆知っているし、外来で指導もしているでしょう。そもそも栄養・運動指導が外来の中でなされていないということを前提に作られており、それを質の担保と見なしているということでしょうか??

外来の中で行動変容へのアプローチを凝らした対話をしても実際に行動を変えるのは難しいのに。それを紙切れ1枚計画書を渡したら解決するとは到底思えないし、むしろ計画書作成のための時間により、患者さんとの対話に割けなくなるのでかえって質は下がるのではないか危惧します。

計画書作成して渡すときに、行動変容を起こせるような説明の仕方になるように努力してみる。

なんとか自分の中で腹落ちさせて、日常診療の質を上げる説明に変換できるよう取り組んでみる。(時間足りないけど・・・)

思いつくのは、
・行動変容のどの時期にいるのかの評価
どの時期にいるかを評価して、それに合わせた声掛け、説明の仕方を心がける。
無関心期から進まない人も一定数おり、その方々に対して管理計画書で殴りつけて治療中断は一番避けたい。
一番この時期で計画書が使えそうなのが、準備期→実行期。署名して宣言してもらうことは実行に有用。

・患者のヘルスリテラシー教育
説明したことをどのように患者個人が理解しているのかの確認、Ask Me 3の形での再確認。

・動機付け面接
https://www.jahbs.info/TB2017/TB2017_1_6_all.pdf

面接者の正したい反射を抑え、両価性を理解し、チェンジトークを引き出すような質問をする。(計画書は面接者の正したい反射を増強しそうなので注意)

これらをうまく組み合わせつつ、計画書発行しつつ、やってみてかなあ・・・
こういうのって、実際に質が上がったかって評価されるんだろうか。できないよね。ぼやきでした。


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